翻訳の仕方にも様々なものがある。
 例えば原文に忠実に訳す「直訳」、原文の意味に捉われることなく意味を汲み取りながら翻訳する「意訳」などだ。

 しかし、ここ最近、よく聞く言葉がある。「超訳」だ。

 ディスカヴァー・トゥエンティワンから1月に出版された『超訳 ニーチェの言葉』(白取春彦/著)は発売1ヶ月で10万部を突破。ニーチェの思想をかいつまんで知ることが出来ると評判だ。他にもミシマ社から出版されている『超訳 古事記』(鎌田東二/著)や祥伝社新書の『超訳『資本論』』(的場昭弘/著)、など「超訳」という言葉にタイトルがつけられている。

 ではこの「超訳」、もともとは何処が語源なのか。
 調査をしたところ、英語学習の教材などを発行するアカデミー出版の社長である天馬龍行氏(本名:益子邦夫氏)が考案し、登録商標しているものだということが判明。

 さっそくアカデミー出版にその意味について聞いたところ、「超訳とは“意訳をより洗練したもの”です」という返答を頂いた。さらに、アカデミー出版のウェブページには「自然な日本語に訳すことを目指した」ものとして「超訳」が考案されたとある。

 初めて「超訳」がなされた『ゲームの達人』(シドニィ・シェルダン/原作、中山和郎・天馬龍行/訳、日本語訳版は1987年刊)は、その日本語の読みやすさに裏づけされたストーリーの面白さ、リアルさが受け入れられ、なんと上下巻合わせて700万部の大ヒットを記録。
 以降、「超訳シリーズ」はアカデミー出版の人気シリーズとなった。

 もちろん自然な日本語に訳することを主眼に置くため、原文を逸脱してしまう部分も出てくることもあるだろう。
しかし、「超訳」によって読者は本の世界により近づくことができる。
 アカデミー出版からは21作品の「超訳シリーズ」が出版されているので、チェックしてみてはいかがだろう。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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