日産「ノート」2020年12月発売、価格...202万9500~218万6800円、目標値引き額...3万円、お買い得グレード...X、2020年4~9月の平均販売5180台(先代モデル)。新時代の日産顔で登場。
昨年は国産車の売れ筋モデルが相次いで新型に切り替わり、超激戦状態になっている。いったいどれを選べばいいのか? 自動車購入ガイド誌で編集長を務めた経験を持つジャーナリスト・渡辺陽一郎氏が今年買うべきクルマを徹底指南する!
■初売りから3月の決算商戦は始まっている
――新年を迎えて、各自動車メーカーは「新春初売り」に力を入れてますね。
渡辺 今年はコロナの影響で地域により開始日に差がでそうですが、例えばダイハツやスズキは、例年であれば1月3日から初売り営業を開始しています。4日、5日に初売りを始める販売会社も多い。
――ズバリ初売りの魅力は?
渡辺 ディーラーオプション10万円プレゼントや特別金利のローンなど"お年玉"的な条件が飛び出すケースがあります。でも本当に、オイシイのはそこじゃありません。
――どういうこと?
渡辺 3月の決算フェアの実績を販売店が数字に反映させるには、3月中に登録(軽自動車は届け出)する必要がある。そうなるとコロナの影響などで納期の遅いクルマについては、3月中に登録するには遅くとも1月中旬に契約しないとマズい。
つまり、初売りの結果によって3月の決算が左右される可能性があるんです。そのため各社とも初売りに力を注ぐわけです。
■ノートのオプションに注意せよ!
――で、今年の注目車ですがトップバッターは?
渡辺 12月23日に発売開始された日産の新型「ノート」でしょうね。新車が少ない日産党にとっては注目の一台だと思います。
――大ブレイクは2012年に全面改良した2代目ですね。
渡辺 正確には16年のマイナーチェンジ時に追加したeパワーの投入で人気に火がつきました。滑らかな加速や静粛性などが評価されて販売が一気に伸び、新車販売(軽自動車除く)では17年から3年連続で小型車トップ。18年には日産史上初の年間1位に!
「スッキリ引き締まった」と評判の外観。ちなみにボディは5ナンバーサイズだ
――日産の戦略車である新型ノートの注目ポイントは?
渡辺 企業連合を組むルノーと車台を共有し、eパワー専用車になったことです。
――なぜ純ガソリンエンジンは廃止されたんですか。
渡辺 仮に先代モデルと同様に純ガソリンエンジンを用意していたら、新型ノートの自慢である上質なインパネの実現は無理だった。というのも、eパワーと純ガソリンエンジン車とでは、かなりの部分を造り分ける必要がある。そうなるとコストがかかってしまう。だから、eパワーに絞ったのだと思います。
――新型ノートの売れ行きは耳に入っています?
渡辺 まだ新型の売れ行きはわかりませんが、従来型の保有台数はかなり多いので、乗り替え需要があるから、しばらくは好調に売れるはず。
――狙い目のグレードは?
渡辺 ノートで選ぶ価値のあるグレードは最上級のXです。ヤリスなどは車間距離を自動制御できる運転支援機能が幅広いグレードに標準装着されますが、ノートのプロパイロットは、Xにのみオプション設定されています。しかもカーナビとのセットオプションです。
さらに言うと、そのセットオプションには液晶のインテリジェントルームミラーなども加わるので、総オプション価格は44万2200円になってしまう(笑)。
質感の高い内装。センターディスプレイは9インチ。
――マジか!
渡辺 つけ加えるとLEDヘッドランプも、ハイビーム時に相手車両の眩惑(げんわく)を抑えるアダプティブ機能を含めて9万9000円のオプションです(標準装着はハロゲン)。これらをノートXに加えると、総額は272万8000円になる。
――ノートXの車両価格は220万円以下ですが、最新装備をつけると、50万円以上高くなると。
渡辺 ちなみにヤリスの最上級モデルにオプション装備をたっぷりつけても総額は約250万円です。ノートを狙うなら、「プロパイロットを装着すると、ライバルと比較しても価格があまりにも割高だ!」と交渉しましょう。
――そのほかの注目車もどんどんお願いします。
渡辺 続いてはN-BOX。こちらも12月24日にマイナーチェンジを受けた新型が発売されたばかりです。
――2017年8月に登場した現行モデルの改良型ですね。
渡辺 はい。今回は3年4ヵ月ぶりの大がかりな改良となりますが、とにかく17年の発売以来、売れに売れている。軽と登録車を含めた国内新車販売台数において3年連続トップで、軽自動車に限れば5年連続で新車販売1位。昨年6月には累計販売180万台を達成しています。
――ただ、昨年9月以降はヤリスが国内販売総合トップに輝いていますよね。
渡辺 確かに統計上はヤリスが1位ですが、このなかにはヤリスクロスも含まれます。ヤリスとヤリスクロスは異なるクルマなので、実質的には今も国内販売の1位はN-BOXといえる。
ホンダ「N-BOX」2020年12月発売価格...141万1300~212万9600円、目標値引き額...8万円、お買い得グレード...L、2020年4~9月の平均販売1万5100台(先代モデル)。写真左がN-BOX、右がN-BOXカスタム。新型は内外装共にブラッシュアップされた
標準車のインパネはダークブラウン、カスタムはマルチブラック塗装に変更された
――圧倒的人気の秘密は?
渡辺 N-BOXの室内は軽乗用車では最も広く、家族4名で移動するときも快適です。後席を畳めば大容量の荷室になり、自転車も積みやすい。荷室の床はトップ水準の低さですから、自転車を積むときも前輪を大きく持ち上げる必要がない。衝突被害軽減ブレーキなども充実しており、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなど、運転支援機能も豊富です。
――では、新型N-BOXをお得に買う方法は?
渡辺 新型は内外装のデザインを変更し、装備も充実しています。かなり強気な販売が予想されますが、粘ればディーラーオプションのサービス装着、下取り査定額の上乗せには応じるはず。まぁ値引きが少なくても、中古市場で大人気のカスタムを選べば、数年後の下取り査定額はかなり高く、正直お得です。
――次はヤリスの説明を。
渡辺 ヤリスは昨年2月に発売されたコンパクトカーの新型車で、売れ行きも好調。後席と荷室は狭いですが、ボディは軽く燃費もいい。ノートと違い先進安全が標準装備なのもうれしいポイントです。
トヨタ「ヤリス」2020年2月発売、価格...139万5000~249万3000円、目標値引き額...5万円、お買い得グレード...1.5G、2020年4~9月の平均販売1万3200台。スポーツカーの走りに近く、運転していて楽しいクルマだ。後席は大人の男性にはチト窮屈
ディスプレイオーディオは全車標準。Xは7インチ、それ以外は8インチだ
――そして4番目の注目カーはフィットです。
渡辺 フィットは立体駐車場で使いやすい高さに抑えていますが、車内は広く、ヤリスとノートを上回ります。視界性も優れ、価格も割安。フィットはトータルで優れたクルマで、超お買い得ですよ。
ホンダ「フィット」2020年2月発売、価格...155万7600~253万6600円、目標値引き額...7万円、お買い得グレード...1.3ホーム、2020年4~9月の平均販売8420台。乗り心地はいい。室内は予想外に広い。ラゲッジスペースへの荷物の積み込みも楽だ
水平基調のインパネとピラーにより前方視界を向上させた。シートの座り心地も良好
■リセール最強のSUVとミニバン
――軽自動車では、昨年6月に登場したタフトも話題です。
渡辺 タフトは装備が充実しているのに価格が割安なのも魅力です。135万3000円のXでも、ガラスルーフのスカイフィールトップ、LEDヘッドランプ、電動パーキングブレーキまで標準装備です。
ダイハツ「タフト」2020年6月発売、価格...135万3000~173万2500円、目標値引き額...5万円、お買い得グレード...G、2020年6~9月の平均販売5880台。36年ぶりに復活したダイハツ伝説のクロカン名「タフト」。エンジンは自然吸気とターボを用意する
開放感がハンパないガラスルーフ。インパネはアクティブ感を演出
――SUVで注目のライズは、昨年売れに売れましたね。
渡辺 ライズはダイハツ「ロッキー」のOEM車としてトヨタから販売されているSUV。操舵(そうだ)感などに改善の余地は残しますが、実用性と趣味性を併せ持ち価格も割安。兄弟車同士の競合が激化しており、購入のチャンスです。
トヨタ「ライズ」2019年11月発売、価格...167万9000~228万2200円、目標値引き額...8万円、お買い得グレード...G、2020年4~9月の平均販売1万170台。ダイハツが開発・製造を担うOEM車。ロッキーとは兄弟車になる。コスパ高し!
ディスプレイオーディオは9インチ。居住性は上々。トランク容量は369L
――ハリアーは?
渡辺 グレードによる差はありますが、ハリアーはリセールバリューがめちゃくちゃ高い。特に昨年のフルモデルチェンジで中古市場での人気も過熱しています。3年ごとにクルマを買い替える人は、ハリアーを選んでおけば下取り額を当てにできますよ。
トヨタ「ハリアー」2020年6月発売、価格...299万~504万円、目標値引き額...21万円、お買い得グレード...ハイブリッドG、2020年6~9月の平均販売7200台。美しいクーペスタイル。兄弟車はRAV4とは思えない。リヤランプは横一文字タイプを採用している
12.3インチの大型ディスプレイが目を引く室内。ラゲッジはゴルフバッグ3つを収納できる
――同じことはアルファードにもいえますよね。
渡辺 ええ。アルファードもリセールバリューの良さは国産車の中で飛び抜けており、資産価値が高い。
トヨタ「アルファード」2018年10月発売、価格...352万~775万2000円、目標値引き額...28万円、お買い得グレード...2.5S、2020年4~9月の平均販売7380台。ゴツいにも程がある大型のフロントグリル。この顔になってからアルファード人気に火がついた。ミニバンの絶対王者
顔と同じく運転席もかなりオラオラ系だ。ちなみに2列目の乗り心地は国産車最強だ
――初売り商戦注目車、ラストは軽自動車2台です!
渡辺 軽自動車では、N-BOXのライバルになるスペーシアとタントは本当にお買い得。N-BOXと条件を比べて選ぶのもアリ。とにかく、初売りには注目です。
スズキ「スペーシア」2020年8月一部改良、価格...129万8000~195万9100円、目標値引き額...8万円、お買い得グレード...ハイブリッドX、2020年4~9月の平均販売1万400台。スペーシアは標準、カスタム、ギアと3つの個性を持つ
外装と同じく、内装も「スーツケース」がモチーフだ
ダイハツ「タント」2020年8月一部改良、価格...124万3000~200万2000円、目標値引き額...9万円、お買い得グレード...X、2020年4~9月の平均販売8700台。ターボモデルは余裕のある走りを堪能できる。自然吸気でも快適だ
運転席には多彩な収納スペースが。メーターはデジタル表示
●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。1989年に自動車購入ガイド誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長に。1997年に同社取締役を兼任。その後、フリーランスに。著書に『運転事故の定石』(講談社)など
渡辺陽一郎氏
撮影/本田雄士 写真協力/トヨタ自動車 日産自動車 本田技研工業 ダイハツ スズキ