こうしたなか、需要が大きく落ち込んだ前年から回復傾向にあるのが、カマンベールをはじめとする高価格帯チーズだ。カマンベールとモッツァレラはともに前年売上高を5~6%ほど上回り、ハレの日やちょっとしたご褒美に、やや高単価のチーズを自宅で楽しむメリハリ消費が影響したとみられる。
チーズ独自の体験価値も新規獲得につながっている。
雪印メグミルクは、今夏に“焼カマンカレー”の提案とともに2個セット商品を発売したところ、若い層を中心に支持された。「50代以上がメーンターゲットだが、2個セットは20代も反応している。新しい間口獲得にも寄与できている」とし、下期も冷蔵庫から出して15分待つ“15分ガマンベール”など週末に振り切ったプロモーションを継続する。
明治は、“朝カマン”や“絶品カマントースト”など日常的な喫食提案に力を入れている。上期はカマンベール専用スパイスを添付した商品を発売し、トライアルにつながった。下期は新たにカマンベールと生モッツァレラ専用のオイルを同封した商品を一部チェーンで展開し、チーズ×オイルの新たな組み合わせを提案している。
さらなるチーズ市場活性化に向けては、多くの人が興味を持ち実践してみたくなるチーズ体験の発信がカギとなる。「価格が高いチーズでも消費が伸びているということは、新たな価値を提供すればまだまだ市場は伸びる」(森永乳業)、「やってみたいと思えば400円台もあまり高く感じない方もいる」(雪印メグミルク)。
市場が厳しかった調理系チーズの中でもパスタの安定需要もあって粉チーズは1~2%増と堅調だった。
リモートワークが減少し、内食や酒の消費量も減るなどコロナ禍とは生活スタイルが大きく変わったなか、店頭だけでなく日常でチーズを思い出す細かな情報発信も重視されている。