常温保存が可能な牛乳 しかし日本では97%が冷蔵流通 食品ロス削減や防災備蓄に寄与するロングライフ牛乳の価値を発信 日本テトラパック
日本テトラパックのニルス・ホウゴー社長
 牛乳は常温で販売・保存できる――。

 このような選択があることをより広く知ってもらうべく、食品加工処理と紙容器充填包装システムを提供する日本テトラパックは、重点施策の一つとしてロングライフ(LL)牛乳の価値発信に取り組む。


 LL牛乳は、140℃台の超高温殺菌(UHT)と無菌充填、光や酸素を遮断する6層構造のアルミ付き紙容器(LL紙パック)の3つの要素を組み合わせて作られ、保存料を一切使わずに、未開封であれば最大3~4か月間の常温保存を可能とする。

 「このアセプティック加工処理・容器包装システム(LL技術)は昔に確立された技術だが、そこから進化を重ねている。味わいや栄養素を失わないという観点からも日々進化している技術」と胸を張るのは、2月16日、取材に応じたニルス・ホウゴー社長。

 品質基準や品質設計、表示制度は国・地域によって異なり、海外では未開封で常温約1年程度の賞味期限を設定している例もある。一方、日本では品質保持期限の考え方や品質基準に基づき、品質保持基準は乳業メーカーごとに異なるものの、LL牛乳の常温保存期間は未開封でおおむね3~4か月とされている。

 常温での流通・販売・長期保存を可能にすることで、サプライヤーや流通側にとっては、冷蔵物流から常温物流へのシフト、あるいは冷蔵売場から常温売場へのシフトによるコスト削減効果が見込める。

 一方、生活者にとっても、冷蔵庫内のスペース確保や、防災備蓄としてのローリングストックに活用できるといったメリットがある。

 現在、日本では「牛乳は冷蔵で扱うもの」という認識が根強いこともあり、依然としてチルド牛乳が主流で、LL牛乳の流通量は牛乳全体の3%程度にとどまる。一方、フランスやスペインではLL牛乳が全体の約97%を占め、ドイツやイタリア等でも広く普及している。さらに中国や東南アジアでも、LL牛乳が主流であるという。

 「弊社が実施したLL牛乳の認知度調査によると、日本での認知率は約10%にとどまっている。メリットを広く浸透させるには長い道のりになると見られるが、「ロングライフ牛乳は常温保存可能」という点を継続的に伝えていきたい」と意欲をのぞかせる。


 価値浸透の明るい兆しとしては、流通量こそ3%程度であるものの、近年、ECを通じた生活者の支持拡大や、HORECA(ホテル・レストラン・カフェ)市場での採用が進んでいることから、LL牛乳の構成比が着実に高まってきている点が挙げられる。

 「常温物流が可能であることから、ECでの需要が大きく伸びている。外食産業においても、冷蔵庫で保管する必要がないなど、チルド牛乳に比べて扱いやすい点が評価され、ホテルやレストランでの導入が進んでいる」と語る。

 サプライヤー・流通側のメリットとしては、遠隔地への輸送が比較的容易になることや、生産調整がしやすい点も挙げられる。

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日本テトラパックのニルス・ホウゴー社長 「チルド牛乳は、学校や小売業向けに製造後すぐに配送しなければならない。これに対し、LL牛乳はある程度の作り置きが可能で、製造計画をより柔軟に立てられる。人員配置の面でも、チルド牛乳で要する夜勤対応などの細かなオペレーションを一定程度平準化できる。売場においても、賞味期限チェックや補充作業の負担軽減につながる」と力を込める。

 2026年4月に改正物流効率化法が本格施行され、特定の荷主・連鎖化事業者に対して物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられる。そのような中で、CLOの負担軽減につながる取り組みとして、LL牛乳の導入をさらに推し進めていく。

 コロナ禍では、多くの教育機関が休校を余儀なくされ、学校給食向けの生乳が余剰となったため、牛乳消費を促すキャンペーンが実施された。このような事態においても、LL牛乳は余剰生乳を製造・保管できるため、食品ロス削減に貢献できる。


 LL牛乳の価値浸透に向けては、ハイブリッド型のソリューションも有効だという。

 「物流は常温で行い、店頭では冷蔵棚に入れて販売するという選択肢もある。また、冷蔵棚で販売している商品と同じものを常温棚にも配置することで、『常温でも問題ない』と生活者の気づきを促す方法もある」と説明する。

 そのほかの普及施策として、LL牛乳への橋渡しとなる商品戦略の可能性も挙げる。栄養素などを添加した乳飲料を常温で販売する方法がその一例である。韓国では、生活者ニーズに合わせて付加価値を高めた商品展開が奏功し、LL牛乳の流通量は牛乳全体の11%を占めるまでに拡大したという。

 課題となる紙容器の回収にあたっては、関係者への協力を呼びかけながら体系的な仕組みづくりに取り組んでいる。

 LL技術の一画を担うアルミ付き紙容器は、容器の外側から内側の順に、ポリエチレン・紙繊維・ポリエチレン・アルミ箔・ポリエチレン・ポリエチレンの6層構造で成り立っている。

 「チルドの紙容器は30%回収・リサイクルされているのに対し、アルミ付き紙容器はほぼ焼却されている」というのが現状だ。

 しかし、アルミ付き紙容器は、容器全体の約70%が板紙で構成され、その紙繊維は長く、強く非常に高品質。良質な再生紙向けの原料として、衛生紙や段ボールなどへリサイクル可能である。

 このアルミ付き紙容器の回収・リサイクルを推進すべく、2024年には王子ホールディングスと協業し、アルミ付き紙容器を回収し、段ボールへ再生する新たなリサイクルシステムを構築した。


 また、大手小売企業と回収事業者との協働などにより、2023年以降、新たに800カ所以上に回収拠点を拡大。さらに、地方自治体とのアルミ付き紙容器の回収プログラムもスタートさせた。顧客である飲料メーカーにも働きかけを行い、生活者へのコミュニケーションも積極的に行っている。

 「これは当社だけでは成し得ません。小売企業さま、自治体さま、回収業者さま、リサイクル業者さま、そして飲料メーカーさまや生活者の皆さまを含め、バリューチェーン全体で連携しながら回収・リサイクルへの取り組みをこれからも強化していきたい」と決意を固める。
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