(右)味の素冷凍食品 マーケティング本部 リテール事業部 リテール製品戦略 第1グループ長の松浦 嵩氏と(左)日本シュウマイ協会会長のシュウマイ潤
連載【日本シュウマイ協会会長・シュウマイ潤の『みんなが知らない、シュウマイの実力』第16回
シュウマイ研究家のシュウマイ潤が、シュウマイを生業とする企業のトップや担当者に「シュウマイ」について尋ね、新たな「シュウマイ愛」を発見し、さらなるシュウマイの可能性を探る!
今回は、冷凍シュウマイ業界の絶対王者「ザ★®シュウマイ」をはじめ冷凍惣菜を担当する、味の素冷凍食品 マーケティング本部の松浦 嵩(まつうら・たかし)氏に話を聞いた。
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味の素冷凍食品のシュウマイシリーズ
シュウマイ潤(以下、潤) 「ザ★®シュウマイ」はじめ、味の素冷凍食品さんのシュウマイにはお世話になり、そのご縁でさまざまなご担当者さんとはご挨拶させて頂きましたが、松浦さんは初めてお目にかかります。
松浦 嵩(以下、松浦) こちらこそ、いつも弊社のシュウマイがお世話になっております! 実は私、昨年の7月に着任、シュウマイだけでなく餃子やハンバーグも担当しておりますが、「ザ★®シュウマイ」に関しては着任前から一生活者としてかなり愛用しています!
潤 担当する前から、絶対王者の味に惚れ込んでいたんですね。
松浦 無性に食べたくなるんですよね。妻との買い物とは別で、個人的に「ザ★®シュウマイ」をこっそり購入し、冷凍庫に忍ばせていました。ひとりで食べる食卓や晩酌のお供として最高で。担当者となってからは他のシュウマイ、そして餃子やハンバーグなどの冷凍食品も家庭で食べる日々です。

発売からまもなく10年目になる、大満足の9個入り「ザ★®シュウマイ」
潤 担当者として、他の冷凍食品と比べて「ザ★®シュウマイ」をどう捉えていますか?
松浦 2016年12月の発売から、もうすぐ10年目。お蔭さまで現在、冷凍シュウマイ市場内での販売金額はトップで、それだけのおいしさと食べ応え、納得感があると思います。
ただ冷静に分析すると、私たち成人男性は間違いなく好きな傾向ですが、子どもにとっては家庭で「ザ★®シュウマイ」を食べるイメージは湧きにくいかも知れません。弊社商品でいうと「プリプリのエビシューマイ」の方が、子どもが食べるイメージに近いと思われます。

プリプリのエビがおいしい、冷めてもふんわりやわらかな「プリプリのエビシューマイ」
潤 「プリプリのエビシューマイ」は、「ザ★®シュウマイ」が発売される前の冷凍シュウマイ業界の王者ですよね。
松浦 その通りで、かつてはシュウマイに限らず、餃子も含めて売り上げトップでした。1972年の発売以来、50年以上ご愛顧を頂いています。
潤 素朴な疑問ですが、なぜ調味料メーカーの味の素さんが冷凍食品を始めたんですか?
松浦 家庭や飲食店で使用する調味料を製造販売する企業として、戦前から事業を行ってきた弊社ですが、戦後の時代の流れを読み、これからは家庭で調理済み、時短料理が支持されていくだろうと予測しました。
その中で、1964年の東京オリンピックで注目され、学校給食で広がり始めていた冷凍食品が、今後、電子レンジの普及やコールドチェーンの確立と共に需要拡大していくと考え、12品を商品化しました。
その12品には「海老のコキール」や「仔牛のクリーム煮」など、家庭料理としてはかなり上級なモノもあったのですが、お客様の反応や時代の変化の中で、シュウマイ、餃子、チャーハンなどが残ったわけです。

潤 そこにシュウマイが入っているのは誇らしいですね! そんな中、なぜ改めて「ザ★®シュウマイ」が誕生したのでしょう?
松浦 先にも触れた通り、「プリプリのエビシューマイ」が安定したシェアを確保していましたが、冷凍食品の市場はお弁当需要から食卓に広がりつつあり、もっと拡大できるのではないかということで、従来とは異なる視点でのシュウマイ開発をスタートしました。
それまでは、お弁当の副菜としての位置付けが強く、基本的には小ぶりで、他の料理の邪魔をしないモノでした。
実は「プリプリのエビシューマイ」のようなシュウマイは、中華料理には存在しません。魚介類のすり身を使ったシュウマイという、新しい料理を53年前に誕生させたのです。
潤 まさにシュウマイの魅力のひとつ、脇役=バイプレイヤーの存在感を確立したのは、「プリプリのエビシューマイ」だったのかも知れません。

松浦 でも一方で、唐揚げやハンバーグのように"主役のおかず"になりうるシュウマイもあってもいいのでは?という事で、まさに「ザ★®シュウマイ」のテレビCMで俳優の小栗 旬さんが白飯をガツガツ頬張る、男性が好んで食べるようなシュウマイを追求して完成したのが「ザ★®シュウマイ」です。
潤 なるほど! ちなみに、お手本にしたお店のシュウマイはあったのですか? 主役的シュウマイというと、築地の町中華のシュウマイなどがイメージに近いと勝手に推測していましたが......。
松浦 これが目指しているモノは、既存のシュウマイにはありませんでした。「ザ★®シュウマイ」そのモノが目標としか言いようがないんです。
実際、元を辿れば弊社は調味料メーカーですし、その観点から本当においしい、主役になるシュウマイの味や食べ応えを、食材や調味料の視点から突き詰めた結果、「ザ★®シュウマイ」が誕生したというのが正確な所のようです。

潤 まさにオリジナルの主役シュウマイを、一から生み出したわけですね。そして、それを具現化したテレビCMの力も大きいです。
生意気ながら、我が日本シュウマイ協会では、2024年にリリースした新CMで、小栗さんを1年で最もシュウマイを盛り上げた方として「ベストシュウマニスト」に表彰ささせて頂きました。
松浦 ありがとうございます! そして、この度テレビCMを全面的にリニューアルしました。新たな主役は、Travis Japanの松田元太さんを起用させて頂きました。
子どもたちにも人気の松田さんに、"子どものために買っておいてあげたいシュウマイ"のシンボルになって頂こうと思っています。弊社として「ザ★®シュウマイ」を、もう一段先に行くための挑戦の一環です。
先ほども言いましたが、今までの「ザ★®シュウマイ」は、成人男性は全員が食べたい!と思える印象だったと思いますが、子どもたちが食べたいというイメージは比較的弱かったかもしれません。
ですがそれはイメージで、実際は子どもも食べてみるとおいしいといって食べるんですよ。何よりおかずの主役として、白ごはんが進みますしね。それを通して、ご家庭の子どもとそれを応援する親御さんという市場を開拓していこうと考えています。

2024年に味の素冷凍食品とコカ・コーラがコラボキャンペーンを実施した際にプレゼントされた、ザ★®コラボミニカーの(左)「走るザ★®チャーハン」と(右)「走るザ★®シュウマイ」 写真提供/味の素冷凍食品
潤 松田さんが未来の「ザ★®シュウマイ」、さらには冷凍シュウマイ全般のイメージを背負っていくんですね。
松浦 私は「ザ★®シュウマイ」のポテンシャルはこんなものではないと、ずっと感じていましたので今後の動向がとても楽しみです。
弊社に限らず、冷凍食品業界全体の惣菜のシェアを牽引するのは「冷凍餃子」です。実際の数値でも、冷凍シュウマイが約200億円の売り上げに対して、冷凍餃子は600億円以上です。
ですが、ポテンシャルは決して1/3ではない。食卓の主役になりうる力もありますし、なによりフライパンを使わず、レンジでチンするだけで完成する手間のかからなさは、今後、共働きや時短がさらに求められる社会において、評価されると感じています。
潤 そのためには、「ザ★®シュウマイ」だけでない、冷凍シュウマイ全体の価値の再評価も必要ですね。
松浦 おっしゃる通りで、まず、近年売り上げが伸びている「海老肉焼売」を今秋リニューアルし、海老の食感だけでなく見た目にもこだわり、販売促進にも力を入れていきたいと思います。
BSのテレビCMも制作、放送していますが、あっさり目のシュウマイを嗜好しそうなシニア層を開拓していきたいと思っています。

ちょっと贅沢で上品な「海老肉焼売」
潤 「海老肉焼売」は、発売直後から応援していました。海老と肉のハイブリッドのおいしさは、シュウマイにしか出せない魅力のひとつで、それを冷凍食品であれほどのレベルで表現できている事が、もっと評価されて欲しいです。
松浦 一方で、小型シュウマイの市場拡大にも注力します。
「プリプリのエビシューマイ」に近いサイズ感、15個入りでお買い求め頂きやすい価格帯を実現し、脇役だったおかずに存在感を増して、「ザ★®シュウマイ」や「海老肉焼売」なども含め、全方位で冷凍シュウマイを盛り上げていきたいと思っています。冗談ではなく、"追いつけ餃子!"がミッションです(笑)。

8月10日に発売された新商品の「XO香る肉焼売」。15個入り!
潤 最近、私は知れば知るほど、冷凍餃子のポテンシャルの高さに打ちひしがれていますが......その牽引役である味の素冷凍食品さんから、まさかそんなコメントが聞けるとは!
でも確かに、シュウマイが盛り上がれば、先を行くライバルである餃子が更に盛り上がる可能性もありますからね。
松浦 シュウマイのおいしさや価値が広がれば、逆に餃子の良さに改めて気づいてくれる機会も増えると思います。
今回はシュウマイのお話ですが、一応、どちらも担当するのが私のミッション部署なので(苦笑)、共存共栄で盛り上げていきたいと思います!
潤 そんなバランス感覚がよく、且つ、実はシュウマイ派な方が担当者であることは、シュウマイ側としては非常に心強いです。私も安心して、未来の冷凍シュウマイを盛り上げていけそうです。本日は、ありがとう御座いました!

シュウマイ潤が考案した「シュウマイポーズ」をする松浦氏
●味の素冷凍食品株式会社
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その他の詳細は、味の素冷凍食品公式サイトにて。
取材・文/シュウマイ潤 撮影/五十嵐和博