山椒のお話、最新版
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。
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今年も来ました、山椒シーズン! 春から初夏にかけて出回る実山椒や葉山椒に理性が吹っ飛ぶ今日この頃です。あの清涼感、あのピリッときてジワッとしびれる快感。この時期は、私の家の食事には勝手に山椒がかかる設定になっています。
といっても、山椒は結局、一年中大好きなんですけどね。粉山椒がメインになる時期でも、山椒はいつだってピリリと鋭く、すがすがしい顔でそばにいます。香りの官能性、しびれの背徳感、季節の移ろい。繊細な和食の味を壊さずに香りと刺激を加えてくれるし、どんな料理の味にも立体感をプラス。
「香り」「刺激」「清涼感」を追加することで、味覚のレイヤーが増します。擬態語で表現するなら、「ふわっ」→「ピリリ」→「じゅわ」、と、山椒は料理にストーリー性を加えてくれます。
ちなみに山椒に含まれる香り成分は、レモンのような香りのシトロネラールや、オレンジなどの柑橘(かんきつ)類に含まれるリモネンといった、爽快なもの。これは脳に「清潔」「新鮮」「鋭敏」という感覚を与えるといわれており、おかげでまるで自然と一体になったかのような快感をもたらしてくれると私は感じてます。
最近のお気に入りのいただき方は、山椒ソーダ。山椒の実を軽く潰して炭酸水に浮かべると、飲むたびに舌に「シュワッ+ピリッ」という異次元の清涼感が訪れます。山椒ポップコーンもいいですね。ポップコーンにバターと粉山椒をかけるとやみつきになります。
どんな山椒でもおいしいですが、ZANSHO-Pという山椒専門店の「石臼挽(ひ)き青粉山椒 うぐいす」の香りはたまりません。ぶどう山椒という高級品種で、フレッシュかつどことなくフルーティな味わいから、焼き野菜や魚にも最高です。
あまりの香りの新鮮さ、豊かさに脳が鋭敏になり、まるで自然と一体になったような快感に浸れます。ちなみにZANSHO-Pには「山椒メープルナッツ」や「山椒香るハーブティー」など、"山椒狂"にグッと刺さる商品がたくさんあります。
同じく山椒加工食品ですと、伊吹ハムの「山椒ソーセージ」もオススメです。入ってる実山椒は小ぶりですが、驚くほどしっかりとした山椒の香りが堪能できます。
ふるさとやの「奥飛騨の山椒ドレッシング」もぜひ。香り豊かで木の芽らしい爽やかさを楽しめるけど、クリーミー! サラダはもちろん、お肉、カルパッチョ、そして揚げ物とかにもいい感じ。クリーミーだから、子供でも食べられるかと思います。
お店ですと、京都の料亭カフェ・紫野和久傳(むらさきのわくでん)の「山椒アイス」は外せません。もともと夏限定のメニューでしたが、気づいたら通年メニューになってました。丹後(たんご)のジャージー乳の濃厚さの裏に、若摘みの実山椒の刺激と爽快感が印象的。
山椒シーズンに入るこれから、さらなる山椒メニューが登場することを願ってやみません。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。