その象徴は、今年、最高位の文部科学大臣賞に選ばれた阿見果凛(あみ かりん)さん(15歳)。
審査員を務めた俳人の夏井いつきさんが過去、子ども向けイベントで幼かった阿見さんを手ほどきしたことがあり、審査では作者は知らされていなかったことから、10月15日に都内で開催された表彰式で突然の再会となった。
阿見さんに賞状と副賞を授与した夏井さんは「36回の新俳句大賞には及ばないが、私は30数年、俳句の種まきをずっとコツコツとやってきている。(今日)私のテーブルの前に果凛ちゃんが座っているのを見て“何しに来たのか”と一瞬思った。こうして伊藤園さんも私もコツコツと俳句の種をまいていくと、こういう形でどこかで同じ成果を一緒に手にできるときが来るのだなと非常に感慨深い」と述べる。
「お~いお茶」裏面の俳句欄に記載される阿見果凛さんの受賞作「凍星(いてぼし)や歴史に残らない仕事」(左) 受賞作は「凍星(いてぼし)や歴史に残らない仕事」。
受賞作について夏井さんは「歴史に残らない仕事というフレーズに対し、凍星という季語が取り合わせられると、この季語がとても深いいろいろな意味合いを持ち始める。こんな大きな句をこんなお嬢さんが作っていると、日本の未来は大丈夫とまで思える」と評する。
受賞した阿見さんは「私自身、『お~いお茶』を飲むたびに俳句欄を見て、いろいろな俳句に勇気づけられたこともあった。私の句が誰かの印象に残るようになれば嬉しい」と語る。
審査員総評した作家・クリエイターのいとうせいこうさんは「阿見さんが仰ったようにボトルの裏を見て勉強をしている人たちがこんなにもいる。その人たちが、仲間たちとすごい句を作ってしまうのだとしたら、新俳句大賞は俳句コンテストでもあるのだけれど、非常に自由で巨大な結社なのではないか。そこから素晴らしい句がたくさん毎年生まれるとしたら、素晴らしい文芸運動なのだと思う」と称える。
主催者挨拶した伊藤園の志田光正執行役員マーケティング本部長は「我々のお茶の世界では、抹茶が世界中で大ブームになるなど、お茶や抹茶が世界に注目されてきている。俳句も同じで、日本や世界の舞台で発展していくのに寄り添いたい」と意欲を示す。
なお主催者挨拶では、第2回から第34回まで審査員を務め9月2日に肺炎のため死去した俳優・エッセイストの吉行和子さんに黙とうが捧げられた。

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