利便性と品質向上により、年々市場を拡大するパックごはん。最近はコメ価格高騰の影響や防災食への利用増加が相まって、需要はさらに伸びている。


富山県入善町のパックごはんメーカー・ウーケでは、現在3工場を24時間3交代制でフル稼働する。生産効率化と出荷調整を行い、既存得意先への供給を優先しているが、市場ニーズに応えるため第4工場の建設を進め、来年4月の本格稼働を目指す。

完成後の生産能力は全体で約25%増の見込み。増産体制が整えば、新商品開発や国内の新規取引先拡大を強化。グループ企業でコメ卸最大手・神明の販売ルートを通じて、東南アジアや欧州圏を中心に年間600万食を輸出する考えだ。

NB、PBともに国産ブレンド米や富山産米を原料に使った商品の二軸を展開する。近年は120gの小容量ツインパックや300gの特盛サイズの需要が増加傾向にある。小容量は朝食や高齢者向けの「適量」として広がり、300gは夫婦2人分の食事、朝食と昼食など「分割用」に支持されているという。今秋には一部商品で市場初の自動蒸通フィルムを採用。外装を開封せずにそのまま電子レンジ調理を可能にし、開封性を向上させた。

パックごはんの可能性を広げるため、一昨年には「おかゆ」を発売した。舌でつぶせる美味しいおかゆをコンセプトに、療養食や介護食にも対応する。
「一見簡単な料理に思われがちだが、生米から炊く手間を考えると便利。業務用想定で発売したが、一般にも年々着実に伸びている」(花畑佳史社長)。

公式WEBサイトやSNSでは、パックごはんのアレンジレシピを継続的に発信。魅せる料理ではなく、社員が日常的につくる、短時間でひと手間加えた食事を提案。Z世代のタイパ志向と、高齢層が求めるおいしさと利便性の両立、双方の満足度を高める。

地域共生の取り組みでは、黒部名水マラソンや入善町の杉沢の清掃活動などを行う。その一環として昨年には地域米を使った「富富富(ふふふ)」を発売。富山県が長い年月をかけて猛暑や病害への耐性を強く改良した品種「富富富」を商品化したもので、地元農業高校が育てたコメを同社が製品化。パッケージデザインも生徒案を採用。地元小売店を通して販売することで、銘柄の認知拡大と次世代農業人材の醸成に貢献する。

また良食味で育てやすく、コメ業界で注目を集める「ゆうだい21」を、JA富山市と神明と連携して販売。手軽に手にとりやすいパックごはんとして消費者との接点を強め、認知向上に寄与する。


環境負荷への取り組みでは、工場内の冷房に富山湾の海底から汲み上げた海洋深層水を利用。循環して温まった水を、隣接する施設の養殖牡蠣の浄化や魚介類の養殖に利用することでCO2排出量の削減を実現している。昨年1月の能登半島地震により海底の機器が破損したが、入善町が12月をめどに入れ替えることが決定した。

花畑社長は「設備提供やコメ供給など地域のバックアップなくしては、工場を回すことができない。われわれも地域を応援する活動を継続するとともに、企業を発展させることで雇用を創出して、地域との連携をさらに深めたい」と話す。
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