毎年、シーズン終わりにJリーグ全クラブのフィジカルコーチが集まる研修会が開かれている。そこでは、J1、J2、J3各カテゴリーの優勝チームの担当者がシーズンを通してどのようなコンディショニングを行ってきたかを発表するのが恒例となっている。2025シーズンのJ2を制した水戸の担当者として出席した中村コーチは、要約すると、こんな報告をしたのだという。
「取り組みの一つとして、選手の遺伝子検査を行いました。その結果に基づいてトレーニングを個別化しました。食事や睡眠といった部分での選手の意識が変わり、それがケガの予防につながったり、コンディションを落とさずにプレーできたりする上で、かなり好影響があったと思います」
遺伝子検査とは、他のJリーグクラブに先駆けて水戸が2020年から取り入れた株式会社キーマイン(長峯誠社長)が提供する「遺伝子分析栄養プログラム~ユアプロ~」のこと。選手から唾液を採取して遺伝子分析を行い、遺伝的体質の情報を選手個々にフィードバック。その情報をベースに、選手それぞれの状態や目的に合わせた食事・栄養の取り方などを指導する仕組みだ。さらには、そこから血液検査データやフィジカルデータ、定期的なアンケートなどにより、『目的×今×先天体質』に合わせたトレーニングや食習慣、生活習慣の改善にも取り組むようになっている。
研修会の発表後には、J1を含めたいくつかのチームの担当者から「どこの会社ですか? ぜひ、紹介してほしい」、「遺伝子検査でどんな項目が分かるのですか?」といった問い合わせがあったという。
「例えば、トレーニングにおいては、筋肉が(瞬発的な動作で大きな力を発揮するが、疲れやすい特徴を持つ)速筋性なのか、(収縮速度が遅い反面、疲労しにくく持久力に優れているとの特徴を持つ)遅筋性なのかのタイプが分かります。それによって、ウエイトトレーニングの仕方も変わります。遅筋性だと思っていた選手が実は速筋性だったこともあります。筋肉を速く動かすのが苦手だと思っていた選手が実は速筋性のタイプで、トレーニングを続けていったらどんどん良くなりました。食事の部分では、脂質や糖質が吸収されて蓄積しやすいとか、逆に代謝しやすいとかが判明するので、食事のメニューや栄養の採り方が変わります。食べ過ぎると動けなくなるとの考えから、朝食を抜きがちな選手もいるのですが、もう少し糖質を採ったほうがいいことが分かります。疲労の溜まり方では、睡眠の質や光の感じ方。夜にスマートフォンを触る際には専用の眼鏡をかけるなどして、入眠しやすくするとか……。遺伝子検査をして、自分自身のことを知り、それに対してどう取り組むかみたいなところは、かなり意識的に変わったと感じています」
現代サッカーにおいて“個別化”の重要性は高まっている
これら選手個々の遺伝的体質に合わせた施策のすべてが、水戸をトップカテゴリーに押し上げた“個別化”の正体だ。そして“個別化”を実践しているのは選手だけにとどまらない。中村コーチをはじめとした指導する側も“個別化”をふんだんに採用している。
「私が担当しているのは、ウエイトをはじめとしたトレーニングのところがメインです。そういうところで言うと、よりトレーニングの効果も出るようになってきたと思います。相乗効果というか、選手の意識が変わり、我々も個々の選手に対してどうアプローチすればいいかというのを、より個別化できました。全体のメニューでこのトレーニングをするというよりは、一人ひとりの体の状態に合わせたコンディショニングを行ってきたので、そういう面では(遺伝子検査のフィードバックを)かなり活用させてもらいました」
選手の反応も上々だそうで、「強制」ではなく「任意」にもかかわらず、全員が唾液の採取に応じ、遺伝子検査を行っているという。
「今までもパーソナルトレーニングを行ったり、自分で体のケアをしたりするのはあったと思うのですが、そのレベル、質をより上げていく必要性があると思います。個別化の重要性はかなり高くなっていると感じます」という中村コーチは、「現代のサッカーはフィジカル面の比重が高くなっています。その中でより効率よく、選手個々のフィジカルをトップレベルに上げていかなければなりません。他の要素もありますが、キーマインと取り組んでいる遺伝子検査は、かなり大きな部分です。選手一人ひとりを伸ばし、どうJ1で活躍できるようになってもらうか。責任を持ってやっていきたと思います」と2026年の意気込みを語った。
“個別化”を武器に、選手の能力を最大限に引き出し、資金力に勝るJ1の常連チームを打ち破る。
一方、水戸の“個別化”を支えてきたキーマインの長峯社長は「遺伝子検査をベースにした我々のプログラムは、検体を採取して返送いただいたものを検査し、専門家の文献と照らし合わせて、その人の遺伝的体質が筋肉、骨、体脂肪、疲労、ストレス、ケガの観点でどういう傾向にあるかをレポートとしてアウトプットしています」と説明する。その上で「サッカー界に目を向けた際に、日本人選手の引退時の平均年齢が26歳と聞き、かなり驚きました。その年齢を我々の取り組みを広げることで2歳伸ばしたいと思っています。もちろんトップアスリートのシェアも広げていきたいのですが、今、メインで力を入れているのは育成年代です。成長期の段階で、自分に矢印を向けて、自分にとって大切なことをきちんと判断して選択できる力を身につけてほしいと思っています。ケガをせず、長く競技を楽しめる子どもたちを増やしたい。その一つの手段が遺伝子検査だと思っています」と展望を話した。
取材・文=北川信行

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