2026年漬物市場は、消費者の価値観が一層多様化する一方、原料確保や供給体制の制約が重く、需要と供給のギャップが拡大する一年となりそうだ。

 物価高が長引くなか、食品市場では「即食×本格」「手軽×おいしさ×健康感」といった複合的価値観が主流化している。
漬物業界がこれに対応するには、小容量対応や用途提案など、これまで以上に細やかな商品開発と柔軟な供給体制が求められるだろう。しかし、市場側が多様な価値を求めているにもかかわらず、現実の供給環境はその方向性に逆行しつつある。

 原料逼迫と物流難の長期化を背景に、メーカーでは製造効率の優先度が高まり、チェーン再編で仕入れ先の集約が進む小売側も“作れる・運べる会社”に依存せざるを得ない状況だ。その結果、メーカーでは小ロットやPB・留め型など採算の取りにくい案件に加え、新商品のテストロットや多品種展開にも慎重姿勢が強まっている。小売側でもSKUの集約が進み、回転の鈍い商品は棚落ちしやすい環境になってきており、市場全体で品揃えの“選択と集中”が加速している。

 消費者が多様な価値を求めているにもかかわらず、棚は“売れる商品だけが並ぶ”構成へと傾いていき、品揃えの画一化が進む懸念が大きい。複合的価値を満たすにはバリエーションや用途拡大が欠かせないが、供給現場はむしろ逆方向に進んでいる。こうした需要と供給の“ズレ”は2026年の売場構成に確実な影響を及ぼしていくだろう。

 一方、供給力を持つメーカーは今、資金力や組織的な余力を背景に、川上への取り組みを加速させている。肥料や栽培技術の見直しによる反収改善、省力化技術の導入、さらには企業自らが産地収穫を担うモデルの構築など、原料生産の安定化に向けた投資が進んでいる。

 こうした川上への踏み込みは、供給計画をコントロールしやすくするだけでなく、結果として供給力の底上げにもつながる。限られた原料と製造能力の中で、供給力はもはや単なる生産量の多寡ではなく、川上から売場までを一体で最適化できる力へと姿を変えつつある。
2026年は“投資できる企業がさらに供給力を高める”構造がより鮮明になり、企業間の差が一段と開く一年となりそうだ。
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