今年1月13日に発売開始となったノア(左)とヴォクシー(右)のミニバン姉妹。どちらも実に個性的な顔面に仕上がっている
進化した顔面が大きな話題を集めているトヨタの新型ミニバン。
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■ミニバンの顔面がド派手なワケ
トヨタ ノア 価格:267万~389万円 値引:6万円 リセール:A ノアは問答無用のゴツ顔。ギッラギラの顔面が実にまぶしい。実物を見ると超ド迫力。ゴツ顔好きにはタマらない顔面だ
――新型ノア&ヴォクシーが話題を集めていますが、どちらも顔がド派手スね。アルファードも含めて、なぜミニバンって顔が個性的なんスか?
渡辺 ミニバンは外観が地味だと、商用車に見えてしまいます。
トヨタ自慢の最高級ミニバンのアルファード似のリアランプ。ちなみに4代目から全車3ナンバーになった
――派手顔の歴史は?
渡辺 元祖派手顔ミニバンは、3代目の日産ラルゴに追加されたハイウェイスターですね。1995年に特別仕様車として登場しました。あれから27年が経過し、エアロミニバンも定着しましたね。
――実はミニバンの売れ行きがハンパないとか?
渡辺 はい。
トヨタ ヴォクシー 価格:309万~396万円 値引:6万円 リセール:A 個性派になったヴォクシー。一部ファンからは、「新型はエヴァっぽい顔面で、超カッケー」なんて声も上がっている
――今回試乗した新型ノアとヴォクシーも売れている?
渡辺 はい。その結果、現在のトヨタ車の中で特殊な立ち位置になりました。
――どういうこと?
渡辺 今のトヨタはコストアップにつながる姉妹車の廃止も視野に入れ、全店が全車を扱う販売体制に移行しましたが、ノアとヴォクシーの姉妹車は残しました。開発者に聞いたら、ノアとヴォクシーは国内専売車だから多く台数を売りたいと。
しかし、今後は少子高齢化だから、販売を保つには新しいお客さんを取り込む必要がある。そこでノアはミニバンの主流に位置づけながら、ヴォクシーを上手に活用し、今までミニバンに関心のなかったお客さんを振り向かせたいと。結果、ヴォクシーで新しいチャレンジをしたようですね。
ヴォクシーもノア同様、4代目から全車3ナンバーに変更された。
――なるほど。ノアは従来の顧客を押さえ、ヴォクシーは新しい客層を狙っているから姉妹車だけど顔が異なると。
渡辺 従来の販売比率はヴォクシーが6割で、ノアが4割でした。ところが新型の目標値は逆で、ノアが6割です。ノアを手堅く売り、ヴォクシーは冒険をするから台数も抑えているんです。
実際、販売店を取材すると、「発売直後は乗り替え需要の豊富なヴォクシーが多く売れていたが、最近はノアの好調さが目立っている」と。
ノア&ヴォクシーの内装 ノアとヴォクシーにそれほど大きな違いはないインパネ。視界はかなり良好。収納スペースも磨かれた
――トヨタが本気なワケは?
渡辺 ミニバン市場は少子高齢化もあって将来が危ぶまれています。
――だから、この新型はトヨタの意気込みがハンパないわけですね?
渡辺 そうです。顔やプラットフォームだけでなく、新型のノーマルエンジンはハリアーなどと同じタイプに改め、ハイブリッドは第5世代に進化させています。先進安全装備も目を見張る充実ぶりです。ただし、開発費用は膨大です。絶対に失敗が許されないクルマだと思いますね。
ミニバンのキモであるシートアレンジも多彩。バックドア開閉時に任意の角度を保つ機能を採用。超便利
7人乗り仕様の2列目シートには、キャプテンシートや折り畳み式大型サイドテーブルなどを採用
●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務める。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
撮影/望月浩彦