箱根で3連覇を狙う、青学大の原晋監督。出雲、全日本の優勝は逃すも、層の厚さと抜群の調整力で他校を上回れるか
2026年1月2、3日に開催される第102回箱根駅伝。
まずは3連覇を目指す青学大。Vメンバー6人が卒業し、新チーム始動時は「優勝は0%」(原晋監督)という状況で25年10月の出雲は7位に沈むも、11月の全日本では3位に浮上。さらに11月22日のMARCH対抗戦1万mを、5人が27分台で走破するなど状態は急上昇している。
出雲と全日本はエースの黒田朝日(4年)が終盤区間で区間賞を獲得するも、レースの流れをつかめなかった。しかし箱根では、3年連続となる2区起用が濃厚。前回は区間歴代3位の1時間5分44秒で走破しており、〝花の2区〟でアドバンテージを奪うことができるだろう。
その勢いを、1万m27分台の2年生トリオ(折田壮太、飯田翔大、佐藤愛斗)で加速させられるのか。原監督は、山に1年生を起用する可能性も示唆しており、5区(往路の上り)と6区(復路の下り)は未知数な部分がある。
しかし7区以降は、8区で2年連続の区間賞を獲得している塩出翔太(4年)ら、逃げ切る戦力は整っている。
11月の全日本を制した駒澤大は、エースの佐藤がケガから復帰。前回からの区間変更など、選手の起用法も注目される
前回2位の駒澤大は全日本で優勝。佐藤圭汰(4年)の復帰が大きかった。前回7区を驚異的な区間新記録で突っ走った佐藤は、3区など往路での起用が有力だ。
さらに藤田敦史監督は、前回5区で4位だった主将・山川拓馬(4年)の「5区以外」の起用を示唆。前回6区を区間歴代5位で駆け抜けた伊藤蒼唯(4年)も、平地に起用することも考えているという。
区間配置は読めないが、佐藤、山川、伊藤、前回1区2位の帰山侑大(4年)の4本柱が、1~7区のどこかに入りそうだ。
前回3区6位の谷中 晴、同4区4位の桑田駿介の2年生コンビも往路の候補。前回に8~10区を担った3年生たちも控える。いずれにせよ栄冠を勝ち取るためには、佐藤、山川、伊藤の3人が走り終えた時点でトップに立っておきたいところだ。
10月の出雲で連覇を飾った国学院大。
前回3位の国学院大は、4年生の青木瑠郁、上原琉翔、高山豪起、3年生の辻原 輝、野中恒亨という5人が軸だ。今季は主将の上原がチームを引っ張って出雲を連覇。そして、野中がエースに成長した。全日本3区で留学生選手を抑えて区間賞を獲得し、1万mは日本人学生歴代6位の27分36秒64をマークしている。
総合力は高いものの、ここ2年の箱根では5区で苦戦してきた。上原と高山が挑み、共に区間2桁の順位。その対策も気になるが、前田康弘監督はどう先制攻撃を仕掛けるのか。
前回7区2位の辻原を「4区で起用予定」と明かしているが、2区タイプではない野中の起用区間、そしてポイントと考えているという1区にも注目だ。
前回4位の早稲田大は、2区と5区に強力な経験者がいる。主将の山口智規(4年)は、日本インカレで日本人初となる1500mと5000mの2冠に輝いたスピードランナー。出雲では2区で圧倒的な区間賞を獲得した。3年連続となりそうな箱根の2区でも快走するだろう。
また、〝山の名探偵〟と呼ばれる工藤慎作(3年)が充実している。全日本8区では、偉大なOB・渡辺康幸氏が保持していた日本人最高記録を更新。本人は箱根の5区で、「68分台の区間新記録」に意欲を燃やしている。
それから、スーパールーキーの鈴木琉胤も、往路での起用が濃厚。圧倒的な〝個〟を生かして、まずは往路Vを果たして、逃げ切りを図るつもりだ。
中央大は前回、往路で鮮やかな〝独走劇〟を演じた。1区で吉居駿恭(4年)が抜け出すと、3区の本間 颯(3年)も区間賞。5区の途中までトップを守り続けた。今季は、全日本で過去最高の2位。1万m27分台ランナーを6人そろえて、エントリー上位10人の1万m平均タイムも、史上初の27分(55秒98)台に到達した。
藤原正和駅伝監督は、溜池一太(4年)を前回と同じ2区で起用することを明言。本間の3区起用も濃厚だろう。
5強以外では城西大、創価大、帝京大に上位進出のチャンスがありそう。城西大は2区候補のヴィクター・キムタイ(4年)がいて、山も強力。
前回は5区の斎藤将也(4年)、6区の小林竜輝(2年)が共に区間3位だった。斎藤は1週間前に発熱があった中での区間3位だったため、万全ならば〝山の神〟クラスの活躍を見せるかもしれない。
創価大は吉田 響(サンベルクス)という大エースが卒業したが、榎木和貴監督が「最強の6人」と呼ぶメンバーで出雲は3位に入った。スティーブン・ムチーニ(3年)が2区の候補で、スピードがある小池莉希(3年)も期待十分。そのほかの選手たちの個性も輝かせて、「3位以上」を目指している。
帝京大は、前回5区で17位に沈んだ楠岡由浩(3年)がエースに成長。全日本は2区で区間賞、1万mでは帝京大初の27分台に突入した。
チームは、全日本で早大と35秒差の6位。
上位争い、シード権争いも例年以上に熾烈になりそうな今回の箱根は、最後まで気の抜けないレースが続きそうだ。
取材・文・撮影/酒井政人 写真/アフロ



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