“大人げない大人”として注目を集めるマイクロソフト日本法人元社長の成毛眞さんが、初めての英語本を出版した。マイクロソフトといえばバリバリの外資系企業。
成毛さん流の型破りな英語の勉強の仕方を教えてくれるのでは……と思ったら、なんと「日本人の9割は英語はいらない」という内容。一体どういうことなのだろうか?

 各雑誌でも話題となっている『日本人の9割に英語はいらない』(祥伝社/刊)の中で成毛さんは、英語をきちんと学ばなくてはいけない日本人は1割しかいないという。

 その1割に当てはまる人は、外資系企業に勤務するビジネスマンや、外国人が宿泊しにくるホテルの従業員、デパートの店員、外国人観光客向けのお店の店員などだ。また、研究者や医師なんかも論文を読みこなすために英語は必須となる。自分の仕事に直結するからこそ、英語を学ぶことが求められるのだ。
 しかし、9割の人にとっては、英語を勉強する必要性が見当たらない。

 成毛さんは第1章で「何のために英語を勉強するのか」という問いに答えられるかどうかを読者に問いただす。「海外の論文を自分で翻訳するため」とか「外国人の彼氏(彼女)をつくりたいから」という明確な目的があるならば、勉強するのも良いだろう。しかし、必要でないのに覚えようとするのは無意味なことではないか。
 であれば、今、すべきことは何か。つまり、自分の人生において大切で意義があることとは何だろうか。成毛さんはこれを「本当の学問」と呼び、本書の中で思考の磨き方を説明するとともに、日本の英語教育への批判も展開する。


 2011年より小学校5、6年生の授業で英語が必修となったことは記憶に新しいが、成毛さんは早くから英語を始めることに何の意味があるのだろうかと疑問を呈する。早期英語教育の問題は、英語の「発音」という点しか重視していないところにあるとし、そもそも母国語がしっかりできていれば何歳でも外国語は習得できると指摘するのだ。
 もちろん、それは「英語を勉強しなくても良い」ということではない。日本語とは違う言語を学ぶことで、世界を理解する一端にもなることは成毛さん自身も認めている。

 また、楽天やファーストリテイリングで導入された英語社内公用語化も厳しく批判する。そもそも20代、30代は仕事で覚えなければいけないことが山のようにもある。
それにも関わらず、英語の勉強に時間を取られたら、仕事に集中することができなくなる。そんなことよりも、若いうちに身に付けなければいけないのはビジネスマンとしての基礎体力だ。
 自分の生き方を会社に決めさせてはいけない。それでは、心まで奴隷になっているのと同じである。

 第5章では、「英会話を勉強するよりも読むべき本」として、12冊の本が紹介されている。英会話では英語以上のことは学べないが、読書は世界中の様々な知識を得ることができる…と言いつつ、『ビジネス英語 類語使い分け辞典』(すばる舎/刊)を最初の一冊に紹介しているあたりは、アマノジャクな成毛さんらしい。


 「英語ができても自分の付加価値にはならない」「英語ができても、バカはやっぱりバカである」など厳しい言葉が目次にならぶが、妄信的に英語を勉強すればいいのではなく、しっかりと目的を持って勉強することが大事だということに気づかされる、真実の英語論だ。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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