気候変動や耕作地の減少、後継者不足など農業が抱える課題は多い。農作物を扱う流通・小売業にとっても、天候に左右されやすい不安定な供給量とそれに合わせた価格の変動など、問題点はいくつも挙げられる。


 こうした中、水耕栽培を活用した新しい農業を展開するのがAmHydro Pacific社(アムハイドロ・パシフィック=本社・大阪市)だ。“関西弁を使いこなすアメリカ人社長”として知られる、ポール・マイルズ氏は「安全・安心・無農薬は当たり前。計画栽培による安定供給と安定価格を実現する」と力を込める。

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 同社は兵庫県たつの市にある2つの農園で、「リアグリ」のブランドを冠したレタスを栽培している。養液を循環させる方式で水、酸素と合わせた3大要素を直接根に届けるため、従来の水耕システムよりも植物が健康的に育ち、長持ちするという。

 季節にもよるが、種を植えてから出荷までかかる日数は45日から60日。「一般の田畑は二毛作だが、当社の方法ならうまくいけば二十毛作も可能だ」(時任久雄常務)。

 ポール社長は水耕栽培を事業化しようと考え、アメリカ、オランダ、オーストラリア、ニュージーランドの4か国を回りノウハウを学んだ。それを生かし、日本で大手スーパーの水耕栽培を指導したこともある。現在の会社を設立したのが2022年。現在はスーパーなど500以上の店舗に同社の商品が採用され、広がり続けている。

 「水耕栽培と工場の“いいとこどり”で環境にも優しい。
自然界の循環を再現した養液で栽培し栄養価も高く、露地栽培のものよりも強いので洗ってもシャキシャキしている」(ポール社長)と自社商品の特徴を説明する。

 そうでありながら、インフレの時代に逆行し価格は抑えている。「当社には独自の生産システムと技術がある。だから価格を下げても利益が出る構造が作れる」(同)。

 品質と価格に強い自信を持つが、それを維持するために重要なのが雇用である。一般的な農業に比べ簡易な作業が多いため、高齢者や障がい者にとっても働きやすい環境が整っている。そのことが地域貢献につながり、地産地消も推進する。

 現場主義のポール社長はこれまで通算で約4万時間、ハウスの中で働いてきた。自分が一番早く作業できるという自信があったが、最近は従業員の成長が早く「今は次々と抜かされていく」と笑う。

 今後の課題については「農業の問題は流通よりも現場にある。現場を改善し、現場側からどう流通させるかを考える」と指摘する。「ずっと買い手市場だったが、これからは売り手市場になる。
生産現場が潤う仕組みを作り、お客様が『ええもん』をずっと安く買えるようにしたい」。

 自社生産にとどまらず、問屋機能を持ち農業全体の活性化を見据える。「西日本各地の、ええもんを作る農家とつながっている。跡継ぎに悩む農家には、『われわれが後を継ぎ、こだわりも継承します』と話し、『農業をやりたいけど儲からへん』と悩んでいる若い人たちは当社で育てる。会社か組合のようなものになるかは分からないが、これらを束ねて最終的な形を作りたい」と展望を語る。

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