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みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。

今日は、野球観戦が好きな方も、球場に行ったことがないという方も、より野球を楽しめるであろう山本萩子的「野球観戦のコツ」をご紹介したいと思います。

知っておきたい「野球観戦のコツ」【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第110回

◆席選びは目的に合わせて

野球観戦はある意味で1日がかりのイベントですから、チケットを買う際に席を選ぶところから気が抜けません。本当に大まかな分け方ですが、外野席は熱心なファンが応援をする場所で、内野はゆっくり野球を楽しむところ。そう認識していただければいいかなと思います。

席選びは、「試合をどう楽しむか」を決める大きな一歩です。私は学生時代、神宮球場に限らず、多くの球場で外野席ばかりを取っていました。チケットが安いこともありますが、応援団の近くで見るとラッパの音が賑やかで、お祭りのようで気分が上がるからです。

応援団の前のほうにいる方は常連のファンが多いです。神宮だと、応援団が陣取っているのはライト側の外野自由席、Fブロックの上段スロープあたりですね。そのあたりに座ると、周囲のコアなファンが野球の楽しみ方を教えてくれることもあります。野球の熱心なファンのなかには少し近寄りがたいイメージもあるかもしれませんが、「野球を楽しみたい」という気持ちをまっすぐに伝えれば、きっとよくしてくれます。

試合前に応援団の方に声をかけると、応援歌の歌詞カードをもらえることもあります。それを見ながら一緒に応援歌を口ずさめば、試合に参加している気がしますし、より選手を後押しできている気持ちにもなります。

選手が声援に応えてくれることがあるのも外野席の魅力ですね。

一方で内野席のよさは、選手との近さ。ブルペンの近くであれば、プロの投手の球が目の前で見られます。

石川雅規投手など左投手が投げる試合で私が陣取るのは、1塁側ベンチ上。ここに座ると、左投手が牽制をする際に目が合うときがあるんです(もちろん気のせいです)。予告先発や、先発ローテーションを調べた上で、この席を狙うのもオススメです。

球場に行く際に忘れたくないのが、ビニール袋です。雨が降ったらレインコートになりますし、荷物を入れておけばビールをこぼしてしまっても濡れません。それについては、以前に熱く語らせていただいたので、こちらの記事を参照ください。

◆練習を見るだけで早く行く価値あり

球場には、開場してすぐに入るのが個人的にはベストだと思っています。開場時間は基本的に試合開始の1時間30分前。プレイボールが18時だと16時30分ですね。

この時間に球場に入ると、練習を見ることができるんです。

プロ選手の練習は滅多に見られません。昨年のWBCでは、大谷翔平選手のバッティング練習をほかの代表選手たちがこぞって見ていましたが、プロ選手の練習はそれだけでお金が取れる立派な"コンテンツ"なのです。

あらためてプロのバッティング練習を見ると、スイングや打球の速さ、打球音にびっくりします。私のように野球をプレーしたことがない方でも、そのすごさに圧倒されると思います。

そんな素敵なコンテンツが、チケットがあれば見られる。

そういう活用法があると知っているだけで、お得な気分になれるでしょうか。「でも、仕事が......」という方も、可能であれば半休を取って練習を見てほしいくらいです(笑)。

ちなみに、神宮では練習のときもビールの売り子さんがちらほらと現れるので、私はその時間を「0回」「0次会」と呼んでいます。ノックで一杯、投手と内野手の連携守備でもう一杯。夕暮れ時のビールとともに、プロのすさまじさを体感したところで、私の0回表が終わります。

◆選手の素が見られるチャンス

早くスタジアムに着くとまだ混んでないですし、スタジアムグルメもゆっくり堪能できます。

ビールの売り子さんも、飲みたい銘柄を決めて顔を覚えてもらったら、あとは定期的に回ってきてくれます。

また、試合が始まる前はBGMがかかっていたりして、キャンプのようなリラックスムードが漂っています。選手同士がじゃれあっていたり、"素"の様子が見られるのもいいですね。

お世話になっている五十嵐亮太さんとトークショーのお仕事をしたときに、男性ファンに話しかけられていました。聞けば、その方はかつて神宮で売り子をしていたとのこと。ある日、試合前に客席でドリンク販売をしていたところ、五十嵐さんがブルペンから「売れてる?」と声かけてくれて、それがとても嬉しかったそうです。そこから、五十嵐さんの大ファンになったと話していました。

試合が近づくと雰囲気は変わりますが、早い時間はそれくらいリラックスした状態でいる選手が多いです。近年は球場でサインをもらうのが禁止になったりもしているので、近い距離で選手を見られる時間を味わうのもいいかもしれません。

知っておきたい「野球観戦のコツ」【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第110回
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◆スタメン発表に感動してほしい

試合前の最大の山場であり、私が特に楽しみにしているのが、試合開始30分前のスタメン発表です。なぜ楽しみかと言えば、球場の盛り上がりがすごいからです。選手名のアナウンスと一緒に沸き起こる拍手と声援。「この試合、任せた!」という熱い思いが観客席から溢れ出す瞬間を、ぜひ体験していただきたいです。

スタメンはインターネットでもすぐにわかりますが、これだけは現地で味わってほしいです。私がいつも思うのは、スタメン発表の特別性。特に初めてスタメンに名を連ねる選手にとっては、本当に特別な瞬間でしょう。その選手も自分の名前を呼ばれた感動に打ち震えているかもしれませんが、私たちもその選手が晴れ舞台に立った瞬間に立ち会うことができるなんてすばらしい。その後にビールをオーダーすることで、私の0回の裏は終了します。

◆結局、楽しみ方は人それぞれ

アメリカの球場では、球場内の飲み屋で赤い顔をしている方、子供向けのイベントを楽しむ親子連れなど、みなさんが笑顔で過ごしています。もちろん日本でも見られる光景ですが、私はその様子を見るたびに、「これこそがボールパークだ」と思うんです。

その昔、私は球場に観戦に行ったら、「どんな場面でも試合に集中しなければいけない」と思っていました。試合中はできる限り席を立たず、トイレや食べもの買いにいくのは、グラウンド整備がある回と決めていました。

でも、最近では考えが変わりました。「球場というボールパークにいること自体が、野球の試合に参加するということなんだ」と思えるようになったんです。試合を見ながらラジオの実況を聞く、スタジアムグルメのお店の列に並びながらモニターでプレーを見る、喫煙所で煙を燻らせながらスマホで一球速報を見るのも、どれも等しく野球を楽しんでいることだと思えるようになりました。

球場はそこにいるだけで楽しい、ということをお伝えしたので、いつか試合中の楽しみ方も。それではまた来週。

知っておきたい「野球観戦のコツ」【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第110回

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作