堂本光一がホンダPU開発トップ・角田哲史LPLを直撃! アス...の画像はこちら >>

初公開された2026年型のホンダPU、RA626Hの前でホンダ・レーシングの角田哲史LPL(左)と撮影に臨む光一。「今年のホンダは、天才デザイナーのエイドリアン・ニューウェイ、フェルナンド・アロンソ選手と共に戦います。
ファンとしては期待しかない」と熱く語る

マシンのレギュレーションが大きく変わる2026年のF1はパワーユニット(PU)が勝負の鍵を握るといわれている。5年ぶりにワークス復帰を果たすホンダの仕上がりは? 堂本光一がホンダのPU開発の責任者・角田哲史氏にズバリ聞いた!!

* * *

【PUの信頼性は9割まできた】

堂本光一(以下、堂本) 今年はF1のレギュレーションが大きく変わります。マシンの心臓部であるパワーユニット(PU)の電動モーターの出力比率が上がり、エンジン(内燃機関)とモーターが5割ずつの比率となります。電気エネルギーの量は120kWから350kWへと約3倍に増えていますが、開発の大きなポイントは、エンジンだといわれています。

角田哲史(以下、角田) 新レギュレーションでは電動モーターの出力が350kWとなっていますが、一方のエンジンは最高出力が定められていません。エンジンは開発がうまくいけばいくほど出力を上げられます。

エンジンに関しては今年から新たに100%持続可能燃料の使用が義務化されます。その中で、いかにエンジンの出力アップのための新しいアイデアを思いつき、うまく取り入れられるかが勝負の鍵になる可能性があります。

堂本 僕はエンジンが好きなので、エンジン勝負になるのはうれしいですね。

角田 ただ、まだテストも始まっていないので(*対談は1月20日に行なった)、ホンダの立ち位置はまったくわかりません。とにかくわれわれとしては自分たちができるベストをやる、としか今は言えません。

実際、これまでも開幕戦を自信満々で迎えたことは一度もないんです。

いつも「これは大丈夫かな、あれをしておけばよかったかな」と思いながら開幕戦のスペックを決めなければならなかった。そこがF1の難しいところであり、エンジニアとしての醍だい醐ご味みでもあります。

堂本 昨年までのF1は接戦が続きました。今年はそれが様変わりしそうですね。

角田 今年のPUは仕上げるのが非常に難しいので、メーカー間で差がついたまま開幕を迎えることになるかもしれません。スタート時点で大きな差があったら、PUは簡単に作り直せないので、そこから挽回するのは難しい。また、車体も大きく変わるので、どのチームが正解なのかは走り出してみないとわからない部分があります。

堂本 僕が仕事をするエンターテインメントの世界と比べることはできないと思いますが、自分はステージに立つときは「何%ぐらいの仕上がりで初日が迎えられた」という感覚があります。ホンダのPUは、現状ではどれぐらいの仕上がりですか?

角田 うーん......答えにくい質問ですね(笑)。パフォーマンスに関しては、ほかのチームの状況を見ないとわからないのでなかなか言いにくいですが、PUの信頼性の部分は9割のところまできたかなと思っています。

堂本 その数字を聞いて安心しました!

堂本光一がホンダPU開発トップ・角田哲史LPLを直撃! アストンマーティンとのタッグで5年ぶりのワークス復帰【F1開幕直前スペシャル対談】
対談が行なわれたのは1月20日。「PUの仕上がり状況は?」という光一の質問に「信頼性は9割まできた」と返答する角田LPL。「安心しました!」と光一は笑顔を見せた

対談が行なわれたのは1月20日。「PUの仕上がり状況は?」という光一の質問に「信頼性は9割まできた」と返答する角田LPL。
「安心しました!」と光一は笑顔を見せた

角田 2月に入ると実車でのテストが本格的に始まります。そこで想定どおりに進んでくれればいいのですが、実際にコースを走ってみないとわからないことはたくさんあります。

今年はPUを搭載するチームも変わっていますし、マシンに載せるバッテリーが大きくなったり、これまでエンジンに組み込まれていたモーターを車体側に積んでいたり......と、本当にたくさんの変更点があるので、そういった部分がどう出るのか? 正直、私も緊張しています。

もちろん、アストンマーティンとは模擬テストのようなことはしていますが、ある程度のところまではやれたのかなと思っています。

【今年のF1は「最適化」が鍵】

堂本 シーズン序盤はやはり信頼性が鍵になりますか?

角田 トラブルが出てしまうと、信頼性の確保にエネルギーを取られて、性能向上に関する開発ができなくなってしまいます。まずはしっかりと信頼性を確保して、パフォーマンスを向上させるという次のステップのための仕事に集中したいですね。

特に新しいルールでは、PUメーカーにも厳格なコストキャップ(開発予算制限)が課せられます。そこが実は、ホンダが最も苦手としているところなんです。

堂本 今シーズン、PU開発費の上限は年間約1億3000万ドル(約200億円)となっています。ホンダは新しい開発にどんどん挑戦するので、どうしてもお金がかかってしまうということですか?

角田 それもありますし、ホンダはどちらかというと、スロースターターなんです。そこから追いつき追い越せがホンダのスタイルでした。

でも今年からは使用できるテストベンチ(PUのテスト装置)は6台から3台に減らされています。

そうすると何を優先させるのかを早い段階で決めて、もっともっと賢く開発を進めていく必要があります。

堂本 例えば、ネジ一本のコストまで考えながら開発をしなければならないわけですね。

角田 そのとおりです。ひとつの部品を作るにしても、追いかける立場だと開発スピードが命になります。これまでは「コストがかかってもスピードを上げるために必要だったらやる」というのがホンダのスタイルでした。

しかし新しいルールでは、これまでのようなやり方は通用しません。コストキャップという新たな制限が加わったことで、今までよりも難易度はかなり上がっています。

堂本 今年のF1は「最適化」が鍵なんですね。

堂本光一がホンダPU開発トップ・角田哲史LPLを直撃! アストンマーティンとのタッグで5年ぶりのワークス復帰【F1開幕直前スペシャル対談】
「今年のF1は最適化が鍵なんですね」と光一。角田LPLに聞きたい話は尽きない。

「今年のF1は最適化が鍵なんですね」と光一。角田LPLに聞きたい話は尽きない。

角田 まさにそうです。先ほど話した信頼性の話も一緒なんです。

信頼性が低いと次から次へと部品を交換することになります。そうすると開発費がかさみ、パフォーマンスを上げるための開発が十分にできなくなってしまう。

でもF1は信頼性ばかりを重視してもいけません。当然、速さを見せないと勝てない。高い次元で、信頼性とパフォーマンスをどうバランスさせるのか? それが新たなルールの下での大きなチャレンジになります。

【アロンソ選手に喜んでもらいたい】

堂本 角田さんは、マクラーレンと組んで2015年にスタートした第4期のときは苦い思いをされていますよね。

角田 そうですね。

堂本 今年のアストンマーティンには、マクラーレン・ホンダで苦しい時期を過ごしたフェルナンド・アロンソ選手がいます。今度は彼とどんなストーリーを見せてくれるのか、楽しみです。

角田 もちろん私も、ドライバーには満足してもらいたいです。PUの開発は常に苦難が伴うものですが、われわれとしてはベストを尽くして、アロンソ選手に喜んでもらえるようなPUを仕上げたい。その結果として、いいドラマが演出できればいいなと思っています。

堂本 本当に筋書きのないドラマが生まれるのがF1です。ホンダの第5期活動がこれから始まりますが、最後にあらためて今シーズンの目標を聞かせてください。

角田 トップで戦えるようにしっかりとPUを仕上げることです。もちろん、トップとは優勝です。頂点に立たなければ、われわれの存在意義を問われますから。

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新たにパートナーを組むアストンマーティンとは「チャンピオンシップを取りたいという思いを共有できています」と語る角田LPL

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堂本 大変なプレッシャーだと思いますが、その中で戦うことをどう感じていますか?

角田 楽になりたいですね(笑)。でもエンジニアとしてF1に携われるのは幸せです。その代わりに開発のトップとしてプレッシャーを受け止めるのも自分の仕事だと思っています。皆さんの期待に応えられるように全力で戦います。

堂本 その姿勢はすてきですね。僕もファンのひとりとして今年のアストンマーティン・ホンダを応援します!

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2026年型マシンの前でHondaの三部敏宏社長と撮影に臨む。三部社長は「世界最強のPUを作り、F1の頂点に挑戦する」と力強く語った

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スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) ヘア&メイク/大平真輝 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア

●角田哲史(かくだ・てつし) 
ホンダ・レーシングLPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)。

ホンダ入社は1989年。初代NSXのエンジン設計に携わり、97年からF1エンジンの設計を担当。ホンダの第3期と第4期のF1活動に参画し、2022年にパワーユニット開発総責任者に就任。2026年のPU開発の指揮を執る。

●堂本光一(どうもと・こういち) 
1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】

構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼

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