幹部同士の夫婦喧嘩がきっかけで分裂状態へ!? 新左翼最大の『...の画像はこちら >>

東京都江戸川区の前進社。中核派中央派の機関誌を発行する出版社であり、活動拠点でもある

総選挙に向けて立憲民主党と公明党が合流して立ち上がった中道改革連合に対し、「中革」との略称が「過激派を連想する」と不意に脚光を浴びた中核派。
その組織は目下、分裂状態に陥り、存続の危機に瀕している。60年代の武装闘争をけん引し、その後も成田闘争などで機動隊との衝突やテロ事件を重ね、共産党に対抗する新左翼党派で最大の構成員を誇った中核派に、いま何が起きているのか。

中核派の正式名称は、革命的共産主義者同盟全国委員会(革共同)。学生組織であるマルクス主義学生同盟中核派から、組織の呼称として一般化した。革共同は共産党に代わる革命組織を呼号して1957年に結成され、3度の分裂を経て63年に中核派が組織された。

中核派は街頭闘争に力点を置き、60年代後半の安保闘争や大学紛争では、機動隊や共産党学生らと角材のゲバ棒や鉄パイプ、火炎瓶で渡り合い、数々の騒擾事件を起こした。多数の逮捕・服役者を出す一方、当時のメンバーにはコピーライターの糸井重里氏や作家の高橋源一郎氏らが名を連ね、数千人規模の集会を開催したり、土建会社から角材が寄付されたりと、社会に一定の存在感を示した。

【暗室で犬を撲殺する特殊訓練】

しかし、69年の東大安田講堂の籠城戦を機動隊に鎮圧され、70年に新安保条約が自動延長となると活動に陰りが見えてくる。

残ったメンバーは先鋭化して生き残りを賭け、63年の分裂で決別した革共同革マル派との殺人を伴う内ゲバ闘争に突入。中核派トップの本多延嘉書記長が暗殺された75年は、その復讐で革マル派を年間で14人も殺害するなど、まさに血で血を洗う抗争を繰り広げた。不毛な殺し合いへの没入は世間の失望を買い、組織の退潮と孤立を深めていく要因となった。他党派に属していた70代の元活動家が回想する。

「中核派は、殺人などの非合法活動に関わる"糾察(きゅうさつ)隊"という専門部隊を設けました。ターゲットの自宅を特定し、深夜帯に周辺の電話回線を切断したり停電させたうえで、ガスカッターでドアを突き破り、就寝中だった相手をバールで撲殺するというのが常套手段でした。

その模様を『涙を流して命乞いしてきたが正義の鉄槌を振り下ろして完全殲滅した』などと、軍報と称して機関誌でグロテスクに喧伝する。糾察隊は、技術と度胸をつけるために、暗室に放った犬を1分以内に仕留めるという特殊訓練を積んでいたそうで、革マル派は"求殺隊"となじり、徹底抗戦を訴えていました。

両者の内ゲバで70人近くが死んでいて、そのほかにも植物状態や手足の切断といった重篤な後遺症を抱えた者も多数います。中には、人違いで殺傷されたケースもあります。彼らの殺し合いのせいで、『左翼に入ると殺される』というイメージが世間に浸透してしまいました。

そもそもの中核派の内ゲバの動機は、法政大などの拠点校の死守という側面が強く、革マル派以外の他党派学生でも『自己批判しろ』と因縁をつけられ、長時間の正座や反省の弁を強要するなど、暴力にマヒして無軌道に陥っていきました」(元活動家)

幹部同士の夫婦喧嘩がきっかけで分裂状態へ!? 新左翼最大の『中核派』、断末魔の叫び
潜伏活動時代を含め、半世紀にわたり中核派の求心力だった清水丈夫前議長。(2021年1月27日撮影)

潜伏活動時代を含め、半世紀にわたり中核派の求心力だった清水丈夫前議長。(2021年1月27日撮影)

中核派は90年代に入ると革マル派との内ゲバから手をひき、街頭デモや拠点校での自治会活動、成田空港反対農家や緊密な関係にある労働組合の支援などに力点を置く。また、メンバーが居住する江戸川区内の本拠をメディアに公開したり、学生メンバーによるYouTube番組を配信してきたが、新規のメンバー、特に学生の獲得が年々目減りする課題を払拭できずにいる。

「中核派は60年代後半の最盛期で1万人近い動員力を誇っていたが、最近の警察の統計で3000人。ただ、何も告げずに飛んでいくメンバーも多数いて、実際に活動しているのはこれよりもっと少ないでしょう」(前出の元活動家)

【夫婦喧嘩で組織が混乱!?】

こうした中、中核派が分裂問題を抱えているという。

警視庁担当記者が語る。

「中核派の学生組織である全学連の女性委員長が昨年7月、婚姻関係にあるという学生担当の男性幹部の振る舞いが性差別的だとメンバーらに告発しました。具体的には、家庭領域を、多忙を理由に蔑(ないがし)ろにしてきたというごく一般的な夫婦間のトラブルで、性暴力があったわけではないことを委員長自身も認めています。

事態を知った指導部は8月末、幹部が告発事実を認めたことを理由に、『4年以上ものおぞましい性暴力、女性差別』と断じ、この幹部の全役職の解任という処分が持ち上がりました。すると、委員長は厳重処分に『頭ごなしの決定だ』と態度を一転させて反発し、『(幹部が)承認できる所まで転換している』とかばいだしたため組織は蜘蛛の巣をつついたような騒ぎに。9月の集会で幹部の除名処分に踏み切った中央派と、これを強権的だとして夫婦側についた大半の学生メンバーとの間で決裂したのです」(警視庁担当記者)

分裂の影響はすぐさま顕在化した。両派の衝突を懸念してか、10月に開催予定だった中核派が関与する成田空港反対集会が中止に。反イスラエル集会を両派が別で同時開催したことも。拘置所周辺で拘留中の学生へのエールを送っていた学生と、中央派とみられる活動家がもみ合う事態まで起きている。

幹部同士の夫婦喧嘩がきっかけで分裂状態へ!? 新左翼最大の『中核派』、断末魔の叫び
名称が中核を彷彿とさせると話題になった中道改革連合。中核のように分裂状態に陥らなければよいが‥‥

名称が中核を彷彿とさせると話題になった中道改革連合。中核のように分裂状態に陥らなければよいが‥‥

ただ、対立に至った背景にはさらに根深いものがあったようだ。前出の活動家がこう見立てる。

「この夫妻は、動画制作やメディア取材を積極的に担っていて、いわば中核派の顔的存在でした。彼らを中心とする学生メンバーは、現地闘争と称して沖縄や広島でデモをして動画に上げていますが、かつてのように米軍基地への突入を図ったり、機動隊と乱闘するわけではない。

逮捕歴を重ねてきたオールド活動家にすれば生ぬるくて観光旅行のようだと映るし、その費用は、かれらのなけなしの給料で納めた党費からあてがわれているわけなので、不満がたまっていた。長年の世代間対立が、今回の騒動をきっかけに一挙に噴出したわけです。昨年9月には、1997年から最高指導者の座にあった清水丈夫議長(88)が高齢を理由に退任し、今なお後任が定まっていないことも求心力が低下している一因でしょう。

ただ、男性幹部への除名処分をめぐっては、学生が夫妻についたことで、平均年齢が上がった中央派は目立った活動ができず、左翼老人の互助運動と化していく。財政基盤がない学生グループは、活動費捻出のためにバイトに勤しみ、首都圏ぐらいしか活動の場がなくなる。『夫婦喧嘩は犬も食わない』というが、中核派が日頃、『権力の犬』と敵視する公安警察にはおいしい話でしょう」(前出の元活動家)

先行きは互いに暗い両者。組織が衰退したおかげで、かつてのような殺し合いが今のところ起きていないことだけが救いになっている。

文/山本優希 写真/iStock.com、時事通信社、中道革命連合公式HP

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