昨季限りでプロ選手生活にピリオドを打った元なでしこジャパンDF近賀ゆかり氏が日本サッカー協会のロールモデルコーチに就任。20日に取材に応じた。


 ロールモデルコーチはこれまで元日本代表選手である内田篤人氏や阿部勇樹氏、中村憲剛氏が務めているが、女性の就任は初となる。近賀氏は「伝えることはすごく難しいとは感じています。(指導者)ライセンスを取りに行っている中でも伝える難しさは感じています。これまで選手としてやってきて、現役の最後の方は若い選手に伝えることも増えましたけど、また指導者となればそれは変わってくると思うので、今回しっかり経験して、どこが自分に足りないのかと、自分ができることっていうのはしっかり見極めたい」と、選手への経験を伝えつつ、自身の成長の糧ともしたいと話す。

 自身の現役時代は「上手な選手ではなかったので」と謙遜したが、「どうやってメンバー入っていくか、どうやって自分の特徴で勝負していくかということでずっとやってきたので、そういったところを各選手の特徴を早く掴んで、『そこで勝負できるんじゃないか』ということなどは伝えていきたいです。現役が終わってすぐなので、まずはWEリーグのレベル感を意識して伝えながら、世界へというところも伝えていきたいです」と、自身ができること、やってきたことを積極的に話したいと続けた。

 ワールドカップでの優勝をはじめ多くの経験を持つ近賀氏。国内では日テレ・ベレーザ(現:日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、INAC神戸レオネッサという強豪、オルカ鴨川で2部を経験、サンフレッチェ広島レジーナでは新規立ち上げクラブでプレーし、海外でもアーセナル、キャンベラ・ユナイテッド、メルボルン・シティ、杭州女子倶楽部と3カ国でプレーした。その中で伝えられることとして、「高いレベルに在籍していた時の経験は、勝つためのチームはどういうものか」、「2部のオルカ鴨川に行った時は、中嶋(淑乃)と一緒にやっていましたけど、2部で活躍して今日本代表につながっている、上っていく選手も見た」、「日本ではつなぐスタイル、技術の高さなどで良さを感じるところはありますが、一方で勝負にこだわるところ、サッカーをしてお金をもらうという“プロ”としてのギリギリ感を中国などで見れたことも大きかったです」と、それぞれのカテゴリーを経験することで得られた知見が多くあるとのことで、「今まで自分がいいと思っていたものが、他方から見たら別にいいものではないというか、いろいろなサッカーがあるということを知って、すごく良かったなと思っています」と、広い視野や考え方を生かしていきたいと続けた。

 ロールモデルコーチはこれまで3名が務めているが、会見に同席した佐々木則夫JFA女子委員長は、「内田くんになでしこをサポートしていただいた時がありましたが、そこで感じたんです。彼がアドバイスをすることで選手たちの反応が素晴らしく良くて。やはり選手たちに近い経験のある方々を活用できるのは、サッカー協会特有の部分があると強く感じた中で、早々に女子でも活用しないといけないのではないかと検討し、こういった運びになりました。
男子での彼ら3人の活動の要素、そしてそれを間近で内田くんから経験したというところから、我々もというところに至ったわけです」と、大きな効果が得られると感じているとのことで、3名が主に世代別代表でロールモデルコーチを担ってきた中で、現場からも「コーチたちも(ロールモデルコーチを)配置した際には、『ぜひ身近な生の声、アドバイスを』と要望がありました」と、現場からの好反応もあったようだ。

 近賀氏は9月8日から実施予定のU-16日本女子代表の国内活動に参加する予定。「自分が監督に向いているのか、コーチタイプなのかなど、そういったところも指導していきながら見極めないといけないと思っていますし、もちろん勉強もしていかないといけないと思っています」と、自分の中での指導者像を決め過ぎずに、「どうやったら試合に勝てる、どうやったら試合に出られる、どうやったらうまくなるとかを一緒に考えるというか、私たちが若い時はバーンと言われて、それに向けてやっていく感じでしたが、それはちょっと違うなと思っていて、私にそれはできないし、だったら一緒に考えてやりたいと思っています。その選手が持つ良さを見つけて」と、選手に寄り添いながら導いていきたいと話している。もちろん、「本当にこれがスタートラインなので、選手たち以上に得るものをたくさん得て、帰ってきたいと思っています」と、個人としてどん欲に挑戦していきたいとも笑顔で語っている。
編集部おすすめ