【#佐藤優のシン世界地図探索112】「遊び」と「本気」、2体...の画像はこちら >>

毎年8月、広島で毎年開催される平和記念式典。ここに世界主要国が招かれるが、外務省の工作で呼ばれない国があった......
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。
この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!

*  *  *

――元・駐ウクライナ特命全権大使の松田邦紀氏が本を出したようですね。松田氏といえばかつて鈴木宗男先生が、赤坂の料亭での赤ちゃんプレイを暴露されていたというイメージですが。

佐藤 ああ、見本が送られてきましたけど、全然パンチのない内容でしたね。

――本の名前はスルーして話を進めます(笑)。

佐藤 こういうクソ本の宣伝に手を貸す必要はありません。先日、鈴木先生が主催の「大地塾」に登壇したんですよ。松田さんに関しては、そこでけっこう気合いを入れてやっていたのを知っていますか?

――4月17日に開催されたものですね。(参照:https://www.youtube.com/watch?v=koYNAebjWFU)

佐藤 そう、あの日に関しては、鈴木先生より私のほうが魔神でした(笑)。

――動画で見ました。鈴木先生はお優しいご尊顔でしたが、佐藤さんはマジで怖い。鈴木先生と佐藤さんの会話が紹介されていましたが、「国家安全保障局も内閣情報調査室も松田大使の情報を全く重視していませんでした」「あいつが送ってくる情報なんか、ほとんどノイズ、雑音だった」「自ら本を出すことによって墓穴を掘ることになるとは考えていないのだろうか」と容赦なく切り込んでいました。

さらに「作家として作品を書くしかありません。

『アサヒ芸能』あたりに」とも仰っていましたが、すでに連載が始まっていますよね。

佐藤 アサ芸で小説連載はしていますが、まったくの創作上の人物ということにしておきましょう(笑)。

――(笑)。しかし、この方が戦時下のウクライナ大使。ロシアから見たら、いかに日本が手を抜いているか一目瞭然。

佐藤 しかし、ロシアは松田さんが大使を終えた後に、制裁を加えたんですよ。岩屋毅外相らを含めて、ロシアへの入国を無期限禁止にしました。通常、制裁を加える際は、現職に対してのみです。しかし、松田さんは前職にもかかわらず制裁されました。

――そのロシアの意図するところはなんですか?

佐藤 松田邦紀さんという人物に対して制裁を加えたのでしょう。

――団体とか国の公的な職に対してではなく、一個人に対してロシアという国家が制裁を加えたと。それはすごい!

佐藤 だから相当、頭にきているはずです。

人間に問題があるということで、前職に制裁を加えるという珍しい事態になっています。

――それでこれ、完膚なきまでにやるおつもりですか?

佐藤 いや、遊んでいるだけですよ(笑)。

――「大地塾」での鬼神のごとき喋り方で、遊んでいるだけなんですか?

佐藤 この私の姿は、ほとんど総会屋ですよね。

――まさしく、そうです。

佐藤 私はどう受け止められても気にしません(笑)。

――ところで、佐藤さんのかつての勤め先だった外務省がまたやらかしましたね。

毎年、広島で平和記念式典が開催されていますが、ロシアとベラルーシを招待することに外務省が口を出していたと。「なぜ式典にロシアを呼ぶのか?」という主旨だったそうですが、まるで市民活動家。外務省はセコ過ぎませんか?

佐藤 市民活動推進課に電話があったそうですね。それも下っ端のチンピラ事務官を使って、文書でなく電話やメールでと。情けないですよ。

――それも、広島市が外務省に聞いたら、招待は不適当と言っておきながら、最終判断は広島に委ねると。

これ、おかしくないですか?

佐藤 おかしいですよ。そんなの責任逃れでしかありません。

――広島市はちゃんと「こんなことはしないで欲しい」と文書化して、送っている。

佐藤 あれだけ圧を掛けられたら、それは聞かざるを得ません。さらに、それが報道されるまでは「いままで広島が勝手にやってきたこと。我々は知りません」と、外務省側は関与を否定するかのごとく振舞っていました。

――結局、あれだけ鈴木先生と佐藤さんが25年前にワクチンを打ち続けたのに......。変化なし!!

佐藤 変わっていませんね。ワクチンが切れたんでしょう。だからもう一度、注射し直さなければなりません。外務省はちょっとたるんでいますよ。太い針で注射する必要があります。

――ロシアは怒っていますね。

佐藤 当然。怒っていますよ。

――これに関しては鈴木先生、ガンガンやる気なんですか?

佐藤 国会で質問主意書を提出するでしょう。それから直接、外務省幹部を国会に呼んで答弁を求めると思います。両方やるでしょうね。大事(おおごと)にするつもりだと思います。

――鈴木先生はかつて「外務省の守り神」と言われました。その守り神を仇で打ち取り、葬(ほうむ)ろうとした。これは怖いですよね。

佐藤 いまの鈴木先生はマキアヴェリの論理で武装していますからね。

――『恐れられるのと愛されるのと、さてどちらがよいか。

(中略)

愛されるより恐れられるほうが、はるかに安全である。というのは、一般に人間についてこういえるからである。そもそも人間は、恩知らずで、むら気で、猫かぶりの偽善者で、身の危険をふりはらおうとし、欲得には目がないものだと』(『君主論 新版』 著:マキアヴェリ 訳:池田廉)

これは守り神を祟(たた)れば滅ぼされるぞ、ということですね。

佐藤 そうそう、そういうことです。

――すると現在、「対外務省ワクチン」では2種類考えられる。ひとつが"遊んでいる大魔神"、もうひとつは"マキアヴェリで完全武装の本気の大魔神"ですね。

佐藤 そうです。もし外務省が本当に国益だと思っているのならば、正々堂々と閣議決定して、広島市に対して表で申し入れればよかったんですよ。

――ですよね。でも、もう大魔神様は目覚めてしまったと。

佐藤 はい。

次回へ続く。

次回の配信は6月13日(金)を予定しています。

取材・文/小峯隆生

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