ところでこの習氏がどんな人物か、その論評ほど、新聞によって差がある。朝日新聞は「幹部の子弟ながら庶民派」「苦労人」。産経新聞は「保守派で対外強硬派」「ウルムチ騒乱事件では武力鎮圧を主張して温家宝首相と対立した」と言う。読売新聞は「おおらかな性格」「権力闘争の荒波に鍛えられ、政治感覚は鋭い」。朝鮮日報は「寡黙で慎重、まっすぐな性格」という。一方でツイッター上では、チャイナウォッチャーたちが、小心者だ、いや、頭が悪いのではないか、とうわさし合う。習氏が昨年の第四回中央委員会総会で、決まりそうだった中央軍事委員会副主席のポストを辞退する手紙を胡主席に送ったことは一部で報じられたが、政権委譲後も軍事委主席ポストに残る胡氏との対立を避けようとする小心な性格を裏付けたと言われている。父親の習仲勲・元副首相が文革で失脚するのを目の当たりにし、権力闘争などを恐れる性格となったらしい。一方で、昨年二月、外遊先のメキシコで、中国の人権問題批判に対して「腹一杯になってやることのない外国人が我々をあげつらっている」と発言、中国人記者ですら「国家指導者にふさわしくない失言」と唖然(あぜん)としたという。こういったTPOをわきまえない軽い発言が「頭が悪い」と評されるゆえんだ。
これらちぐはぐな印象を突き合わせてみると、浮かび上がるイメージは「凡庸な人」ではないか。小心で慎重で、敵を作らず、保身にたけ、争い事を好まない。
いずれにしても、習氏の軍事委副主席の任命については、事前に在米華字メディアが見送り説を報じ、内部でかなりの攻防があったことがうかがえた。普通なら重要政治イベント期間に許可されるはずのないデモが内陸部で連続発生したことも、権力闘争が影響しているようだ。伝統的に反日は、中国共産党の権力闘争のカードに使われやすい。
日本としては、さっさと権力闘争を済ませて欲しいところだが、闘争のあとにあらわれる凡庸な人物が権力を掌握した中国、というのはどんな風になるのだろう。なかなか怖いものを想像させないだろうか。(編集担当:三河さつき)
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