日本代表のフィジカルコーチを務める松本良一氏が取材に応じ、来月に行われるアメリカ遠征、北中米3カ国で開催される来年のFIFAワールドカップへ向けた調整方法について語った。

 松本コーチは立正大学、ジェフユナイテッド千葉、アビスパ福岡、サンフレッチェ広島を経て、2018年に日本代表のフィジカルコーチに就任。
森保一監督の続投に伴い、就任から8季目に突入した。松本コーチは「カタールW杯が終わり、またこの仕事に就かせていただいたので、次はアメリカ・カナダ・メキシコで行われる北中米W杯のことを考えなければなりません。ご存知の通り、壮大なスケールで行われます。カタールはどこに行くにもアクセスが良く、スタジアムや気候も良かった。まずは開催国の環境を知らなければならないので、W杯出場を決める前から行動に移し、実際に現地に足を運んで活動してきました」と明かす。

 具体的な現地視察の例として話したのが、昨年アメリカで開催されたコパ・アメリカ2024だ。「コパ・アメリカはW杯とほぼ同じスケジュールだったので、現地に足を運び、どんな環境下でゲームが行われるのか。選手たちはどのようなプレーをするのか。試合が進むにつれて、選手はどのように疲弊し、パフォーマンスが変わっていくのか。調べさせていただきました」と収穫を手にした。また先月に行われた東アジアE-1サッカー選手権2025直後にも渡米し、リーグスカップ(アメリカMLS、メキシコリーガMXに所属するクラブチームが参加する大会)を視察した。「ネット上で見るのか、地図と見るのか、現地の知人などに話を聞くのか。
(アメリカの)西から東に行くには飛行機に乗って4~5時間の移動があります。日本から北京や香港に行ける距離です。実際に足を運び、現地の人に話を聞くのが一番」と現地視察を繰り返し、知見を深めている。

 松本コーチが「壮大なスケール」と話した通り、北中米W杯では出場国が32カ国から48カ国に拡大し、移動距離や試合間隔もこれまでとは大きく異なる。松本コーチは「1位・2位・3位どこで抜けるのか、どのグループに入るのかでスケジュールが変わってきます。例えばカナダのグループに入ったら西から東に飛び、間隔が一週間空く場合もあるので、コンディション維持が大変になります。次の試合に出られない選手は実践から10日以上空いてしまい、ゲーム感覚が狂ってしまう。例えばロシアW杯の時のようなアンダーカテゴリーの日本代表選手が帯同して、一緒に紅白戦をしたりするのか。現地のチームとトレーニングマッチを行うのか。いろいろなことが考えられます。スケジュールでいろいろなことが考えられるので、しっかりと対応できるような準備をしていきたい」と意気込んだ。

 次回のW杯で“最高の景色”を見るために、9月のアメリカ遠征(9/7vsメキシコ代表 9/10vsアメリカ代表)は最高の予行演習となる。
「飛行機移動と時差の部分を肌で感じてもらいたいです。西(オークランド)は湿度や気温が低いので、サッカーをするには最高な環境。そこから東(コロンバス)に行くと、気温が高くなる。気温や時差、移動の感覚を全員で感じながら、どのような調整をするのか。我々の中でしっかりとシミュレーションをしながら実践していきたい」と話す。

 今回の遠征では9月6日(土)現地時間19時にメキシコとの初戦を行い、そこから移動を含む中2日とタイトなスケジュールで9月9日(火)現地時間19時37分にアメリカとの第2戦を迎える。「(メキシコとの)試合に出た選手はスケジュール的にきついと思います。試合直後で眠れない中、すぐに飛行機での長距離移動で時差も狂う。まずは試合に出た選手のリカバリーを考えなければなりません。試合に出ていない選手をどう持っていくのか。練習時間も限られていますし、ホテルやお借りするコロンバスのチームのファシリティをどう使うのかを考えています。W杯で中2日はありませんが、移動を含む中3日はありますので、いいシミュレーションができるのではないかと思っています(松本コーチ)」。
厳しいスケジュールを乗り越えた先に、W杯へつながるヒントがある。日本代表にとって、大きな収穫が期待されるアメリカ遠征となりそうだ。

取材・文=三島大輔(サッカーキング編集部)
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