韓国のアイドルグループ「TWICE(トゥワイス)」のメンバーとして活躍する台湾人アイドルの周子瑜さん(16歳)がインターネットで公開された番組で「中華民国」旗を掲げたことで、中国大陸から「独立派だ」との非難が殺到したことで、韓国では外国人芸能人の行動管理を強化する動きが強まりつつある。芸能界も、「中国人に満足してもらわねばならない」指摘する声が相次いでいるという。


 周子瑜さんの所属事務所の対応は早かった。それまで公式サイトで「台湾」とされていた周さんの出身地を「中国台湾」と変更し、周さんの謝罪の動画を15日に発表した。

 同問題で奇妙だったのは、周子瑜さんは「台湾独立を主張」と指摘したのが、同じ台湾出身の芸能人である黄安さんだったことだ。黄さんは大陸に在住しており、台湾の独自性や大陸批判をする台湾人を過激な調子で“口撃”することで知られる。

 最近では2015年に大陸で発生したPM2.5を大量に含む大気が台湾に到達した際、台湾で大陸批判の声が高まると「台湾企業が金儲けのために大陸で操業した結果の汚染」と主張し、大気汚染を発生させる大陸に「感謝しろ」と論じた。

 中国で、周さんを非難する声が高まったのは1月10日以降。すると台湾では周さんを擁護し、黄さんを非難する声が高まった。周さん事件は台湾人の中国に対する嫌悪感をかきたて、16日の総統選・立法院委員(国会議員)選では、民進党に対する追い風になったとされる。

 中国メディアの環球網によると、韓国では周さんの一件で、在韓外国人が「中国を刺激しない」ような制度づくりを進めることになった。韓国政府はすでに、言動や番組出演時の「注意事項」をからなる「規範」づくりを検討しているという。

 韓国メディアも「芸能関連会社は外国文化の理解に欠けている。各国の国情についての細かい研究・対応をさせるべきだ」、「中国市場を失ったら、韓国の芸能界は大打撃を受ける」などと主張しはじめた。


 「一部の芸能関連会社はリスクを避けるため、所属芸能人を対象に他国の文化と風習、政治情勢についての教育を始めた」、「レコード会社のある幹部が、中国、日本、台湾で活動する際には、レコード会社側がメディアに対して事前に、取材内容を提出させると話した」などの動きも報じられている。

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◆解説◆
 黄安さんの周子瑜さんには、理屈に合わない部分がある。まず黄さん自身が台湾のテレビに出演した際、台湾で国旗とされている「青天白日満地紅旗」を振りながら歌うパフォーマンスを披露したことがある。

 さらに、台湾で独立を強く主張する人の間では、むしろ「青天白日旗」に反発する傾向がある。「青天白日満地紅旗」は中華民国が戦後になり台湾に持ち込んだ“国旗”であり、そもそもは台湾とは関係のない「中国の旗」との主張だ。

 台湾では、「売れなくなった芸能人が目立とうとして騒いでいるだけ」と黄さんを非難する声も出た。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)


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