里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール! 日本を代表するレジェンドプレイヤーの2人が、野球からの学びをライフハックに翻訳、「生き抜く知恵」を惜しげもなく大公開。連載の第4回は、「マイルール」について語り合った!

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「マイルール」について語った里崎智也氏(左)と五十嵐亮太氏(右)

■「ウソはつかない」「知ったかぶりはしない」

――前回の「運がいい人、悪い人の違いとは?」では、里崎さん、五十嵐さんの生き方、考え方の違いが浮き彫りとなりましたが、それぞれ「これだけは譲れない」というマイルールや、生きる上でのポリシーなどあれば教えてください。

五十嵐 僕の場合は、本当にシンプルなことだけど、「ウソをつかない」ということですね。

特に最近は、テレビに出させてもらう機会が増えたので、なおさら「ウソはつかないように」ということを強く意識しています。結局、ウソってバレるものだから。

里崎 僕も「ウソはつかない」ということはすごく意識してます。人間だから間違うことはあるし、僕だって完璧な人間じゃない。ずっとAだと思っていたことが、実はBだったということがあるかもしれないから、僕が心がけているのは「知らないことを"知ってる"とは言わない」ということですね。

五十嵐 まさにサトさんの言うように、人間だから知らないこともあれば、間違うこともあるから、その点についてはなるべく少なくなるように努力すればいい。

でも、「ウソをつく」というのは、自分の意思で絶対に防げることだから。

里崎 あるシーズンの中盤、夏場過ぎになって、あるプロ初登板のピッチャーが出てきたときにたまたま解説していたんだけど、「里崎さん、このピッチャーはどんなタイプですか?」と聞かれて。でも、僕は見たこともなかったし、詳しい情報も持っていなかったので、「今日初めて見るからわかりません」って素直に言いました(笑)。

五十嵐 それは勇気ある発言だなぁ(笑)。でも、そこがサトさんの強さだよね。僕なら「わかりません」とは言わずに、「初めて見るので、これから判断します」と言って、その目で見たこと、感じたことを言うと思います。

サトさんの勇気って、たぶん見ている人からすれば、すごく気持ちがいいものだと思いますね。

里崎 僕の場合は「見ていない恥ずかしさ」よりも、「知ったかぶりして適当なことを言う恥ずかしさ」が勝っているというのが本当のところだけどね。その代わり、「これからきちんと勉強します」というスタンスはきちんと守るつもりです。それが、僕なりのマイルールだと言えます。

■「できないことはしない。できることだけやる」

――おふたりとも、実に楽しそうにいろいろな仕事をしていますけど、「頼まれた仕事はすべて引き受ける」といった「マイルール」があるのですか?

五十嵐 僕の場合は「人生は一度しかないんだから、なるべくならば楽しいことをしよう」という思いが強いです。

でも、「自分の好きなこと、やりたいことだけで生きていけるはずがない」ということは理解しているし、「何かを得るためには多少の我慢も必要だ」という考えもわかります。それでも、「その人と一緒に仕事をしていて居心地がいいかどうか?」という点にはこだわっていて、すごく大切にしています。もし、「ちょっと心地よくないな」と思うことがあれば、その人との仕事は引き受けない。幸いにして、今までそういう経験はないけど。

里崎 僕の場合はすごくシンプルで、「基本的には何でも引き受けよう」というスタンスだけど、「自分ができないことはやらない」「誰のためにもならないことは引き受けない」ということは意識してますね。現役を引退した直後に「ホノルルマラソンに出ませんか?」ってオファーを受けたけど、「誰のためにもならないのでやりません」と断りました。

ハワイにも行けるし、ギャラもよかったけど。

五十嵐 「誰のためにもならない」って、どういうこと?

里崎 引退直後だったけど、そもそも完走できる自信がなかったし、そのためにあえて練習するつもりもなかった。ということは、絶対に途中棄権か、タイムアウトで強制終了という結末になる。依頼主としては、「それでは困る」となるよね。しかも本番までの期間も短かったので、練習もできないし、練習するつもりがなかったから、「お互いが不幸になるだけだからお受けしません」って断りました。

五十嵐 わざわざ「お互いが不幸になるだけだから」なんて言わずに、「完走する自信がないので」って言っても、十分に意図は伝わるのに(笑)。

里崎 いや、そこはちゃんと説明しないと(笑)。そこまで説明したから、先方もきちんと納得してくれたしね。

■「自分さえよければいい」はアリか、ナシか?

五十嵐 でも、せっかくオファーをもらったのに、それを断るのはちょっと心苦しくないですか? フルマラソンは別としても、多少無理そうなことでも、「ここはオレが頑張ればいいか」とか思ったりしません?

里崎 だから、そこで大切になるのは「絶対にできないことはやらない」ってことだと思うよ。ポイントは「絶対にできないこと」。僕の場合で言えば、たとえば「ジェットコースターに乗ること」とか(笑)。確実に気分が悪くなっちゃうので。

五十嵐 その話を聞いて思い出したけど、ラミちゃん(アレックス・ラミレス)の番組に出たときに、成り行きでいきなり「バンジージャンプに挑戦してください」と言われてやったことがあるんですが......あれは初めての体験だったから、本当に恐かった(笑)。

里崎 でも、亮太は飛べたんでしょ? 僕の場合は絶対にできないから「無理です、できません」って間違いなく断るけどね。

五十嵐 確かに、僕自身は「怖いな、無理だな」と思っていても、「できないことを乗り越えていく」っていうのが好きなタイプだから、ついつい「じゃ、とりあえずやってみよう」となったのは事実ですね。周りのスタッフを待機させるのも悪いし、そういう意味では"漢気を見せる"というか、少し見栄を張ることも悪いことじゃないかもしれない。

里崎 僕はまったく見栄を張ることがないから。とにかく判断基準は「できるか、できないか」ということだけ。できないことならば平気で断るし、できることならば、どんなことでも基本的には受け入れます。何年か前の『シューイチ』(日本テレビ系)の新春特番で「サウナ道」っていう企画があって、正月から裸を見せることも平気でやったからね(笑)。隣はEXILEのメンバーだったから腹筋バキバキだけど、そんなことも気にせずに裸になったから。

五十嵐 それはすごい。僕にはできないな。さすがに恥ずかしい(笑)。

里崎 この連載でも何度か言ってるけど、僕はそもそも第三者とか、他人の目を気にしないから。大げさにいえば、「自分さえよければいい」というタイプなんですよ(笑)。

五十嵐 でも、「自分さえよければいい」という考えだと、どうしても自分勝手になるし、周りに迷惑をかけたり、相手を傷つけたりすることも多くなるでしょ。

里崎 もちろん、プライベートで他人を傷つけるのはよくないけど、評論家という立場としては、たとえ選手を傷つけることになったとしても「言うべきことは言う」というのも、マイルールと言えるかもしれないね。

五十嵐 僕は「なるべくならばマイナスのことよりはプラスのことを言いたい」というタイプですね。たとえ選手がミスをしたとしても、その原因を解説した後には「この失敗を生かして、次は頑張ってほしい」というタイプ。

里崎 野球で言えば、どんなプレーにも「打った、打たれた」「勝った、負けた」があるわけだから、僕の場合はダメなほうを主語にすることが多いです。「ここはダメ、こうしたほうが良かった」って。もちろん改善策の代案も出しますが。すべて褒めるだけなら誰でもできますし、僕の魅力を出すこともできません。世の中の人は、褒めることをだけを望んでいないと思いますし。

――議論もますます白熱してきましたが、ちょうど時間となりました。この続きは、また次回ということで、引き続きよろしくお願いします!

里崎・五十嵐 了解です。また次回、よろしくお願いします!

【里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール!】第4回 「これだけは譲れない」それぞれのマイルールとは?

構成/長谷川晶一 撮影/熊谷 貫