ウーバーイーツが導入した新システムの問題点を配達員目線で考え...の画像はこちら >>

ウーバーイーツに導入されたのふたつの新システムの問題点を考察します

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第99回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

* * *

この春からウーバーイーツはふたつの新システムを導入しました。

ひとつはサブスクサービス「ウーバーワン」の高評価配達員による配達サービス。

そしてもうひとつは配達員に対する「配達リクエストの再依頼システム」の導入です。

これらの新サービスが注文者や配達員にどんな影響をもたらすのか、いろいろ考察してみたいと思います。

まずは、ウーバーワンのサービスから。

ウーバーワンは月額498円もしくは年額3998円を注文者が支払うことで、配達手数料が0円になるサブスクサービス。他にも対象となる店の食品や日用品を注文するとサービス料が最大30%割引になる、メンバー限定の割引クーポンが定期的に配布されるなど、さまざまな特典があります。

このウーバーワンで3月31日から「高評価配達員にしか配達させない」というサービスがスタートしました。

SNSを見ると配達に関するトラブルをよく見かけるので、注文される方にとっては評価の高い配達員が運んでくれることで安心できるサービスです。これを機にウーバーワンを申し込もうと検討される方も多いと思います。

追加料金を支払うサービスなので、一般の方とのサービスの差異を図るのは間違っていないと思います。ただ、実際に現場で配達している身としては「これが特別なサービスになるのか?」と感じてしまいます。

ここ1年ほど、配達する距離が長いのに配達員に支払われる配達料が最低ラインの320円という激安配達案件が、注文の多い時間帯にちらほら舞い込んでくるようになりました。運営側によると、配達員に支払われる配達料は配達員の数や需要などに基づいて算出しているとのことですが、その計算式を一度見せてくれと思うほど安くて驚きます。

どういう理由で激安配達の依頼が出るのか、正確な理由はわかりませんが、試しに何度か激安配達をして、商品を直接受け渡す機会のある時に注文された方に聞いてみたところ、ほとんどの方が「ウーバーワンを利用している」とのことでした。

実際に話を聞いた人も少ないですし、逆に高額配達案件の際に「ウーバーワンを使っていますか?」とも聞いていないので正確なところはわかりませんが、私の実感としてはウーバーワンを使って注文すると、配達員に支払われる配達料が安くなる傾向があるようです。

これが事実だとすると、配達員の多くがその依頼を拒否します。こういった依頼は、配達を始めたばかりの人やスキマ時間に少しだけ配達される方が受けるケースが多いのですが(こちらも私の実感です)、このような方は配達回数がまだ少なく、配達を始めた頃に受けたBAD評価の影響で、評価の高い配達員ではない方が多いです。

となると、配達員がなかなかマッチングせず、注文してから商品の到着まで時間がかかってしまう可能性が高くなります。

追加料金を支払った結果、商品の到着がこれまで以上にかかるようになるのはサービスの向上とはいえないと思うので、配達員に支払う配達料を上げ、高評価配達員が飛びつくようなシステムに切り替えれば多くの配達員が「商品を丁寧に運んで高評価配達員になればもっと稼げる」と感じて、すべてがいい方向に向くと思うのですが......。

ちなみに日本の話ではないのですが、アメリカでは先月、ウーバーワンのサービスが「十分な説明を行なわずに加入させ、解約手続きを困難にしている」という理由で連邦取引委員会に提訴されたので、サービス加入の際は配達料無料など、いろんなサービスが受けられる条件などを十分に確認した上での加入をオススメします。

4月7日からスタートしたのは、配達リクエストの再依頼システム。

配達員は配達中、運営側に常にGPSで位置を把握されています。これにより、店の近くにいる配達員に依頼を出せる仕組みとなっています。このGPS機能を使った新たな取り組みが再依頼システムです。

配達依頼を受けてから店に料理を受け取りに行くまでの間、配達員がまったく移動していない場合にシステムが作動。

「依頼を遂行する意志がないようなので、あなたの受けた注文を他の配達員に依頼します」といった旨のメールを配達員に送信します。このメール受信後も配達員が同じ場所から動かない場合、受けた依頼が強制的にキャンセルされます。

いつまで経っても店へ料理を取りに行かないのだから、キャンセルされて当然。利用される方にとっては、料理が早く届くために当然あるべきシステムで、今頃導入するのは遅すぎると感じる方もいるでしょう。

確かに、注文された方にとってはチンタラ運ばれてはたまったものではありません。ですが、ここで問題となるのは、判断基準がGPSによるものでシステムが自動で判断するという点です。

GPSは大きな建物の中や地下街などでは感度が悪くなります。そんな中で移動していると、同じ場所からずっと動いていないように見えます。都心部では巨大な地下街、郊外ではショッピングモールに入る店に商品を受け取りに行く場合、GPSが動かなくなることはよくあります。

そのため、GPSが反応しない場所の場合、店にたどり着く前に警告メールが来て、配達がキャンセルされてしまう可能性があります。そして、次の配達員に再依頼を出しても、その配達員が店に行く途中で再び同じようなことが起こって......ということが繰り返され、いつまで経っても配達員が商品を受け取れない事態が考えられます。

店に行っても料理ができあがっていない場合、店の前で待機中に依頼がキャンセルされ、他の配達員に再依頼を出す可能性もあります。

店の前で料理ができあがるのを待っているのに、遠くにいる配達員に再依頼を出せば、商品到着まで余計な時間がかかってしまいます。

これらの懸念に対して運営側は「余計な寄り道を避けましょう」「依頼を受諾したらできるだけ早く店へ向かいましょう」など、解決策とはいえないものを提示してくるのですが、このシステムの導入で配達員や注文される方ができることは「地下街やショッピングモール内にある店舗は避ける」になると思うので、地下街、ショッピングモールの店舗の方はたまったものではないでしょう。

新サービスに関する考察が苦情のようになってしまいましたが、新しいものの導入自体は悪いことではないと思います。これから、どう改善して便利なサービスにしていくのかが大事だと思うので、今後のブラッシュアップに期待します。

文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明

編集部おすすめ