出版業界のホットトピックともいえる「電子書籍」。
 日本でにわかに活気付いたのは、2009年大手オンライン通販サイト「Amazon.com」が電子書籍専用端末となる「Amazon Kindle」の最新版「Kindle DX」を日本ほか100ヶ国でも販売が開始されたことであった。


 Amazonは一切販売実績を公表しないが、アメリカでは1000万人のアメリカ人が既に「Amazon Kindle」持っているか、もしくは購買を計画しているというデータもあるという(JPモルガン調べ)。
 それだけアメリカでは広く認知されているということだ。

 ここでは「Amazon Kindle」がどのような戦略によって生まれたか、アメリカでどのように受け入れられたかをまとめていく。

■失敗続きの電子書籍業界とAmazonからの発表

 電子書籍専用端末の開発・発売は2000年前後から相次いで行われていたが、いずれも期待はずれに終わっている。日本では、ソニーやパナソニックなどが2003年から2004年にかけて専用端末を発売しているが、こちらも広まることなく2008年には撤退をしている。

 こうした経緯があったからこそ、Amazonが自ら開発・販売することが発表されたときは大きなニュースとなった。

■「Amazon Kindle」の特徴は「本が好きな消費者に的を絞る」

 もちろん、「Amazon Kindle」にはエネルギーによる長時間の使用やPCに接続してのダウンロードの必要性がなく、情報が直接「Amazon Kindle」に送られてくるなどの高い性能を持っていたが、何よりフォーカスされなければいけないのは、「本好き」をターゲットに絞った、その設計哲学だろう。

 Amazon創業者のジェフ・ベゾスは本の最大の特色は「読み始めると消えてしまうこと」と語り、「Amazon Kindle」もそうあるべきだとした。読者が著者の世界に入り込めること、まさしく本好きのための電子書籍端末だったのである。

■「Amazon Kindle」登場以後のアメリカ電子書籍市場

 この「Amazon Kindle」の登場以来、アメリカの電子書籍市場は大きく変化した。
 現在ではバーンズ&ノーブル、ソニー、iRexが専用端末を販売しており、さらにはAppleもタブレット型端末となる「iPad」の発売を発表。

 今後3年から5年の間に爆発的な成長が期待できる、とも言われるほどの成長市場となっている。


■「Amazon Kindle」は米国メディアの危機を救う?

 新聞社が次々と経営破たんをするなど、未曾有の不況が伝えられるアメリカのメディア業界。
 しかし、実際に新聞社のウェブサイトには多くのユーザーが詰め掛けている。ニュー・ヨークタイムズ社には最高で2150万人、ワシントン・ポストでも月間920万人が閲覧しているという。

 つまり、人は確保しているものの、そこでビジネスて成立していないところが問題となっている。そういったメディアが期待するのが電子書籍であり、「Amazon Kindle」なのである。


 毎日新聞社から出版された『キンドルの衝撃』(石川幸憲/著)はアメリカにおいていかに「Amazon Kindle」が受け入れられていったか、メディアからどのような反応があったかなどを丁寧に綴っている。
 また、ジャーナリストらへのインタビューも充実しており、日本の電子書籍市場の夜明けを見据える上でも非常に史料価値の高い1冊である。

 日本語版「Amazon Kindle」の登場が待たれる。その前に、その本当の凄さを本書から読み取ってみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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