主なマイナス要因には、(1)過去2年に急拡大した反動(2)インフレや景気減速による消費低迷(3)処理水問題―の3点が挙げられる。
(1)は21年66%増、22年18%増と拡大したものの、この数字はあくまで出荷実績のため、現地の実需とはギャップがあった。特に22年は物流コンテナの混乱が収束したのを機に、注文の前倒しで市中在庫が膨張。アメリカを筆頭に「23年はその消化に時間がかかった」(関係者)。
(2)は主に上位国のアメリカや中国で発生。「1店舗当たりの消費量が減少」「人件費高騰の煽りで店舗をオープンできない」等の事例も多い。
(3)の影響は、中国向けの実績で顕著に表れている。日本産水産物が輸入停止になって以降、日本酒の輸出も8~11月は数量ベースで前年比50%台に激減。12月単月は約70%に持ち直したが、依然として低水準に沈んでいる。
■韓国向け好調、訪日増が後押し
一方、コロナ規制の撤廃で世界中の人流が回復し、日本もインバウンド消費の活況に沸いた。このトレンドが日本酒の輸出(=現地での需要)に影響したとの指摘がある。例えば昨年のシンガポールは35%減と低調だが、富裕層が外地での消費に向かった影響が出たようだ。これに対し、訪日客が増えた韓国向けは15%増と拡大、不買運動(19年)が起きる以前の水準を完全に超えてきた。日韓関係の改善を背景に、現地のSNSで「日本で人気銘柄を飲んだ・買った」との書き込みも増えているという。
短期的には中国の回復が待たれるところだが、中長期的にはインバウンドの盛り上がりが海外需要の創出に繋がる好循環が期待されている。

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