電子レンジで2分温めるだけで、炊き立てのようなおいしさが味わえる利便性がパックごはんの特長だ。単身や少人数世帯の広がりから、一食ごとに炊くよりタイパに優れる点でも支持を伸ばしてきた。
たび重なる自然災害、そしてコロナ禍を経てあらためてその良さが見直され、備蓄食だけでなく日常食としても定着。11年の東日本大震災前に比べて昨年のパックごはん生産量は約2.2倍となった一方、主食用米の需要量は約15%減少した(農水省調べ)。
伸び続ける需要に合わせ、メーカー各社では工場の新設・拡張やライン増設を急ピッチで進め、生産力の増強を図っている。
そんな順風満帆にみえる市場に影を落とすのが、いまだ尾を引く米騒動だ。
昨年8月に店頭のコメ不足が深刻化した際には、品薄の売場を埋めるためにパックごはんを置く店舗が続出。この特需後も、コメに比べて価格上昇が抑えられていたことから、今春にかけて堅調な売れ行きが続いた。
ただその一方では、原料米供給の不安定化から一部商品の休売や終売に踏み切るメーカーが相次ぐなど、次第に暗雲が広がり始める。
さらに米価が想定を上回る高値となったことで、業界では昨年末からこの秋にかけて数回にわたる価格改定が行われた。平均売価は昨年初めに比べて直近では1.5倍を超え、これまでコスパやタイパの良さから買い求めていたユーザーも手が出しづらい水準に達している。
POSデータをみると、値上げの効果から金額では伸長を続けているものの、昨年の反動もあり数量では息切れが目立ってきた=グラフ。
いまだ高止まりを続ける米価だが、流通の在庫過多から値崩れを予測する向きもあり、年明け以降の値動きが読みづらい情勢だ。
売価高騰から一時的にブレーキがかかっているパックごはんの需要も、潜在的にはまだ大きな伸びしろが残されているとみられる。コメの供給と価格が早期に安定に向かうか否かが、市場の行方を大きく左右しそうだ。
2024/1-2025/10

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