大幅値下げ&アプデされたSUVタイプのEVを公道試乗! 中国...の画像はこちら >>

日本市場では中国車というだけで強烈な拒否反応を示すユーザーが多い。しかし、そんな固定観念に縛られず乗ってみると......

世界進撃を続ける中国自動車大手のBYD。

日本市場攻略の初号機として上陸したアットスリーが昨年3月に一部改良を受けた。しかも、今年4月には「価格破壊」の声も飛ぶ大幅値下げを断行! つうわけで、公道試乗し、内外装や走りを徹底チェックした。

* * *

■世界戦略車が大幅値下げ!

2023年1月、中国BYDが日本市場攻略の先陣に指名したのが、今回試乗したSUVタイプのEV・アットスリー。このクルマは22年2月に中国で販売が始まり、オーストラリア、タイ、欧州などでも発売。言うまでもなくBYDの世界戦略車である。

自動車ジャーナリストの桃田健史氏は言う。

「現在、アットスリーはグローバルEVのベンチマーク的な存在です」

そんなアットスリーは昨年3月にアップデートされ、今年4月1日にはそれまでの450万円から418万円へと値下げして話題を呼んだ。アットスリーの値下げについて桃田氏はこう分析する。

「BYDは軽EVの日本導入計画を発表済みです。また、韓国ヒョンデのEV・インスターの日本発売などにより、アットスリーのポジショニングの修正が必要な時期でもある。加えて、初期モデル導入から一定の量産効果が得られています。これらが値下げの背景にあるのでは」

ちなみにBYDはハンガリーに欧州統括本社設立を発表。

この動きはなんなのか。

「技術的にもイメージ的にも世界自動車産業の中心にある欧州での存在感を示すことで、〝世界的ブランド〟としての地位確立を目指すためです。BYDには中国以外のターゲット市場として、地理的に近い東南アジア、そして欧州という二大戦略がある」

しかし、欧州ではEV需要が低迷し、多くの自動車メーカーが戦略を変更している。

「欧州でのEVシフトが踊り場にある今こそ、逆に市場での販売基盤づくりには好都合だと思いますね」

大幅値下げ&アプデされたSUVタイプのEVを公道試乗! 中国BYD「アットスリー」の乗り味はヨーロピアン!!
BYD アットスリー 価格:418万円~ フル充電時の走行距離(WLTCモード)は約470㎞。ちなみに車両重量はEVにしては軽い1750㎏なので軽快に走る

BYD アットスリー 価格:418万円~ フル充電時の走行距離(WLTCモード)は約470㎞。ちなみに車両重量はEVにしては軽い1750㎏なので軽快に走る

大幅値下げ&アプデされたSUVタイプのEVを公道試乗! 中国BYD「アットスリー」の乗り味はヨーロピアン!!
ボディサイズは全長4455㎜×全幅1875㎜×全高1615㎜。世界的な売れ筋である小型SUVだ

ボディサイズは全長4455㎜×全幅1875㎜×全高1615㎜。世界的な売れ筋である小型SUVだ

試乗車を眺める。グローバルモデルらしく、見た目もサイズもいい感じ。実にそつがない。ところがだ。ドアを開けた瞬間から中国4000年の歴史と感性が炸裂するのだ。内装のテーマは「フィットネス&ミュージック」。内装のモチーフはトレーニング機器やマッスルだという。

大幅値下げ&アプデされたSUVタイプのEVを公道試乗! 中国BYD「アットスリー」の乗り味はヨーロピアン!!
筋肉やフィットネス機器をイメージしたという独創的にも程があるインパネ。実際に目にすると衝撃が走る

筋肉やフィットネス機器をイメージしたという独創的にも程があるインパネ。実際に目にすると衝撃が走る

まず目に飛び込んでくるのは大型のタッチスクリーン。今回のアプデにより12.8インチから15.6インチへ巨大化。視認性などが向上したという。だが、この大型タッチスクリーン以上のインパクトを放っていたのが、筋肉をモチーフにしたインパネ。度肝を抜かれること請け合いだ。

大幅値下げ&アプデされたSUVタイプのEVを公道試乗! 中国BYD「アットスリー」の乗り味はヨーロピアン!!
斬新なドアハンドル。見れば見るほどパチンコ台のハンドルに激似......

斬新なドアハンドル。見れば見るほどパチンコ台のハンドルに激似......

ただし、円形のドアハンドルに関しては疑問を呈したい。日本人からすると、スポーツジムの機器ではなく、誰がどう見てもパチンコ台のハンドルにしか見えないのが残念だ。

大幅値下げ&アプデされたSUVタイプのEVを公道試乗! 中国BYD「アットスリー」の乗り味はヨーロピアン!!
ドアポケットに張られた3本の弦。触れると音が出る。一度触るとヤミツキに

ドアポケットに張られた3本の弦。触れると音が出る。一度触るとヤミツキに

一方、内装のもうひとつの見どころである「ミュージック」は自動車業界の歴史を塗り替える逸品が! なんとすべてのドアポケットに3本の弦がビシッと張られているのだ。

もちろん、指ではじくとシッカリと音が鳴る。渋滞時や信号待ちの際に触れたくなるから不思議だ。

さらにカラオケ機能も装備し、専用マイクまで用意。音楽への強いこだわりを感じた。今回、撮影を担当した山本佳吾カメラマンが言う。

「自動車誌でも何度かアットスリーを撮影しましたが、みんなカラオケを楽しんでいましたね(笑)」

肝心の走りはどうか。安定感と剛性感の高さが伝わってくる。要はヨーロピアン風味の中国車という感じ。それもそのはず、BYDには欧州自動車大手出身のエンジニアが多数在籍しているのだ。

高速道路の合流でアクセルを踏み込むと、EVにありがちな暴力的な加速ではなく、実に紳士的だ。見た目同様に走りも加速もちょうどいいクルマであった。

桃田氏が解説する。

「アットスリーは中国車であると意識させない、安定した走りと質感が特徴です。走りが欧州車的かどうかはともかくとして(苦笑)、中国メーカーは基本的に欧州志向が強い。ハンドリングや乗り味など欧州車を参考とする場合が少なくありません」

アットスリーは欧州車を強く意識した中国製EVであった。欧州市場で進撃を続けるのも納得である。

取材・文/週プレ自動車班 撮影/山本佳吾

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