【AIvs人間 ファイナルバトル最前線!!】「AIで抜く人」はクッションに腰を振る犬と何が違うのか？

いよいよAI（人工知能）が社会の隅々まで実装され、"普通の人"の仕事や暮らしにまで浸透し始めた2025年。それは世の中をますます便利にする一方、速すぎる変化が戸惑いやあつれきを生んでもいる。

生成AIを活用したエロコンテンツが増えている。股間が反応してしまう一方で、なんか抵抗のある自分もいる。そのモヤモヤを言語化すると、「クッションに発情する犬みたい」ということではあるまいか？　この点について、いつになくマジメに考えましたよ。

AIの波はエロにも及んでいる。アダルトコンテンツとテクノロジーに詳しいライターの刈田萬蔵（かりた・まんぞう）氏が興奮気味に語る。

「2023年にAIを使ったリアルな生成静止画、いわゆるAIグラビアが話題を集めましたが、今はそれどころではない状況です。

実写風やアニメ風のエッチな動画を作ることができるアプリがリリースされた上、セクシーな会話が楽しめるAIチャットボット、AI音声によるASMR（生々しい感覚を得られる聴覚コンテンツ）も次々と誕生しています。

商業ベースでは生成AIを使ったエロマンガが人気です。大手ECサイト『FANZA』では約24万もの作品が販売されており、中でも『バ先のパート主婦（41）を家に連れ込んだら10年ぶりの汗だく本気セックスした話』は同EC内で12万部以上のヒットを記録しました」

生成AIを用いたエロマンガ『バ先のパート主婦』（通称）。大学生の主人公が、バイト先のスーパーのパート主婦と関係を持つという筋書きで、累計12万部以上の販売数を誇る。フルカラー115ページ。現在、第3弾の発売が予定されている　©2025 mamaya

驚くのは、AIの影響がAV業界にまで及んでいるということだ。

「24年、AVメーカー・FALENO傘下のレーベル『ノースキンズ』が、日本初となるAIを用いたAV（以下、AIAV）『【3.1次元】AI美少女アイドル 咲乃ミライ18歳　専属新人デビュー』をリリース。

本作はプレイする女優の顔を、AIで作った美少女の顔にすることに成功。通常のAV作品の数十倍の売り上げを記録したそうです。その後もAIAVは大量にリリースされ続けています」

『【3.1次元】AI美少女アイドル　咲乃ミライ18歳 専属新人デビュー』2024年3月に発売された、AIAVの先駆的存在。3.1次元から現れた幻のAI美少女、咲乃ミライが主演。2025年には2作目が発売された

ノースキンズでAIAVを制作しているボンバーマン監督に、舞台裏を聞いた。

「TikTokやYouTubeで『顔だけAIで美形にした女のコの動画』が流行していますよね？　例えばYouTubeでは街中をノーブラで散歩するチャンネルが一時流行しましたが、これも大半が顔をAIで加工していました。AIAVはあれをより進化させた技術を使って作られています。

制作過程は、まず女優さんをキャスティングしてAVを撮影。その後、編集上で顔の部分をAIで生成した美少女の顔にすげ替えます。以前は顔の編集に1ヵ月ほどPCを稼働させなければいけませんでしたが、技術の進化によって作業時間は半分に短縮されました」

テクノロジーの発展は作品の幅も広げている。

「AIの技術を使って女優さんの顔を若返らせたり、目や鼻だけを〝デジタル整形〟することも可能。

ファンタジーものに登場するエルフのように耳をツンととがらせたり、サキュバス（女夢魔）のように角を生やすこともできる。エロ表現はAIによって大きく拡張され、多くの人を魅了していくはずです」

実際、AIAVのファンは日に日に増加している。大手メディアの部長を務めるM氏も熱心なユーザーのひとりだ。

「最初は身構えていたのですが、実際に見たらあまり違和感を感じませんでした。で、気づいたら勃起していた（笑）。初めはそんな自分に動揺しましたが、鑑賞していくうちに気づいたんです。AIとはいえ、こんなにキレイな女のコのセックスが見られるなんて最高じゃん、と。

それと、AIAVにはカラダの良い女優さんが起用されているケースが多い。普通のAVを見ていても胸やお尻で抜いていることが多いですし、ふと顔を見ればAIの美少女顔がある。完璧じゃないですか」

『史上初・完全AI美少女爆誕！ 美処女コスプレイヤーAV Debut 杏仁めい』3次元の女優に2次元アニメ的な女性の顔を当てはめたAIAVも誕生している。作品内ではメイドや女子高生などのコスプレを披露

美少女ゲーム『Vtuberメイドラミエ』のシナリオライター、あま味かぼちゃ氏もAIAVを推すひとり。

「自分は2次元のアニメやゲームで抜くので基本AVを見ません。

アニメ顔とAV女優のカラダが融合しているのに違和感がない。むしろ女優の生身の肉体がアニメ顔をよりリアルなものに引き立てているんです。

また普通のAVでは、演じている女優さんが渾身のアヘ顔をしていてもあまり派手に感じないことがある。でもAIAVのアニメ顔はマンガのように表情が誇張されているので、激しく感じている、恥ずかしがっているなどの反応がパッと見でわかります。この表情だけで白米3杯は食えますよ！」

さて、ここで一度立ち止まってみたい。AIによって生成されたエロコンテンツは、いわば現実に実体のないもの。それに興奮して抜いているという状況に、何か引っかかるものはないだろうか。例えばこれは、クッションに腰を振る発情期の犬と何が違うのか？

もっと言うと、AIの進化を前に、人類は退化していないだろうか？　

懸念材料はまだある。前出の刈田氏はこう指摘する。

「現在、生成AIによる電力需要が激増しています。

つまり、われわれがAIを使うと消費電力が増え、火力発電の際に排出されるCO2の量も増加します。AIで抜けば抜くほど、地球温暖化が加速するかもしれないのです」

倫理的な懸念点もある。

「AIAVや生成AIで顔を美少女化されたエロTikTokerは本当の顔がわかりません。これは性産業に従事する女性にとっては素晴らしいことかもしれない。身バレがないわけですから。一方でわれわれ男性の立場からすると、恋人や嫁、娘が出演していてもわかりません」

この問題について、大学で情報工学を専攻し、著書に『読むだけでグングン頭が良くなる下ネタ大全』（新潮社）がある作家の堀元見（ほりもと・けん）氏に意見を仰いだ。

「結論から言うと、そこまで心配しなくていいと思っています。まず消費電力についていえば、実はインターネットが普及し始めた頃にも同様の危惧が広まっていたんです。

ところが技術が進歩するにつれて電力コストは劇的に下がりました。AIに関しても、大規模言語モデルの学習コストは5年前の10分の1程度になっている。このペースで指数関数的にコストが下がり続ければ、5年後は今の10分の1の電力で稼働させられるようになるでしょう」

近親者が知らないうちにAIエロ作品に出演する件に関しては、こう看破する。

「まだAIAVでは実現していませんが、人体をまったく使わない、顔、カラダ、声がAIで生成された作品がそのうち出てくると思います。

これなら前述のような懸念は払拭されますね。もしかしたら『この食品は遺伝子組み換え作物を使用していません』みたいに、『本作は実在の女性が一切出演していません』なんて表示がされるようになるかもしれません」

そう語った上で、AIエロコンテンツの未来像について、こうぶち上げた。

「『ヒトは生成AIとセックスできるか 人工知能とロボットの性愛未来学』（池田尽訳、新潮社）の著者であるケイト・デヴリン氏いわく、エンジニアリングの世界では初めは現実世界にあるものを模倣するところから始まるけど、最終的には現実世界にない、洗練されたものに進化していくそうです。

で、性も同じような道筋をたどる可能性があるのではないかと彼女は言っているのですが、個人的にはすごく共感しています。

数年前、テキストを画像に変換するAI『Stable Diffusion』がはやり始めた頃、試しにエッチな画像を作ってみました。ええ、拙著の執筆のためです。で、当時はノウハウがなかったので雑に指示してみたら、人ではないものが生成されたんです。足らしき部分、おっぱいらしき部分がいっぱいある肉塊のようなものでした。

こう聞くと、グロいものを想像しますよね？　でもパッと見、幻想的で美しい絵画のように見えて、『これはこれで悪くないんじゃない？』と思ってしまいました。

このように生成AIでエロを追求した先には、人の形ではない肉塊みたいなものや、形容し難い謎の画像がわれわれの興奮のトリガーを引く時代になるのかもしれません。大量のデータを基に、より人が興奮する画像を生成することはむしろAIが得意とすることでしょうから。

AIが作ったエロ画像で抜く人類を、『実体のないものに興奮している』という意味で『クッションに腰を振る犬』と言うなら、そうでしょう。でもそれは退化ではないと思う。

より人間の本質的な認知や本能を抽出し、また人間の能力が拡張したという意味では、むしろ進化ではないでしょうか」

その結論はおのおのが自分の股間に手を当てて考えてほしい。

取材・文／尾谷幸憲　イラスト／服部元信