(左から)ニューヨークの嶋佐和也と屋敷裕政
"ネクストブレイク"の殻を打ち破り、メディアを問わず存在感を示してきたニューヨークのふたり。結成15周年を迎えた今、彼らはどんな思いで活動し、どこへ進もうとしているのか。
■実はネットラジオのパイオニア
――コンビ結成15周年を迎えた今年。かまいたちさんとダブルMCを務める『ニューかまー』(TBS系)が5月から始まるなどさらに活躍されていますが、テレビ露出が増えた2020年あたりから興味や考え方は変わりました?
嶋佐 時期ごとに変わってますけど、ここ数年は芸人以外のいろんなジャンルの方ともお話しする機会が増えて楽しいですね。あと、YouTubeに「都市伝説」「ビジネス」「政治経済」とかの動画がよく出てくるから、自然と興味が湧くようになりました。
風貌が似ていたからか、『やりすぎ都市伝説』(テレビ東京系)で共演した関暁夫さんから「後継者」にも指名していただきましたしね(笑)。
屋敷 俺のほうはあんまり変わってないんですよ。昔から、後輩のラジオとか自分に近いところにしか興味がないというか。変わったとしたら、ゴルフが好きになったぐらいですね。
――今の状況につながる転機はどのあたりにあると思いますか? 個人的には2020年の『くりぃむナンチャラ』(テレビ朝日)の「アイドル座付き作家選手権」(現『くりぃむナンタラ』の人気コーナー「人間インストール」の原点とも言える企画)で、初回のドッキリのターゲットがニューヨークさんで、面白かったのが印象に残っています。
屋敷 そんなのあんま言われないのでうれしいです! 自分たち的には全然手応えなかったんですけど、くりぃむしちゅーさんから遠隔で大喜利の回答を指示されてるアイドル3人に、MCの俺と回答者の嶋佐が振り回されるって企画でしたよね。
嶋佐 思い出したなあ......かまいたちの山内(健司)さんもゲストで出てた回だ。
屋敷 その企画の後くらいに、俺らが"第七世代"に噛みついたり、『すてきに帯らいふ』(TBS、同系列の『水曜日のダウンタウン』の"ホントドッキリ"企画から生まれた番組)に出たりして、"優等生""ネクストブレイク"みたいなイメージから"くすぶり"に変わって、テレビでイジってもらえるようになったんですよね。
嶋佐 まあ、5年前とは状況が変わったとはいえ、朝まで遊んだりするわけでもなく普通に寝てますけどね。

2010年結成。
屋敷 ずっと深夜ラジオをやってるナインティナインさん、おぎやはぎさん、バナナマンさんとかってすごいですよ。たまに、もっと深い3~4時半の枠でやってるマヂカルラブリーさん、佐久間(宣行)さんのラジオに呼んでいただくと「これ毎週やるのヤバッ」ってなりますもん。
嶋佐 けど、ラジオイベントにすごい人が集まってるのを見ると、『オールナイトニッポン』『JUNK(ジャンク)』に根強いファンがいるんだなと痛感しますよね。
地上波(のラジオ)は今のパーソナリティの方たちがやめない限り枠もないから、売れてない芸人たちが一斉にスタンドエフエムとかポッドキャストをやり始めたっていう。
屋敷 そういうラジオでもイベントとかをやってるから、今って大ラジオ時代だなと思います。誰も言わないですけど、意外と俺らってネットラジオのパイオニアなんですよ。
嶋佐 吉本のどの芸人よりも先にYouTubeで『ニューヨークのニューラジオ』を始めてますからね。けど、これから深夜ラジオを始めるとしたらしんどいかもな。この間、『ニューかまー』を撮ってるときもめっちゃ眠たかったし。
屋敷 収録が朝8時入りだったんですよ。
「昨日、何時まで飲んでたんですか?」って続けたら「3時半」って返ってきたからビックリして。しかも濱家さん、そんな睡眠時間なのに収録中1回もあくびしてないんです。その日、7時間ぐらい寝た俺は15回くらいあくびしてました。
嶋佐 不思議ですよね。濱家さんってワイン好きでめっちゃ酒飲むし、筋トレとかしてるイメージもないんですけど体力あるんだよなあ。俺なんか今日めっちゃ寝てきたのにコーヒー飲んでも眠いし。
屋敷 俺もめっちゃ寝てるのにこの間、風邪ひいて仕事に穴をあけちゃってマジで自分に腹立ちました。小麦とか抜けばいいんかな。深夜ラジオを続けている先輩方もそうですけど、売れてる芸人って体力ばけもんすぎますよね。

――それこそ、毎年開催している単独ツアーも控えていますし、芸人は地方公演の最終日に、夜の街で遊び歩くイメージがあります。
屋敷 あんまそのスイッチ入らないんですよね、単独は特に。
嶋佐 俺も去年の単独ツアーなんて、宿泊先のホテルでずっと『地面師たち』(Netflix)を見てましたよ。
屋敷 そうだ(笑)。俺もそう。仙台でオリンピックを見て、「堀米(雄斗)くんのスケボーすごっ」とかひとりでやってましたね。
――ちなみに、おふたりのネタ『ラブソング』を完コピして話題になったラパルフェと今年3月にツーマンライブを開催したり、自粛明けすぐの令和ロマン・髙比良くるまさんが『ニューラジオ』に出演したりと、後輩芸人から慕われるイメージもあります。
嶋佐 慕ってくれてるのかわからないですけどね(笑)。
屋敷 僕らはいわゆる兄貴肌じゃないので(笑)。見取り図さんとかかまいたちさんとかに比べたら、だいぶ威圧感がないんじゃないですか。
ラパルフェとのツーマンライブも向こうから誘ってくれた感じで、俺らはそういうの拒まないんですよ。だから、「ただただ懐が深い」と書いといてもらえると助かります。
■山里亮太さんをネタにする時期なのかも(笑)
――今年の単独ツアーへの意気込みを教えてください。
嶋佐 単独ライブは10年以上やってるので、その年ごとにネタの内容も変わってるんですよね。中身的にもうできない過去のネタもいっぱいありますし、その年に話題になったものがたまたまネタに入っていたりもしますから。
毎回、直近のスタンスで作ったネタを披露できないかなって試行錯誤してる感じです。
屋敷 なるべく今までやってないようなネタをやりたいから、年を追うごとにネタ作りのハードルが上がってます(苦笑)。あと、面白がるポイントの根本は変わらないかもしれないですけど、単純におっさんになってきて、ネタのコアな部分が"怒り"ではなくなってきましたね。
嶋佐 自然とそうなってきますよね。若い頃とは感性も変わってくるはずだし、細かいことに腹立つのが不自然になってくるというか。
屋敷 南海キャンディーズの山里(亮太)さんみたいに、昔と変わらず怒り続けてる人のほうがちょっと変やと思うし、もしかしたら今はそういう人をネタにする時期なのかもしれないです(笑)。
山里さんがどうとかじゃなく、自分たちから見て「なんか変わってる」って人は時代を問わずいるから、それをネタにするスタンスに変化はないと思います。

嶋佐 それと僕らのあるあるで、ネタ作り中に大爆笑したくだりであればあるほど本番でウケないんです。そこが毎回実験みたいで面白いですね。
屋敷 経験則で、ある程度ウケそうなことってわかるじゃないですか。
嶋佐 それが本番で本当にウケないから、スベるところまでがセットで意味があるというか。
屋敷 賞レースみたいに明確な結果を求めてるわけでもないし、全部見えすぎていても意味ない気がするんですよ。その点は、今後の活動にも通じるところかもしれない。
この間、『ニューラジオ』に来てくれた映画監督の堤幸彦さんから「絶対映画を撮ったほうがいい」って言われたんですよ。
嶋佐 映画、撮ってみるか。
屋敷 そんな感じで「そこまだやってなかった!」ってものが見つかって、来年以降の40代もずっとワクワクできたら最高ですよね。
●屋敷裕政(やしき・ひろまさ)
1986年生まれ、三重県熊野市出身。同志社大学卒業後、バラエティ番組の制作スタッフの経験を経て、NSC東京校に入学(15期生)。特技はコロナ禍で始めた版画で、個展も開催している。2022年3月1日に一般女性との結婚を発表
●嶋佐和也(しまさ・かずや)
1986年生まれ、山梨県富士吉田市出身。
■全国7都市23公演・ニューヨーク単独ライブ「将来の夢」最大規模で開催決定!! 結成15周年を迎えたニューヨークが、コンビ史上最大規模となる単独ライブ「将来の夢」を開催。8月15日(金)の東京・IMM THEATERでの公演を皮切りに、全国7都市23公演を行ない、延べ1万5000人を動員予定。新ネタや毎年話題になる幕あいVTRも見どころ。千秋楽は配信も予定

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取材・文/鈴木 旭 撮影/佐々木里菜