6階の実験室にいたという大学院生によると、廊下から「逃げろ」との叫び声が聞こえてきた。驚いて実験室を出ると、615号室から白い煙が廊下に向けて噴き出していた。同時に、刺激を感じて目を開けていられなくなった。喉(のど)も痛んだ。
「漏れたのは塩素と思いました。階段に向かって廊下を走りながら、『早く逃げろ!』と叫び続けました。多くの学生が(実験室などから)出てきました」という。
階段を下るうち、5階の部屋から出てきた学生と合流した。あたりはさらに混みあった。4階で、人はさらに増えた。衣服の一部をまくり上げて口や鼻を押さえている学生もいた。うつろな目線をしている者もいたという。
建物外の空き地は逃げ出してきた学生や教師でごったがえしていた。上を見ると、6階の窓から白煙が噴出してきた。涙を流し、せきが止まらない人もいた。建物内にいた約200人が、一斉に外に逃げた。
大学教師の話によると、反応装置からホルムアルデヒドが漏れ出した。ホルムアルデヒドは本来、無色透明の気体だ。白煙のように見えたのは水蒸気と混ざって噴出したからという。
大学側の調べで、事故が起きた室内では教師が1人でホルムアルデヒドが発生する実験を行っていた。実験を行っている部屋を無人にしてはならないとの規則があるが、教師が部屋の外に出ている間に反応が進んだ。その場を離れていた時間は2、3分だったが、生成されたホルムアルデヒドが漏れ出したという。大学側は事故を起こした教師を処罰する方針だ。
ホルムアルデヒドは有毒な気体で、2.0-3.0ppm以上の濃度になれば目、鼻、呼吸器に刺激を感じ、くしゃみ、せき、よだれ、涙が出つづける急性中毒症状を起こす。高濃度になれば呼吸困難、肺浮腫などを起こし、生命に危険が及ぶ場合もある。
南京大学で漏れたホルムアルデヒドの総量はそれほど多くなく、空気で希釈されたこともあり、学生や教師に特に深刻な健康被害は出ていないという。(編集担当:如月隼人)











