キーコーヒー、鍵のマークの回転看板増やしてブランド価値向上 「トアルコ トラジャ」の拡売にも取り組む
髙橋正行事業本部事業推進部長
 キーコーヒーの業務用事業は、ブランド価値向上に邁進していく。

 取材に応じた髙橋正行事業本部事業推進部長は「ブランド価値向上には多角的な戦略を行っているが、飲食店の利用者に訴求できる一つとしては喫茶店やカフェの店頭に設置するキーコーヒーの看板の活用が挙げられる。
当社の鍵のマークは生活者にも根付いており、設置台数を増やすことでブランド認知拡大が図れる。回転看板については今期(3月期)に約40台の設置を目指している」と語る。

 コーヒー豆の価格が高騰する中、一杯のコーヒーの価値がより求められる動きも起こりうるとの見立ての下、同社のフラッグシップブランド「トアルコ トラジャ」の拡売にも取り組む。

 「2028年の『トアルコ トラジャ』発売50周年に向けて提案を強化していく。全国に30カ所以上ある各営業拠点で“トラジャマイスター認定店”を増やしていくように働きかけている」という。

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髙橋正行事業本部事業推進部長 「トラジャマイスター認定店」とは、「トアルコ トラジャ」の扱いに精通した店舗を認定する制度で、現在110店以上。「認定されるには、抽出技術やコーヒーの味わい、店舗の内観・外観などキーコーヒーが定める基準にご理解いただき実践する必要がある」という。

 現在、事業推進部では、認定店拡大に向けて、喫茶・カフェなど導入先ごとで異なる環境や事情に柔軟に対応できるよう基準の見直しを検討している。

 「営業担当者が『トアルコ トラジャ』や認定店の価値をしっかり伝え続け、より多くのお取引先から“認定店になりたい”と言っていただきたい」と述べる。

 喫茶文化の継承とともに地元素材を使ったメニューを考案して地方創生にも貢献すべく「KEY’S CAFÉ(キーズカフェ)」の提案も強化していく。

 「キーズカフェ」は店舗デザインや抽出マシンなどが画一化されたパッケージカフェ。フランチャイズとは異なり、加盟金やロイヤリティがなく店舗によっては地域の名産物を使用したメニューを提供している。


 また、観光地や商業施設など客数が見込める場所はもとより地元の方々からのニーズが見込めるようなベッドタウンへの出店も進めている。店舗数は25年3月末時点で63店舗。

 ホテルや百貨店などとの接点強化策として、各地域の企業向けに、営業担当者が講師を務めるコーヒーセミナーを開催できるよう、インストラクターを育成すべく社員教育にも取り組んでいる。

 「営業担当者がインストラクターの称号を得るには、抽出技術だけなくコーヒーの知識に関する筆記試験の合格が必要で非常に狭き門。合格者は徐々に増加し全国各地ですでにセミナーを開催している。全国の30カ所以上ある営業拠点で、各拠点にインストラクター1人を配置していけるようにしたい」との考えを示す。

 コーヒーセミナーを開催のほか既存顧客へ訪問する重要性を意思統一している。

 「既存のお客様とのお取引維持するのも大切な仕事。ここ最近は、コーヒー豆の価格が上がり続けている影響で、価格改定のご説明で時間が割かれており、商品提案やコミュニケーションの時間があまり取れなかった。業務用では主に春夏秋冬の4シーズンの提案機会があり、定期的に顔を合わせて良い関係を構築し 当社からの提案だけでなく、“こんな商品ないの?”と顧客から求められる存在になるようにしてきたい」と力を込める。

 メニューの単価アップに向けた商材としては、24年2月に当社が日本で初輸入したニュージーランド(NZ)産フレーバーシロップ「SHOTT(ショット)」をアピールしている。

 「SHOTT」について「シロップを使用したアレンジメニューで客単価増が見込めることから提案を強化している。
導入店舗は徐々に拡大しており、「SHOTT」が提案できるラインアップも当初の6種類から現在11種類へと拡充した」と説明する。

 シロップは一般的に原料に液糖が使われ、加熱殺菌して短時間で製造されるのに対して、「SHOTT」は原料に液糖を使用せず、フルーツ・天然香料・高品質のきび砂糖を使用している。

 製造では、最低8時間加熱せずミキシングして浸透。これにより、甘すぎず香り高く深い甘みとコクが楽しめるように仕立てられている。

 キーコーヒーも、かつては他ブランドのシロップを仕入れて取引先に提案していたが、他のコーヒー企業も同じシロップを仕入れているケースが多く価格競争に陥りがちだったという。

 こうした状況から抜きん出るため、同社ではSCM本部購買部購買チームが主導し商社などを介さずに「SHOTT」を直輸入し差別化を図っている。

 「SHOTT」以外では、イタリアのエスプレッソコーヒーブランド「illy(イリー)」やハワイのフレーバーコーヒーブランド「ライオンコーヒー」、紅茶ブランド「リプトン」などあらゆるニーズに対応できるようなラインアップを取り揃えている。

 なお、前期の業務用事業を踏まえて「原価高騰などマイナス要因もある中、お客様と共存していくためにお客様方の売上拡大が当社の業績向上につながることを忘れず、お客様とともに価値のあるメニューを考え、店舗活性化につなげたい」と意欲をのぞかせる。
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