
こう述べ、プロだけに留まらず一般消費者へおいしいコーヒーと位置づけられるスペシャルティコーヒーの価値を知らしめてスペシャルティコーヒーの市場拡大に意欲をのぞかせるのは日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)の菅野眞博会長(ドトールコーヒー常務取締役)。
コロナ禍の2020年3月、7代目SCAJ会長に就任した。
防疫の観点から、就任後6月までは活動を停止。7月に会議を招集し、アジア最大のスペシャルティコーヒーイベント「SCAJ ワールド スペシャルティコーヒー カンファレンス アンド エキシビション2020」の開催中止という苦渋の決断を下した。
「東京オリンピックの延期決定を受けて中止を決定したが、コーヒーの消費は止まないので“我々の活動を止めない努力をしよう”と呼びかけたのを覚えている」と当時を振り返る。
9月からSCAJ各委員会が受け持つセミナーを再開。再開にあたっては「コロナ感染拡大防止を考えて従来通りのやり方を改めて来場者を関係者に限るなど人数を絞り込んだ」という。
コロナ収束の兆しが見え始めた今年、11月17日から19日の3日間の日程で「SCAJ ワールド スペシャルティコーヒー カンファレンス アンド エキシビション2021」が開催され2万人弱が来場した。
17日のオープニングセレモニーで菅野会長が強調したのは同イベントのテーマ「Connecting to a Sustainable Future」。
取材に応じた菅野眞博会長 これにはドトールコーヒーで培った経験がにじむ。
「21か国のコーヒー産地をみてきた中で、アフリカ東部ウガンダでは収入を得るために森林伐採が進み裸になった山とカフェオレのような濁った川が印象に残っている。SDGsのわかりやすい例えだが、そこにコーヒーの木を植えれば収入や教育の機会が得られ環境にもやさしくなる」と述べる。
直近では、コーヒー生豆をはじめ多くの原料が高騰し値上げラッシュが始まっているが、産地・消費国を含め42か国のマーケットを観察してきた経験から「日本の物価はまだまだ安い」と指摘する。
「スーパーの生鮮売り場をみると、その国の台所事情がだいたい分かる。例えばベトナムでは、平均所得が日本の10分の1以下にも関わらず、キャベツの値段が100円。日本の物価がいかに安いかがわかる」と続ける。
この見方から、コーヒーにおいては冒頭のコメントの通り、おいしいコーヒーの価値を幅広く伝えることで安さのスパイラルからの脱却を図る。
その点で、初代・SCAJコーヒーマイスターアンバサダーに就任したEXILEのTETSUYAさんに期待を寄せる。
TETSUYAさんはコーヒーの趣味が高じて「SCAJコーヒーマイスター」を2013年に取得。
自身でもエンタテインメントコーヒーショップ「AMAZING COFFEE」をプロデュースし、コーヒー愛と地道な取り組み・多角的な活動や経験が評価されアンバサダー就任の話が浮上。話し合いの結果、双方の合意が得られたという。
業界初のアンバサダーとして資格認知拡大とともにコーヒー文化の普及発展への役割が期待され、今後は「SCAJコーヒーマイスターアンバサダーを宣伝に活用していただくとともに、消費者にスペシャルティコーヒーの認知を拡大する役割を果たしていただきたい」と期待する。