高い品質基準のもとで、持続可能性に配慮した生産が行われているアイルランド産グラスフェッドビーフ。
「国内の農家数は13万5千戸。うち肉牛生産者は11万戸と大半を占める。国土の90%以上が農地で、緑豊かな牧草地に恵まれていることが背景にあります」。
アイルランドの食品、飲料、園芸などの販売促進を担う政府の機関、アイルランド政府食糧庁(ボード・ビア)牛肉部門マネージャーのマーク・ジーグ氏が説明する。
食品の生産・流通にかかわる事業者の大半は、ボード・ビアが主導する食品・飲料のサステナビリティープログラム「オリジン・グリーン」に加盟し、輸出の90%は認定企業によるものだ。第三者による測定・監査を通じて、世界最高水準の食の安全性と持続可能性の向上に取り組む、世界で唯一の国家的プログラムだ。
国内の農場は99%が家族経営。
国土の8割を占める牧草地では、区画ごとに牛を移動させていく放牧法「パドックシステム」を採用。牛が立ち入らず牧草が成長できる期間を確保しているため、1年を通して安定した牧草を餌として提供できる仕組みだ。
牧草肥育による高い栄養価とともに、おいしさで世界の一流シェフから評価を獲得。調査機関が22年に実施した食味テストでそれが裏付けられた。
日本の消費者300人以上を対象に行われたブラインドテイスティングでは、日本、アイルランド、豪州、米国の各産地の牛肉を試食。アイルランド産は市場シェアの高い他国を抑え、日本産に次ぐ2位を獲得した。
「日本産が1位なのは驚かないが、アイルランド産を2位以上に挙げた人は豪州産よりも多かった。これはとても意味のある結果だ」(ジーグ氏)。
赤身肉のおいしさと健康性、そしてサステナブルな生産方法が支持されるアイリッシュビーフ。
(つづく)