レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
さて、平成男子を夢中にさせたのがドラゴンです。『ドラゴンクエスト』など剣と魔法のRPGの重要シンボルでしたし、ヤンキー向けの財布やエチケットブラシにもドラゴンが描かれ、「剣に巻きついた竜のキーホルダー」もお土産として人気でした。

ドラゴンの習字バッグ2種。上は有名な「スパイラルドラゴン」シリーズ

そんなドラゴンが、習字セットのバッグになったのが平成です。中身は文鎮や硯、墨汁など重たいものだらけ。重いバッグが憂鬱な習字の授業がある日も、自分の好きな世界観でデザインされていれば楽しい登下校となるのです。
かつての習字セットは硬い箱型に持ち手がついたもので、黒か赤またはピンクといったステレオタイプな色しかありませんでした。
90年代半ばには柄のものや色の種類が増え、柔らかいバッグタイプが主流になりました。そして裁縫セットのように、習字バッグにもキャラクターイラストなどが使用されるようになっていったのです。

PIKOの習字バッグ。マークの部分がホログラムになっている

女子に人気のHappy&Sweet。ハートや星、水玉模様にレースという仕様
例えば、子供服も展開していたサーフ系ブランド「PIKO」の習字バッグもありました。
2000年代の終わり頃になると、もともと裁縫セットのデザインとして人気だったドラゴンのイラストが習字バッグにも登場し、こちらも小学生男児の心をつかみました。しかし、中学生、高校生と長く使う可能性があるため、子供っぽいドラゴンを選んだことを後悔する人も多かったと聞きます。
かつて筆者は小学生時代、姉からのお下がりの赤い習字バッグを使っていました。さすがに男子でそれだとイジメられるため、墨汁で黒く塗り、さも黒いバッグのふりをして使用していたのです。しかし剥げていってしまうという切なさがありました。そんな思い出からすると、とてもうらやましい限りです。
撮影/榊 智朗