安定志向の学生が増え、就職人気が高まる公務員。特に地方公務員は、地元で働くこともでき、安定と同時に地域密着型のやりがいも感じられそうだ。


だが、そもそも地方公務員とは普段、どんな仕事をしているのだろうか?

とある地方都市の市役所に勤める現役の地方公務員であり、さまざまな職場を渡り歩いた経験を綴った『リアル公務員』(英治出版)が話題になった町田智弥氏が語る。

「端的に言うと『ゆりかごから墓場まで』に関わっているのが地方公務員です。出生届に始まり、結婚すれば婚姻届、最終的には死亡届も公務員が受け取りますからね。さらに職種も採用区分では事務職、技術職、保健職などに大別されますが、業務の範囲は多種多様。

事務職は一般的な事務仕事をなんでもします。それどころか、農産物をブランド化して売っていく商社のような仕事もあれば、観光部では旅行代理店のような業務もあります。
事業PRは広告代理店のようですし、細かい作業でいえば、理系の技術系分野では建築図面も引きますし、公共工事の現場監督もします。私は交通部門にいたときにコミュニティバスのダイヤを作りましたよ」

一般的にもたれているイメージは役所での窓口業務だが、実態は何でもこなせる“ゼネラリスト”が多いようだ。

「中小企業対策を担当すれば、足しげく中小企業に通って、業績回復のためにうまく業態転換して乗り切る方法はないかと悩んだり、農政課であれば農家を回って、なかには牛に蹴られてケガをする人もいるくらい。ですから、市民の方々と同じように、地元の企業や農家とも距離は近いです」


しかも団塊世代の大量退職が相次ぎ、職員ひとりあたりの仕事量が増加。かつては「毎日定時で帰れる」といった印象があったが、現実は異なるという。

「残業は多いです。
例えば税関係であれば、確定申告の時期などは残業が増えますし、祭りなどのイベントを受け持つ部署だと、祭りのひと月前は道路規制の話から、テキ屋の調整など集中的に残業が増えます。そういった時期的な残業のほかにも、建築確認申請など書類をさばく部署や、外回りが多い部署は夜に書類をまとめたりと、一年を通して常に残業が多くなります。ただ、残業代も税金ですからダラダラせず早く帰るよう意識してます」

それでも、一般企業のような倒産とは無縁の世界。定年まで安定しているのでは?

「公務員だから国に守られているという意識はありません。常にリスクを考えるべきです。夕張市もそうですし、家電メーカーの液晶工場に頼っていた某自治体は同社の業績悪化に伴って税収が激減。
大企業1社に依存するような自治体は、同じリスクを背負っているといえます。もはや、かつてのような『安定』というイメージは、現役公務員の僕らですら持てません。これからは、常に何か新しいことをしないと立ち行かない時代だと思います」

(取材/頓所直人、興山英雄)

■週刊プレイボーイ41号「総力特集12P 本気で目指す『地方公務員』大研究」より

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