乾麺市場を代表するブランド「手延そうめん揖保乃糸」。その商標をもつ兵庫県手延素麺協同組合は、10月1日付で第14代代表理事に三木秀敏氏が就任した。
兵庫県の南西部・播州地区の5つの地域にまたがって点在する、約380軒の生産者の代表者だ。

 三木氏は会社員を経て、家業を継ぐために05年10月に三木製麺所に入社した。17年10月に揖保乃糸各地区の生産者から選出される理事に就任。揖保乃糸を生産するかたわら、販売委員として組合職員とともに「揖保乃糸」の販売促進に尽力してきた。

 手延べそうめんは、伝統的製法を守りながら、時代とともに進化を遂げた。揖保乃糸の主力商品「上級品300g」は、1960年代に全国にスーパーマーケットが誕生した時代に新しい小売形態に合わせ発売した商品で、現在の店頭カバー率は95%を超える。ガリバーブランドを守るために、品質保持と安定供給、販売促進など多方面に継続して注力してきた。

 三木理事長は就任にあたり、「品質第一」の姿勢を継続しつつ、安全安心で美味しいそうめんを世の中に提供することを当然の使命として掲げる。24年間理事長職を務めた前任の井上猛氏については「組合内のハード、ソフト両面にわたり強化し、また販売においても促進活動に注力して揖保乃糸ブランドを向上させた」と功績を称えたうえで、「この流れを止めることのないように、さらなる組合の発展を目指して組合員、職員とともに頑張りたい」と抱負を語った。

 組合では今春に5%の価格改定を実施した。販売への影響が懸念されたが、「上級品300g」の出庫数量は7月単月では過去最高を記録。前8月期実績は99・7%と前年並を維持した。
6月下旬からの猛暑や物価高で手延べそうめんの価値が見直された格好で、市場に流通する大容量低価格品だけでなく、高価格帯の「上級品300g」の販売も好調に動いた。

 目下の課題は生産能力の向上。後継者問題や労働力不足などにより、生産量の減少傾向が続く。これは揖保乃糸に限らず、全国の手延べそうめん産地が抱える共通の問題だ。

 9月から始まった新年度のそうめん生産量は、前年並の104万箱(1箱18㎏換算)を目標に開始した。夏に需要期を迎えるそうめんだが、生産は気温が安定する秋から翌年春にかけて行う。揖保乃糸をつくる約380軒の生産者は企業集団であり、家族経営から大規模工場を有する会社まで大小様々。それぞれの生産力向上のために、生産期間延長や各工場の空調設備投資促進など対策を検討している。

 新商品開発にも意欲的で「これまでと違う商品の構想がある。ハードルが高いものを目標にしており、品質管理部はじめ各部門と協力しながら目指したい。同時に商品の改廃も進める必要性があり、今後精査する」。

 組合の組織づくりには会社員時代の経験も生かす。
「業績の良い会社は、組織がしっかりしている。組織の中での基本的な行動、環境やチーム作り、能力に応じた配置の大切さを痛感している。情報共有を密にしながら組合内外の全体を見渡し適材適所を考える」。

 原材料の分析、製造指導、製品検査、集荷作業、品質保持のための保管作業など妥協せずに業務を行うことを徹底する方針。同時に情報技術を活用した業務効率化や倉庫管理、データ分析などの取り組みをこれまで以上に進める意向を示す。

 「伝統を継承しつつ、後世に伝えることは組合にとっても大きな目標。伝統食品を守るべき部分とITを活用すべき部分を、明確に分けていくことが重要だ」と強調。
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