レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
さて昨今、音楽のリスニング環境は平成初期とは変わりました。かつてはCDなどのフィジカルメディアが主役でしたが、その後に音楽配信に移行が進み、今やサブスクと称される定額配信サービスが普及しています。
その先鞭をつけたのは、音楽プレイヤーのiPodから発展したiPhoneでしょう。しかし、iPhoneより先行し、ガラケーの時代から携帯電話での音楽配信と再生環境を統合・整備したのが2006年にサービスを開始したauの「LISMO」だったのです。
携帯電話では電子音による演奏の着信メロディーから、楽曲の一部分を着信音に使用する「着うた」(02年)へと移行し、さらに楽曲全体を聴くことができる「着うたフル」(04年)へと発展していきました。
それらを常にリードしていたauは、独自の統一ブランド「LISMO」を打ち出し、デジタルオーディオプレイヤーのiPodと音楽データ販売と管理のソフトである『iTunes』のようなサービスを提供したのです。
音楽を多数持ち歩けるようHDDを搭載した携帯電話や、ソニーのウォークマン携帯などLISMOに特化した機種が発売され、携帯電話で音楽を聴く環境が整いました。

リスモくんの携帯電話ストラップ

メモクリップ

画面クリーナー。裏側で画面についた指紋や汚れを拭くもの
そのサービスのマスコットキャラクターが、白いシルエットに、今で言う〝有線イヤホン〟をつけたリスのキャラクター「リスモくん」。シルエットとイヤホンにiPodの初期CMを思い出さないでもないですが、黄緑色のデザインと、表情のないクールな存在感で「音楽を聴くツールとしての携帯電話」をアピール。グッズも多数配布・販売されました。

ヌードルホルダー。

当時なぜか携帯電話のノベルティで多かったビーチボール
その後、auがiPhoneを取り扱うことになった際、Webサイト『虚構新聞』において「音楽配信の雄、リスモくん死去 5歳」という嘘のニュースが出たことでも話題となります。しかしLISMOブランドはその後も存続し、実際にはリスモくんも長く活躍しました。
撮影/榊 智朗