サッポロビールは3月30日付で髙島英也社長が退任し、野瀬裕之取締役常務執行役員マーケティング本部長が社長に就任すると発表した。髙島社長はサッポロホールディングス顧問に就任する。
昨年、髙島氏がホールディングスの尾賀真城社長に退任の意向を伝え、秋に決断した。

交代の理由として髙島氏は「マンネリ打破」を挙げる。「自分ではマンネリとは気付いていないが、気付かない部分が一番危ない」と言い、「世の中が大きく変化している時を逃してはわれわれも変われない。今が大変革をしていくチャンスだと思っており、ここで心機一転し、新しい経営トップに変わった方が、(サッポロビールの)将来にとって必ずプラスになる」と話す。

髙島氏が「情熱家だ」とする野瀬氏は「厳しい環境だが、ビールの成長を諦めてはおらず、確実にチャレンジしたい」と意気込み、特に取り組むべきこととして、ビール事業の確実な成長、総合酒類としての成長、海外の成長の3点を掲げる。

総合酒類としては、RTD(缶チューハイなど)、ワイン、洋酒、和酒などを充分に伸ばしきれていないが、マーケティングと営業力を駆使することでチャンスはあるとみる。また、国際事業にもチャンスの芽があると言い、特に北米、アジアに焦点を当て、商品を磨いて成長につなげたいと言う。

克服すべき課題として野瀬氏は「不動産、(発祥の地である)北海道、ビアホールのライオンなど、さまざまな接点を持っているが、これらの価値を上げる取り組みが得意ではない」と指摘。「この財産をさらにブラッシュアップし、ストーリーを作り、お客さまに喜んでいただく仕組みを作ることが大事だ」と語った。

また、課題の一つとして「ヱビスビールの元気がない」ことも挙げ、「ヱビスの多様性を訴え、より触れていただく機会を作るよう、ブランドコンセプトを変えていく。ウルトラCはないが、一つ一つを積み上げることで、必ず会社の価値向上につながると思っている」。

苦境にある業務用については「克服に向けて政府も支援などを行っており、今年は必ず動き出すと思っている」と見通した上で、「ビールメーカーなりに新しい取り組みを行うことで、外食をより楽しんでいただけるようにしたい」。


髙島氏は社長在任の4年間を振り返って「点数を付けることは難しいが、優・良・可でいえば、良と可の間位だ」といい、「事業構造改革をスピードアップして進める必要があった。その点に責任を感じている」と話すが、一方で、取り組んできた“ビール強化”では好反応があるとし、また「自分たちの存在意義を徹底的に語り尽くした。課題は多いが、社内が一つになることが大事であり、それは少し作ることができたと思う」と自負する。

野瀬氏は1963年生まれ(58歳)。86年九州大学卒業後、サッポロビールに入社。11年焼酎戦略部長、12年ヱビスブランド戦略部長、13年ブランド戦略部長、15年サッポロHD取締役戦略企画部長、19年サッポロビール取締役常務執行役員営業本部長を経て20年3月から現職。
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