箱根駅伝は青学大が3連覇。それでも来季の上位陣は勢力図が激変...の画像はこちら >>

青学大の3連覇で幕を閉じた箱根駅伝。山登りの5区で快走した黒田は卒業するが、選手層は厚い。
来季も安定感は変わりなさそうだ

第102回箱根駅伝は気象条件も良く、5区間で6人が区間新記録をマーク。総合優勝した青山学院大は往路復路とも大会新で、総合タイムは大会記録を3分45秒も上回る10時間37分34秒とハイスピードなレースになった。

事前の予想では、昨年11月の全日本大学駅伝で上位を占めた駒澤大、中央大、青学大、國學院大、早稲田大の〝5強〟の対決になるとみられていた。

しかし、主力の駒の多さで若干優位と思われていた駒大は、5人中3人が故障で復路を走ることになった影響もあって6位。中央大も、エースの吉居駿恭が直前に足の痛みが出て復路に回るなどして5位と、予想外の結果になった。

そんな中で、2位の國學院大に2分33秒差をつけた青学大の勝利を決定づけたのは〝山〟の区間だった。

過去2回、2区を区間新記録(2024年は区間賞、25年は区間3位)で走った黒田朝日は、他校の監督たちからも「5区を走っても強い」と警戒されていた。

大会前には駒大の藤田敦史監督も「他大学が最も嫌がるのは黒田くんの5区。2区なら1時間5分で走っても1分しか稼げないが、5区だとどのくらいのアドバンテージを奪うかわからない」と話していた。

前回は黒田のほかにも、山の上り・下りを含めて4人の〝大砲〟がいたが、今回は黒田ひとりだけだった。そんな中で原晋監督が、彼を最も有効に使える5区で起用したのは当然だろう。

黒田はトップと3分24秒差の5位でタスキを受け取ると、驚異的な走りでトップに立ち、往路1位でゴールした。

記録は、それまでの区間記録を2分弱も更新する1時間7分16秒。総合優勝争いをすると予想されていた國學院大を3分弱、駒大と中大を4分以上も上回る快走で、3校に決定的な差をつけた。

さらに山下りの6区では、1年生の石川浩輝が区間3位ながら歴代4位のタイムで走破。18秒差で復路をスタートした早大との差を1分34秒に広げた。

光ったのは山の区間配置の巧みさだけではない。4区を走った3年の平松享祐は、1区を走る予定だった荒巻朋熙の体調不良による〝代役〟だったが、歴代7位のタイムで区間3位と好走。順位を8位から5位に上げ、黒田の逆転劇を演出した。控えの選手も含めた抜群の調整能力と、チームの総合力の高さを見せつける勝利だった。

来季の各大学の戦力を見ると、チームを牽引してきた学生トップレベルの選手が卒業する強豪校が多く、勢力図は少し変化しそうだ。

優勝した青学大は、前回6人が抜けたのに続き、黒田をはじめ4年生4人が抜ける影響は大きいだろう。とはいえ、重要な区間となる6区に頼もしい1年生が登場したのはプラス要素だ。

また、4区を予定していながら急遽1区を走り、区間16位と出遅れた小河原陽琉、2区10位だった飯田翔大は、ほかの駅伝ではきっちりと結果を出しており、来季は主力になる選手だ。

彼らに加えて、7区で区間3位の佐藤愛斗や10区で区間2位の折田壮太といった〝新3年生〟がチームを牽引するだろう。

さらに、今回の4区で自信をつけた平松、6区の石川のほかにエントリーされていた1年生2人も、共に5000m13分台のランナーで、さらに成長してくるはず。山の区間を走る選手の育成にも実績があるだけに、新1年生を含めた総合力の高さは揺るがないはずだ。

箱根駅伝は青学大が3連覇。それでも来季の上位陣は勢力図が激変!?
2位の國學院大も、今回のメンバーが複数残るためチーム力は大きく下がらなそう。来季は悲願の初優勝を目指す

2位の國學院大も、今回のメンバーが複数残るためチーム力は大きく下がらなそう。来季は悲願の初優勝を目指す

復路新の記録で総合2位だった國學院大も、1区で区間新記録を出した青木瑠郁ら4年生3人が卒業するが、今回は3年生と2年生のうち4人が区間4位以上で走った。

また、弱点だった5区で区間4位だった髙石 樹、9区を歴代5位のタイムで走り区間3位だった野田顕臣と、1年生2人も活躍。戦力のバランスが良く、チームに安定感があった。

今回は2区で区間12位と、1区でトップに立った流れを維持できなかったのが往路4位という結果につながった。だが、3区で区間3位だった野中恒亨は、昨年11月の八王子ロングディスタンスで日本人学生歴代6位のタイムを出した疲労が残っていたことも考えられる。

出雲駅伝と全日本では留学生ランナーと張り合う爆発力を見せており、4年生となる来季はエースとして、主要区間で区間賞争いができるはず。チームとしても、青学大に劣らない総合力を誇る陣容になりそうだ。

箱根駅伝は青学大が3連覇。それでも来季の上位陣は勢力図が激変!?
早大は5区の工藤(写真)が来季も残るほか、大物ルーキーが複数入学する。ほかの上位の大学も警戒する戦力になりそうだ

早大は5区の工藤(写真)が来季も残るほか、大物ルーキーが複数入学する。
ほかの上位の大学も警戒する戦力になりそうだ

ただ、その2校も警戒する存在になりそうなのが早大だ。狙っていた往路優勝は果たせず総合4位だったが、万全なら5区で1時間8分台を狙える〝山の名探偵〟工藤慎作が新4年生として残る。

さらに、大物ルーキーの鈴木琉胤は、23年の大会で東京国際大のイエゴン・ヴィンセント(現Honda)が出した驚異的な4区の区間記録に1秒差まで迫る1時間1秒を出すなど、来季からはエースとしてチームを引っ張るだろう。

復路は層の薄さが指摘されていたが、3年の小平敦之が9区で区間2位と快走。今春には、全国高校駅伝の1区で日本人歴代最高の28分20秒を出した増子陽太(学法石川)ら、同区で争った上位3人が入学するため、大幅な戦力アップが期待できる。

一方、上位10人の1万mの平均タイムが全体でトップ(27分55秒98)だった中大は総合5位だったものの、往路では共に3年生の1区・藤田大智と3区・本間 颯、2年生の4区・岡田開成が区間2位以上で走り、4区終了時ではトップだった。

復路も、2年生3人が区間4位、区間7位でまとめるなど駒はそろっている。今回11位だった5区を克服すれば、来季は上位争いに加われそうだ。

強力な4年生4人が抜ける駒大は戦力ダウンが予想されるが、新4年生の層が厚く、加えて次期エース候補として期待される谷中 晴、2区で区間8位だった桑田駿介(共に2年)がどこまで力をつけるかがカギになる。

〝5強〟以外だと、復路の健闘で総合3位に食い込んだ順天堂大は、卒業するのは1人のみ。また、5区の小林侑世が1時間10分31秒で区間5位と、十分計算できる記録で走ったのは大きい。素質がある選手も多いだけに、往路前半の爆発力をつければ優勝争いにも食い込めそうだ。

取材・文/折山淑美 写真/岸本 勉 北川直樹

編集部おすすめ