ラ・リーガ第7節終了時点で、首位に立つバルセロナとともに、無敗を維持しているクラブがある。エルチェだ。
今シーズンのサプライズとなりつつある、“ロス・フランヒベルデス”ついて、スペイン紙『マルカ』が特集を組んだ。

 3勝4分。これには、アトレティコ・マドリードのほか、ベティスやセルタといった欧州大会出場クラブとの対戦を含んでいる。だからこそ、チャンピオンズリーグ出場圏内の4位につけるエルチェに対して、「昇格組がラ・リーガに革命を起こしている」と、『マルカ』は賛辞を送るのだ。そして、ポゼッション原理主義者であるキケ・セティエンの“弟子”こと、エデル・サラビア監督が率いるチームの躍進を、「これは偶然ではない」と指摘する。「なぜなら、これらの成績の裏には、ピッチ上で反映される膨大な努力があるからだ。エルチェは勝利を収めているが、それと同時に良いプレーも見せている」と。続けて、「すべての試合を見たい、と思わせるスペクタクルなスタイルは、2年前のジローナを彷彿とさせる。ただし、彼らに『新しいジローナ』とレッテルを貼るのはフェアではない。エルチェは独自のアイデンティティを確立し、それを長い間、形作ってきたのだから」と目下注目を集めるチームを分析し始めた。

 前述したように、セティエンの“弟子”にあたるサラビア監督も、ボールを保持するスタイルを好んでいる。とりわけ、スペイン国内に衝撃を与えたのが、第3節レバンテ戦における前半15分経過時点での支配率が、「96パーセント」にまで上ったことだ(最終的には67パーセント)。
『マルカ』も、「攻撃面では、コンビネーションと支配力を重視したスタイルを採用しており、チーム全体が連動してボールの近くに多くの選手を配置するよう努めている。比較すると、レヴァークーゼン、チェルシー、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマンに次いで、彼らほどボールポゼッションに優れているチームはないだろう」としつつ、「その結果、ボールポゼッションは全体的に高くなり、その多くは10本以上のパスを伴っている。これは、昇格組であるにも関わらず楽な試合をしていない(メトロポリターノでのアトレティコ戦など)チームとしては驚くべきことであり、ビッグクラブと肩を並べるだけのポテンシャルがある」と見解を綴った。

 また、ピッチの最終3分の1を支配する力…つまり、ファイナルサードでも良い数字を残しているとのこと。同エリアにおける支配率がリーグ7番目の数値であり、「ラージョ・バジェカーノを除けば、彼らより上位には“いつもの顔ぶれ(3強やビジャレアル)”が揃っている」とタレントは少ないながらも、ポゼッションがゴールに近づくための手段として機能していると指摘。加えて、2トップを張っているアンドレ・シルヴァとラファ・ミルの新加入コンビの決定力にも脚光を当てており、とくに、前者はここまで撃った計9本のシュートで3得点を記録。「卓越したフィニッシュストライカーだ」と称賛している。

 対する守備面でも、ここまでの失点数は『6』で、バルセロナとビジャレアル(ともに5失点)に次いで、リーグ3番目の少なさだ。特徴のひとつとして「激しいプレス」が挙げられ、「ボールを持っていないとき、彼らの最優先事項は、できるだけ早く、できるだけ相手ゴールに近い場所でボールを奪い返すこと」と分析。実際、データ上においても、「彼らは敵陣で頻繁にボールを奪い返し、素早く危険なカウンターアタックを仕掛けることができている。とくに、ボールロスト後の2秒間におけるタックル数で、主要リーグのトップ10に名を連ねているのだ」と際立っていることを明らかにした。

 さらに、リトリートした際には、ダーヴィト・アーフェングルーバーが統べる3バックを中心とした守備で対応している。
この24歳のオーストリア人CBについては、「後ろからゲームを作り始める選手というよりかは、堅実なディフェンダーだ。そのポジションにおける基本的な役割を驚くべき効率で遂行しており、リーグで最も突破が困難なチームのひとつとたらしめている」と絶賛。続けて、「デュエルでは、彼は決して失敗しない。タックルを試みては、アタッカーに抜かれることは滅多にないのだ」と、なかでも対人守備に秀でていると紹介した。実際のところ、エルチェは被シュート1本あたりの平均難易度が、リーグ全体を見渡しても容易な方であるという。それは、ディフェンスが非常に効果的に機能しており、相手チームにとってチャンスとなり得る場面で、自チームにとってはピンチとなり得る場面で、シュートを撃たせていないことを意味している。

 2025-26シーズンのラ・リーガに、自身のスタイルを確立させて臨んでいるエルチェ。まだ始まったばかりではあるが、さらなる躍進の予感を漂わせる“ダークホース”に、是非とも注目してみてほしい。
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