「保険金詐欺」や「麻薬の密売」、「美人局」などがすぐに思い浮かぶところですが、世界にはもっともっと怖いビジネスが存在します。
エコノミストである門倉貴史さんの著書『日本人が知らない「怖いビジネス」』(角川書店/刊)は合法・非合法問わず、世界各地で行われている“怖いビジネス”の実例を集めた一冊。
今回はそのなかから選りすぐった“怖いビジネス”をいくつか紹介します。
■環境破壊集団「エコ・マフィア」とは?
伝統的に麻薬の密売を主な収入源にしていたイタリアマフィアですが、最近は事情が違ってきているようです。
1980年代半ばに、イタリアでは産業廃棄物の不法投棄の取り締まりを強化する法律が成立しました。それをきっかけにマフィアが産廃処理ビジネスに参入しはじめたのです。
マフィアは費用のかかる産廃処理を格安で請け負うため、多くのイタリア企業は彼らに産廃処理を委託するようになりました。しかし、彼らのビジネスの内実は「不法投棄代行」。つまり、引き受けた産廃物をそのまま不法投棄しているのです。
彼らは採石場などイタリアに約4000カ所はあると言われている不法投棄場に、毒性の強いものも含めて引き受けた産廃物を投棄。最近では有毒産廃物を満載した船を爆破して海底に沈めるという荒業を使うようになっているとも言われています。
また、ナポリでは新しいゴミ処理場の建設に反対するカモッラ(ナポリを拠点とするマフィア)がゴミ収集をボイコットしたため、街がゴミの山となる事態も発生しています。
■売春婦にステロイドを支給するバングラディッシュ
近年、高い経済成長を続けているバングラディッシュは、都市の活性化による人手不足により、農村部から出稼ぎにくる人が増えているのですが、中には騙されて売春婦になる女性もいます。
彼女らも含め、バングラディッシュにいると言われている約20万人の売春婦の間で、今重大な健康被害が広がっているといいます。
それはステロイド中毒。
バングラディッシュでは、売春宿の経営者が売春婦にステロイド剤「オラデクソン」を支給する習慣があります。これは主に食肉処理する牛を短期間で太らせるために使う薬物で、人間の女性が摂取すると短期間のうちに脂肪がついてふっくらした身体になります。つまり、売春婦として魅力的な容姿にするためにステロイドを摂取させているというのです。
しかし、オラデクソンは非常に強い薬で、中毒性もあるため、常用するとやめられなくなったり、副作用に悩まされる人も増えているようです。
■ソマリアに開設された「海賊証券取引所」
依然として内戦状態にあるソマリア。政府による統制がとれていない状況のこの国では、ご存じのとおり海賊事件が多発して大きな問題となっています。
そのソマリアの海賊たちが首都モガディシュから北東410キロほどの場所にあるハラデレという町にオープンしたのが「海賊証券取引所」です。
「海賊証券取引所」のシステムは、地元民を中心とする投資家が上場する海賊団体が発行する株式を買い、海賊団体はその資金で武器や海賊船、燃料を調達、そして襲撃によって獲得した身代金を出資者に配当するというもの。
考えるだけで恐ろしい「海賊証券取引所」ですが、これによって小さな漁村にすぎなかったハラデレは一大金融都市となり、道路には高級車が走るようになったそうです。
本書には、この他にも世界各地から集められた「怖いビジネス」の数々が紹介されています。その多くは日本では犯罪とみなされるものですが、国によっては法律や倫理感の違いによって、あるいは政府が機能していないことによってそれらのビジネスが成立し、多額のお金が動いています。
(新刊JP編集部)