――沖縄国際映画祭に参加した感想から、教えてください。
実は映画祭の開催中に会場に来れたのは、初めてなんです! でも今回は日帰りなので沖縄を満喫できず、とても残念。巨大スクリーンがビーチにあると聞いたので見に行ったり、映画祭のにぎやかな雰囲気を何とか味わいたいと思っています。北海道出身なので、沖縄に来て最初に見たいのは海。会場からエメラルドグリーンの海が見えて、きれいだなと感激しました。
――上映作『シグナル~月曜日のルカ~』は、脚本を読んだ時どういう感想を持ちましたか?
サブタイトルになっていますが、月曜日にはヒロインのルカに何が起きるんだろう!? と意味深で、そういうミステリアスなところが初々しく感じました。そして登場する青年や少女はみんな問題を抱えていますが、彼らが人を好きになるピュアな部分が、すごく表に出ている作品だと思いました。出会ってから自然にお互いを助け合って、愛が深まっていくんですよね。
――演じた宮瀬恵介は、問題を抱えつつも好青年でしたね。
そうですね。素直な好青年である分、逆に自分の言葉を発さないんですよね。どうして人の言葉だけを聞き入れるようになったのか、という彼の過去を想像しながら役作りをしました。優しすぎる青年なので、見ている人はもしかして歯がゆくなるんじゃないかな~という思いを抱きながら(笑)、演じた時もありました。
――レトロな名画座が舞台ですが、映写機の操作など苦労しましたか?
一応習いましたが、じっくりマスターする時間がありませんでした。フィルムをかける時はいろんなパーツを持ったり、映写機をブラシで磨いたりするんですけど、その感覚がプラモデルを作る時と似ていると思いました。男の人は楽しめそうです。僕は完璧には扱えませんが、梓ちゃんは完璧にマスターして、映画館で働けるくらいのテクニックを持っているらしいですよ(笑)。
――映画デビューの三根さんが相手役という一方で、ベテラン井上順さんとの共演はいかがでしたか?
“井上さん節”という感じで、井上さんが作り出す世界がありましたね。
――高良健吾さんは、インパクトのある役を演じていますね。
完成した作品を見た時、高良くんのスパイスがあって“すごくいい!”って思いました。俳優になった経緯など話していたら、何かよく似ていたんです。挫折しそうになった時期など、ほぼ同じでしたね。お互いいろんな所でうわさを聞いていた状態で、一緒にやってみたいなって思った時にお会いできたので、楽しい共演でした。
――では、“ぜひここは見てほしい”という名シーンを教えてください。
個人的には、苦手なきゅうりを食べているところ(笑)。作品全体で言うと、ルカが恵介に“映写方法の虎の巻”を渡すシーンがあるんですけど、そこが好きです。面と向かっていない2人なんですが、ちょっと恋愛にからんでいくのかな……と、ひと結びする感じのシーンなんです。
――2009年に『愛のむきだし』でスクリーンデビューし俳優活動が順調ですが、AAA(トリプル・エー)のユニット活動との切り替えはどういう風にしていますか?
あまり意識はしていませんね。ユニットの時は当然ですが、ライブパフォーマンスにおいてもレコーディングにおいても、メンバーと調和を取り合いながらいろんな面でバランスを保っています。一個のかたまりとして動いている感覚ですね。逆に一人でお芝居をやらせていただいている時は、特攻隊長のように突っ込むのが大好き。我が身をさらけ出してとことん突っ込んで、どこまで戦えるのかということをいつもやっています。俳優の時は、思う存分暴れさせてもらっているんです(笑)。
――俳優としても舞台、ドラマ、そして映画と幅広く活躍していますね。
はい、でも結局は生もの……全部ライヴなんです。前からなんとなく、すべて一緒なんじゃないかなという気がしていました。そして今年の冬に『下谷万年町物語』という舞台をやらせていただいて、演出を担当された蜷川幸雄さんと話をしていたら、演じることは全部ライヴなんだと確信したんですよね。例えばこの『シグナル』という映画は、去年の夏に新潟で撮ったんですが、その時に演じているライヴをまず映像に記録しているんです。
――AAAはパフィーマンスユニットとして大人気で、メンバー全員が個人でも活躍しているので、アジアや世界を舞台に、今後ますます羽ばたいていただきたいです!
ありがとうございます。先日、小栗旬さんとお話する機会があったのですが、中国で映画を撮っているってことで大変そうでした。言葉を覚えるのに苦労し、撮影方法が全然違うと言っていましたね。芸能界の先輩である小栗さんのそういう努力を知り、進化していく姿を見ていると、僕も挑戦したくなりますね。生きている内に知識を得て、いろんな感情をいろんな所で吸収して、もっと表現力を広げていきたいです。
――最後に、西島さんの夢とは何でしょう?
ひとりの表現者として器を大きくしていきたい、ってことですね。映画、舞台、音楽などと言った括りにとらわれたくないんです。僕自身の中では、その時々で今は音楽が好きとか、今は芝居が好きとかこだわりはあります。でもそういったこだわりを持つ前に、自分の中の表現力を磨いていきたい。
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『シグナル~月曜日のルカ~』
東京の大学に通う宮瀬恵介は、夏休みを利用して地元の映画館“銀映館”でアルバイト。“銀映館”で暮らしているミステリアスな映写技師長、杉本ルカに出会う。バイトの採用条件として支配人と“不思議な3つの約束”をさせられた恵介は、ルカから仕事を教わるうちに惹かれていくが、映画館で迎えた初めての月曜日、ルカにある異変が起きて……。「キミの過去に何があっても、僕が必ずキミを守る」。ルカと恵介の純愛が胸を打つ、青春恋愛ミステリー。
2012年作品/監督:谷口正晃/出演:三根梓、西島隆弘(AAA)、高良健吾、井上順、宇津井健