東北支社3名に背景と成果を聞く
「地域共創プロジェクト」は、味の素社の強みである全国規模でのマスマーケティングによるブランド育成や、新製品投入に合わせたCM投下、営業による一斉売場獲得などの強みを活かしながら、営業部門(5支社)の若手が収集した施策を立案・実行して行くことが特徴。本社事業部門のマスマーケティング活動は継続しながら、事業部門と営業が一体となり、よりエリア密着型のマーケティング活動を行えば、さらに大きな価値創造(地方の食と健康への貢献→売上・ブランド強化)が得られるとの考えからスタートした。
参加者は食品事業本部コンシューマーフーズ事業部販売総括グループの川野海太氏。東北支社からは家庭用グループの山﨑瑛二氏、東北支社北関東営業所の西谷太一氏、東北支社家庭用グループの大谷美結氏の4氏。
本社と営業のつなぎ役の川野氏。「生活者ニーズが多様化する中、本社のマス対応と、地域営業の提案を掛け合わせたら面白いのではと思った矢先、支社側から手が上がった」と言う。
最初は東京支社勤務だった山﨑氏。マーケティングを経て東北支社に配属されたが、「せっかく東北に来て、東北なりの食文化があるのに、まだ活かしきれないと思っていた矢先、本社から誘いがあり若手として手をあげた」。大阪出身の西谷氏も「東北の食文化に触れ合う中で東北が凄く好きになった。こうした折、東北では意外に野菜が余っていることを知り、どうしたら東北のお客さんに刺さるかなど若手同士で意見交換してきた」と言う。
情報収集から始まったプロジェクト。東北支社には東北エリアの生活情報を集めた「東北ディクショナリー」があり、そこから生活者課題のあたりをつけた。また、社内のAIを活用し、地方の食文化や世帯構成などを調べるなどWebでの生活者調査も行った。一方、AIでは収集できない生々しい情報もメンバーは愚直に調査。3~4家庭を訪問して生活の様子を取材。主婦層へのグループインタビューも行い、東北の食生活における課題を洗い出した。
「東北ディクショナリーを通して生活者ニーズを洗い出し、加えてAIで食文化や歴史を分析。実際にご自宅を訪問し、食卓ではどういう食べものを並べ、どういうものを食べているかなどを調査。インタビューで生の声で情報を集め、課題を洗い出した」(山﨑氏)。おじいさん・おばあさん・お父さん・お母さん、息子さんの三世代が同居する家庭を訪問した際、西谷氏は「まずは食卓に料理の品数が多いというのが第一印象。
「減塩」ワード外し、知らぬ間に減塩
チームで開発した「だし漬け」と店頭配布用リーフレット 支社の若手メンバーによる生活者インタビューなどを通して、2つのリアルな課題が浮上。一つ目は「様々な野菜が手に入るが持て余していること」。二つ目は「減塩の必要性はわかっているが、おいしさの不安・不満から実践が進んでいないこと」。
この2つの課題を解決するために生み出されたのが「ほんだし」&「味の素」を使った「だし漬け」という新メニューだ。自宅にある野菜を「ほんだし」&「味の素」でもみ込み、10分ほど漬けたら完成。漬物がおいしく・簡単に作れる上に結果的に減塩になるというすぐれもの。
塩分過剰摂取が課題としてある中、その解決策として減塩をまったく押し出さないメニューが「だし漬け」だ。生活者との対話を繰り返す中で、減塩意識は一定量は醸成されているものの、既存の減塩に満足できず減塩行動の継続ができないことを発見。無理なく自然に減塩行動ができる仕組みが必要だと実感したと言う。また自家菜園やおすそわけの文化から、旬の野菜が大量に手元にあることが多く、野菜消費法のマンネリ化にも生活者の悩みがあった。
地域の流通の理解を得たことで、重点16企業、1,953店舗中797店舗(実施率40%)が「だし漬け」の販売を開始。また「店頭什器・POP」×「Web・ローカルメディアでの発信」×「行政・イベント」という異なるタッチポイントで立体的なコミュニケーションを実施。ほとんど広告費をかけなかったが、生活者への情報伝達ができた。
実施率40%、流通からも高評価
東北6県の主婦の認知率は12%に達し、実践率は40%(認知者ベース)、継続意向は99%(実践者ベース)となり、約20万人ほどがメニューを実際に料理していた。また「ほんだし」の汎用性向上にもつながっており、将来的な「ほんだし」の使用量につながる結果となった。
4人からも「だし漬けは、気づいたら減塩になるというメニューとしての魅力と、余った野菜を一気に消費できることからフードロスにもつながる。流通でもいろいろなフェアに組合わせられ、ほんだしの売上にもつながる」(川野氏)。「だし漬けで培った知見を活用し、違った新しいメニューができればおもしろい」(山﨑氏)。「その土地の魅力や食材、文化を知った上での提案に活かしたい」(西谷氏)。「減塩以外にまだ眠っている課題があるはずで、それを見つけて新しい取組みにつなげたい」(大谷氏)などの様々な意見が出た。
今回の取組みは、支社ASV活動や流通の各種MDへの幅広い対応が可能で、汎用性の高い提案の切り口であることが判明。プロジェクトとして「今後は、この強みを活用し、東北の生活者の食と健康に貢献すると共に、ほんだしの露出策として推進していきたい」としている。
座談会に参加した高廣佐奈恵食品事業本部コンシューマーフーズ事業部新領域グループ長は、「エリアによって摂れる野菜が違えば食文化も違う。生活者の近い現場のことを考えると、よりリアルな世界が見えてくることがわかった」。梶敬食品事業本部コンシューマーフーズ事業部新領域グループマネージャーは、「若い人たちの社会貢献の意識が変わる中で、世の中のためになることをして売上利益に結びつけることは難しくなってきたと改めて感じた」。食品事業本部マーケティングデザインセンターコミュニケーションデザイン部の植野友生マネージャーは、「味の素グループは社会価値と経済価値を共創するASVを推進しており、若い人も年齢を重ねた人にも、全社員にASVの考えが社風として根付いている」など感想を語った。

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