日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。北欧史上、最も物議を醸した連続殺人事件を映画化!* * *『ガール・ウィズ・ニードル』評点:★4点(5点満点)

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© NORDISK FILM PRODUCTION / LAVA FILMS / NORDISK FILM PRODUCTION SVERIGE 2024

美しい白黒映像が綴る暗黒の悪夢

第一次大戦後のコペンハーゲンを舞台にした、どす黒く奇怪な物語である。

主人公は縫製工場で働く若い女性で、夫は戦争で行方不明になっている。彼女は工場の主の貴族といい仲になり妊娠するが、身分の差を理由に関係を断ち切られ、職を失い、路上に放り出される。

やがて彼女はふとした偶然から「望まれざる妊娠の結果生まれた赤ちゃんを引き取り、里親に斡旋する」稼業を営む中年女性と出会い、その仕事を手伝うようになるのだが、その先には想像を絶するメチャクチャで大変な恐怖が待ち受けていた。

白黒の端正な映像で綴る「ぞっとする小話」のような作品で、「貧困と不潔の極みとして過去を描く」という、「時代物」ジャンル固有の楽しさも十分に味わえる。

また、たとえば「第一次大戦で大怪我を負った兵士が、顔面の著しい損傷をカバーするための装具(補綴)を装着している」といった、これまた「時代物」特有のトリビアルな面白さもある(ちなみに現在の特殊メイクは、第一次大戦時に生まれた補綴の技術が進歩したものだ)。

リュミエール兄弟の映画『工場の出口』(1895年)が引用されているのには思わず笑ってしまったが、ダークで美しい暗黒の一本である。

STORY:第一次世界大戦後のコペンハーゲン。お針子のカロリーネは工場のオーナーの子を身ごもるが、捨てられた挙句に失業してしまう。その後、もぐりの養子縁組斡旋所を経営する女性ダウマと出会うが、そこで悪夢のような真実に直面する

監督・脚本:マグヌス・フォン・ホーン
出演:ヴィク・カーメン・ソネ、トリーネ・デュアホルム、ベシーア・セシーリほか
上映時間:123分

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