現場は浦南鎮の菜市場。爆発発生は27日午前7時20分ごろ。菜市場は食材を扱う店舗が集まっている場所だ。女性は通りに面した1室を借りて水素ガス入りのボンベや風船を作っていた。
目撃者によると、女性が部屋からボンベを持ち出し、ドアの外に置いた。しばらくしてボンベは何の予兆もなく爆発し、向かいの建物の4階の軒に激突して落下した。飛翔する際と落下の際に電線数本を引きちぎった。付近の民家数軒が停電した。
女性は水酸化トリウムとアルミニウムの粉末を反応させて水素ガスを作っていた。最初は風船を作って売っていたが、液化ガス用のボンベを改造して水素を詰めて売ることも始めたという。
警察は同女性の部屋から、水酸化ナトリウムとアルミニウム粉末を計数十キログラムを押収した。
中国では2006年の「気球放出についての安全管理工作強化についての通知」で、「(風船などを含む)気球の充填物は、水素に代えて(ヘリウムなど)希ガスにすること。同時に、風船を空に放す活動は禁止すること」と定められている。
同通知は、公共の場所で風船やその他の浮揚性物体になどに水素を充填したり、水素入りの風船を空に放したり手に持つことも禁止している。
しかし実際には中国各地で、水素ガス入りの風船の爆発事故が後を絶たない状態だ。
さらに、低コストということで、水素を「手づくり」する者も多い。水酸化ナトリウムやアルミニウム粉末は化学工業の原料であり、取り扱っている小売店も多い。
反応装置については、インターネットの通販サイトでも販売されている。液化ガス用のボンベは新たな穴を開けるなどで、簡単に水素ガスを詰めて売ることができるように改造できるという。
材料や各種器具が簡単に入手できるため、水素ガスに関連する違反行為の取り締まりは困難で、事実上の「お手上げ・野放し状態」になっているという。(編集担当:如月隼人)
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◆解説◆
家庭向けなどにボンベに詰められて販売されている液化ガス(LPG)の主成分は、プロパンやブタンだ。プロパンの分子量(分子1つの重さの尺度)は約44、ブタンは約58だ。
プロパンガスを詰めた場合、ボンベ内の内圧は温度が摂氏30度の場合に1平方センチメートル当たり9.5キログラム、40度で12.7キログラムだ。言い方を変えれば、温度を保てばそれ以上の圧力にならない。
液化ガスの第1の利便性は、それほど大きくない圧力でも液化するので、常温常圧ならば気体である可燃物質を圧縮した形で日常的にも取り扱えることだ。
水素ガスの場合、分子量は「2」で、プロパンやブタンと比べて相当に小さい。つまり、「軽いために液化しにくい」物質だ。常温で液化しようとしても、個人的に所有できる程度の機器ではほぼ不可能。燃料用としてある程度満足できるだけの量をボンベに詰め込むには、相当に大きな圧力をかけて「気体のまま、“力づく”で詰め込む」ことになる。
液化ガス用ボンベは、そのような大圧力に耐えられるようには設計されていない。