アニメ版のキービジュアル。BS朝日で毎週金曜夜11時から放送中、各動画配信サービスで順次配信中。
原作漫画でも話題になったひろしの表情の再現から、実物の料理を使った食事シーンまで、多くの反響を呼んでいるアニメ版『野原ひろし 昼メシの流儀』。Xなどでネットミーム化してバズっただけでなく、アニメ自体も広く人気を集めている。今、旬な作品の監督に「アニメ制作の流儀」を聞いた!
* * *
【ひろしの顔芸にこだわり漫画の表情を再現】10月からBS朝日で毎週金曜の夜11時から放送中のアニメ『野原ひろし 昼メシの流儀』。大人気アニメ『クレヨンしんちゃん』でおなじみの「とーちゃん」こと「野原ひろし」が主役の公式スピンオフ作品である。
本作は、サラリーマンとして働く野原ひろしの〝昼メシ〟に焦点を当てた物語。限られた時間とお小遣いをやりくりしながら、その日の昼メシに全力を注ぐ姿がコミカルに描かれている。
同名の原作漫画(漫画:塚原洋一)は、累計発行部数80万部を突破。アニメ版も、今期の〝覇権アニメ〟(同クールに制作されたアニメの中で最も話題になった作品)との呼び声が高い。なぜ、おじさんが昼メシを食べるだけの作品がこんなにも話題を集めているのか。アニメ版の監督を務める西山 司氏に話を伺った。
――本作の大ヒットについて、率直な感想を聞かせてください。
西山 毎クール本当にたくさんのアニメが放送されている中で、こうして話題になっているのはすごくうれしいことです。
――もともと原作漫画は読まれていましたか?
西山 正直、お話をいただくまではネットミームになっている画像を見かけたことがあるくらいで......。でも一度読み始めると、仕事の合間や休憩中に、手に取って繰り返し読みたくなる作品だと感じました。
作中で大きな事件は起こらないのですが、だからこそ心穏やかに楽しめますよね。読むとホッとする、そんな物語だと思います。
――アニメ化に際して、原作から意図的に変えた部分はありますか?
西山 基本的には漫画の内容をもとに制作していますが、アニメにすると尺が足りない部分はこちらで創作して膨らませています。また、漫画ではひろしが本当にいろいろな表情をしているので、アニメでもひろしの〝顔芸〟にはこだわっています。
特に「串かつの流儀」の回は、世の中に広く知られているカットがあるので、漫画の雰囲気をそのままアニメで出せないかと意識して制作しました。結果、視聴者の皆さんに喜んでもらえたので良かったです。
――ほかに、ひろしの表情にこだわった回があれば教えてください。
西山 第1話でカレーのにおいを嗅ぐところですかね。原作では「カツ丼の流儀」の回に出てくる表情だったのですが、インパクトのあるネタだし、せっかくなら1話に盛り込みたいと思い、カレーの回にあのカットを入れました。
あと、アニメではひろしが辛さを感じた瞬間にすごい顔をしています。これは漫画にない表情なのですが、視聴者の皆さんにかなりウケたようで良かったです。
すしを食べる回の多幸感あふれるひろしの表情。うまさが伝わるひろしの食リポも本作の魅力だ
激辛カレーを食べたときのアニメオリジナルの表情。原作ファンの期待に応えつつ独自の演出にも挑戦する
【実写料理で作画をコストカット】
――本作は「オルタナティブ・アニメ」というジャンルだそうですが、どのようなアニメなのでしょうか?
西山 私たち株式会社DLEの代表作でもある『秘密結社 鷹の爪』は「フラッシュアニメ」で制作しており、低コストで作品を量産する強みがあります。一方で、いわゆる「2Dアニメ」は高クオリティですが、時間とコストがかかる作品が数多くあります。
そのふたつの中間、これまでのフラッシュアニメより高クオリティかつ2Dアニメよりは低コスト・短納期で制作するミドルクオリティのアニメーションが、「オルタナティブ・アニメ」です。
――作る上でこだわった部分や苦労したところは?
西山 本作はこれまでのフラッシュアニメよりはコストをかけて作っていますが、それでも作画は基本的に社内で完成させているので、普通のアニメに比べると絵があまり動かない。見ている人を退屈させないよう、テンポ感や間の取り方、カットを切り替えるタイミングなどいろいろと試行錯誤しながら作っています。
――オルタナティブ・アニメで本作を制作しようと思った理由について教えてください。
西山 昨今のアニメ業界の課題解決につながればいいなという思いがあります。
オルタナティブ・アニメが普及すれば、作り手の負担が軽減されるとともに、原作などのIP(知的財産)が旬のうちにスピード感を持ってアニメを制作・公開できます。そうすると、作品が成功する確率も高められるのではないかと考えています。
本作は低コストで制作されたアニメながら、視聴者を飽きさせない工夫がふんだんに盛り込まれている
――ネット上で話題となった実写を使った食事シーンも、作画コストをカットする狙いがあるのでしょうか?
西山 料理をおいしそうに描くのは、実はすごく大変なことなんです。制作体制上あまりそこにリソースを割けないので、どうしようか考えていたところ、スタッフから「実写でいいんじゃないですか?」と言われてハッとし、その案を採用しました。実写なら一番おいしそうに見えますからね(笑)。
加えて、アニメの中で急にバーンと実写の映像が出てくることにより、退屈さの軽減の一助にもなるかなと。ちなみに料理は8Kで撮影しており、めちゃくちゃ美麗な映像に仕上がっているんです。
――あの食事シーンは某グルメドラマを彷彿とさせますが、意識していますか?
西山 特別意識したつもりはありません。でも、あのドラマは個人的に好きでよく見ているので、無意識に影響を受けているのかもしれませんね(笑)。
【賛否両論を呼んだとあるキャラクター】――本作はネットで大きな反響を呼んでいますが、世間の声をどのように受け止めていますか?
西山 もともとネットとの相性がいい作品だとは思っていましたが、こちらが想像していた以上に話題になっていて驚きました。
――ひろしのおごりなのにひろしより高いランチを選ぶなど、ずうずうしい一面をのぞかせていますね。
西山 どこか憎めないかわいい後輩のつもりだったのですが、「マグロ丼の流儀」の回であんなことになるとは(笑)。ファンの間でも「川口はこんなキャラじゃない」「いや、これはちゃんと川口だ」みたいな論争が起きているらしいです(笑)。
一方で、『クレヨンしんちゃん』本編ではあまり描写されていない川口のキャラクター性を、本作で掘り下げられたのは良かったと思います。今後も、ひろしと川口のやりとりを楽しみにしてもらえたら幸いです。
賛否両論を巻き起こした後輩の川口(右)。ひろしの価値観の古さを指摘する場面もあり、怖いもの知らずのキャラだ
――ひろしと川口のCV(キャラクターボイス)には『クレヨンしんちゃん』と同じ声優さんが起用されていますが、おふたりにはどのような演技をオーダーしましたか?
西山 私から特別なお願いはしていません。「いつもどおりお願いします」とだけお伝えしました。見ている側の視点は変わりますが、ひろしや川口にとってはあくまでも日常の出来事なので、普段どおりのほうがいいかなと。
声優さんの中でも、ひろし役の森川智之さんには特に頑張っていただいていると感じます。
絵があまり動かないので、油断すると退屈なものになってしまう可能性もある作品なのですが、多くの人から「あっという間の30分だった」という感想をいただいています。森川さんをはじめ、声優の方々が力を発揮してくれたからこそ、そのような視聴体験を与えられたのだと思っています。
――最後に、今後の展開について可能な範囲で教えてください。
西山 12月の最終回に向けて、いろんなサプライズキャラクターの登場を予定しています。最後まで見逃さずにお楽しみください。
僕個人としては、もし2期目をやるのであれば『川口の流儀』を作ってみたいです。ただ、ひろしに昼メシをたかるだけの回になりそうなので、川口がますますいじられちゃいそうですが......(笑)。
* * *
制作の裏側を知り、アニメ本編をさらに楽しめそう。今後の放送にも期待大だ。
●西山 司(にしやま・つかさ)
監督・演出。
取材・文/渡辺ありさ(かくしごと)

![【Amazon.co.jp限定】鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 豪華版Blu-ray(描き下ろしアクリルジオラマスタンド&描き下ろしマイクロファイバーミニハンカチ&メーカー特典:谷田部透湖描き下ろしビジュアルカード(A6サイズ)付) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Y3-bul73L._SL500_.jpg)
![【Amazon.co.jp限定】ワンピース・オン・アイス ~エピソード・オブ・アラバスタ~ *Blu-ray(特典:主要キャストL判ブロマイド10枚セット *Amazon限定絵柄) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Nen9ZSvML._SL500_.jpg)




![VVS (初回盤) (BD) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51lAumaB-aL._SL500_.jpg)


