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ニューヨークはタイムズ・スクエアにある観光客向けレストランのめちゃくちゃな一日を通して、(不法)移民の問題、労働環境の問題、さらに人種や格差の問題などを浮かび上がらせようという作品で、根底には「どうにもならない世界」への強い怒りと問いかけがある。
ただそこには少しツイストがあって、そういう世界の中において「どうにもならないアイデンティティ」に自分の存在が矮小化されてしまうこともまた、やり場のない怒りを増幅させる。
その意味で本作は、表面的には移民労働者の感じる「不当さ」についての映画のように見えるが(それについては繰り返し強調される)、人が特定のカテゴリー、あるいは「属性」に押し込められ、あたかもそれのみがアイデンティティであるかのように扱われることのうちには、社会的な「不当さ」や「差別」だけにとどまらない最悪さがある。
本作の見せ場の一つは、そういう総てがごっちゃになって臨界点に達するまでの過程の超ストレスフルな展開で、広い厨房が水浸しになって誰も彼もが罵声を浴びせまくる場面のパワフルさには心奪われるものがあった。
最終的な「カタストロフ」がそれに負けてしまったのは惜しい感じもするが。
STORY:舞台はニューヨークの大型レストラン「ザ・グリル」。ある日、前日の売上金の一部が消え、従業員全員に盗難の疑いがかけられる。さらなるトラブルが重なり、従業員たちのストレスはピークに。厨房はカオスと化していく......
監督・脚本:アロンソ・ルイスパラシオス
出演:ラウル・ブリオネス、ルーニー・マーラほか
上映時間:139分
全国公開中