日本代表は9月のアメリカ遠征で未勝利。しかも、無得点に終わっていた。
10月のパラグアイ代表・ブラジル代表の2連戦は、何としても点を取って勝ち切ることが必要だった。

 14日にブラジル戦を控えていることから、10日のパラグアイ戦はサブメンバー中心の陣容が予想されたが、蓋を開けてみると南野拓実堂安律、鈴木彩艶ら主力級が何人も先発出場。森保一監督が本気で勝利をつかみ取りに行っていることが色濃く伺えた。特に堂安を2024年6月のミャンマー代表戦以来、シャドーで起用したことは特筆すべき点だった。指揮官としてはより厚みのある攻めを仕掛けようとしたはずだ。しかし、パラグアイは想像以上に手堅く、強固なブロックに侵入させてもらえない。逆に前半21分に10番ミゲル・アルミロンに背後を抜け出され、早々と失点。ビハインドを背負ってしまった。それでもその5分後に小川航基が思い切った反転からのミドルシュートを決め、前半を1-1で終了。後半に入って日本はさらにギアを上げていくと見られたが、クロスからディエゴ・ゴメスのピンポイントヘッド弾を浴び、2度目のリードを許す格好となった。

 そこで森保一監督が投入したのは、鎌田大地だった。初キャップの斉藤光毅とともにピッチに送り出された背番号15は、まず左シャドウに陣取り、いきなり小川に絶妙のパスを通すなど、違いを見せ始める。
さらに後半32分には、伊東純也とのパス交換からペナルティエリア内に侵入した佐野海舟のマイナスクロスに反応。シュートを打てそうな機会が巡ってきたが、トラップを外側に流れたことで打ち切れなかった。その直後に相馬勇紀が入ってくると、鎌田はボランチへ移動。佐野海舟とバランスを取りながら一瞬のスキを突いていこうと試みた。最終的には相棒・佐野も下がって藤田譲瑠チマが入り、鎌田もより前目でチャンスを伺ったが、こうした積極姿勢が上田綺世の値千金の同点弾に結びついたのではないか。

 2-2のドローという結果を受けて、鎌田は「こういう試合で負けるとチームとしての雰囲気がガッと下がるところだったので、追いついたのは評価できるところ」と前置きしつつ、課題を口にし始めた。「今日は守備が全然ハマっていなかったですね。相手が余裕を持ってボールを持つようになってからは、結構バラバラで行っちゃっていた感じがあります。守備が良くないと攻撃もうまくいかない。前半から海舟が一人で全部やってくれてましたけど、自分たちが直さないといけない部分が沢山あると思いましたね」

 鎌田の厳しい指摘と似たような感想を抱いた選手が多かったのは確かだ。セルフジャッジでオフサイドラインを止めてしまい、1失点目に関与した瀬古歩夢も「守備が全然ハマらなくて、押し込まれる展開になった」と神妙な面持ちで言う。そういう状況が続けば、ブラジル戦ではより失点数が増えるかもしれない。
実際、同日にサッカー王国と激突した韓国代表は0−5の大敗を喫している。次戦はおそらくメンバーが入れ替わると見られるが、いち早く修正しないと痛い目に遭う確率が高そうだ。

「今日の感じだと守備がちゃんとできないと大量に失点してしまうと思う。やっぱりいい守備からいい攻撃をしないと、失点してたら勝てる試合も勝てないんで。守備は自分たちの土台だし、今日はアベレージに全く足りていなかった。まずはそこを戻して、そこから攻撃の部分をやっていかないといけないですね」と中盤のリーダー格は危機感を強く押し出した。

 鎌田が守備の強度と連動性に目を向けるのも、今季クリスタル・パレスでそのあたりがうまく行っているからだろう。現在プレミアリーグ6位で、ショートカウンターに出ていく速さと凄みを高く評価されている。日本が次回のワールドカップで躍進を遂げようと思うなら、クリスタル・パレスのようなしたたかさ、縦への推進力を身につけなければいけない。その前提として敵を追い込む守備や即時奪回の精度を引き上げることが極めて重要だ。鎌田は実体験からその重要性を言いたいはずだ。

「メキシコ戦は守備がすごく良くて、ガッツリとボールを取れて、一気にカウンターを出せた。
今回は個人個人のデュエルで負けたりだとかが多かった。そこはもっとやらないといけないですね」と背番号15は強調。佐野海舟とボランチを組むであろう次戦では、プレミア基準の迫力ある守備や激しさを示し、ワンチャンスからゴールを狙っていく構えだ。

 最近の鎌田は自分の活躍よりも、日本代表を勝たせようという姿勢が鮮明になっている。発言もチーム第一で、とにかく日本がW杯で躍進するための術を見出そうと躍起になっているのが分かる。それだけチームの主軸という自覚を強めているのは確か。キャプテン遠藤航、守田英正という2大ボランチがいない今、鎌田が中盤をしっかりと統率し、王国にぶつかっていかなければ、勝機は見出せない。ここから中3日の準備期間で、鎌田中心に課題改善に努め、少しでも良い状態に仕向けてくれれば理想的。背番号15にはチームの大黒柱として、攻守両面の停滞感を打破してほしいものである。

取材・文=元川悦子
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