ポータブル電源のホント!! ウソ!? ポタ電女子が教えるポータブル電源よもやま話

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【概要】元ポータブル電源メーカー勤務の女性に聞いた、ポータブル電源選びのポイントやおすすめの容量、信頼できるメーカーの見極め方など。



もはや夏アイテムのひとつといえるポータブル電源。

ポータブル電源メーカーの中枢にいた元スタッフのポタ電女子が錦糸町の某居酒屋で、ゆるゆると話してくれたポータブル電源のホントの話を紹介しよう!



ポタ電女子 プロフィール

いまや人気となったポータブル電源メーカーの立ち上げに携わった女性元スタッフ。現在は、異なる業種でその敏腕を振るっているが、まだまだどうして、その知識は十二分に役立つものばかり。座右の銘は「ポタ電は生き物」。



信頼できるメーカーであれば「BMS」のことがしっかりと記載されているはず



カーネル編集部(以下編):まず基本的なことですが、ポータブル電源を選ぶポイントは?



ポタ電女子(以下ポ):まずは、安全性と容量。さらにいうと、バッテリーが使用できなくなったときに、ちゃんとメーカーが引き取ってくれるか? ですね。サービス面と保証面で重要なポイントです。



:安全面というのは、どこをチェックすればいい?



:まずは信頼できるメーカーかどうか、ですね。あと、バッテリーマネジメントシステム(BMS)のことが、ちゃんと明確に記載されているかどうか。



:BMSは、どのように記載されているのですか?



:例えば「過充電、過放電を防ぐ~」というようなことが、ちゃんとしたメーカーの製品には書いてあります。でも、それが書いていないメーカーのものだと……。



BMSのことが記載されていれば、安全面はひとつクリアしています。ちゃんと制御されているので。発火しづらくなっています。

現在のバッテリーには、だいたい採用されているはずです。



:次のチェックポイントは?



:だいたい2~5年保証のものが現在は多いですが、どんどんバッテリーの寿命は延びています。特に全固体バッテリーの場合は、驚くほど長くなっています。



:サイクルというのは?



:充電がゼロの状態から、満充電(100%)にして、それをまたゼロの状態まで放電して1サイクル。サイクルが多ければ、理論上は純粋に何十年も使えることになります。



:なるほど。ポータブル電源を選ぶポイントとしては、まず安全性が重要。ということで、まずBMSがちゃんと採用されているかどうか。



次に重要なのは保証年数。バッテリーの寿命にあった保証年数が設定されているかどうか。



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画像: YOSHINO B300SSTは車中泊雑誌『カーネル』2024年3月号の表紙にも登場。

YOSHINO B300SSTは車中泊雑誌『カーネル』2024年3月号の表紙にも登場。



:ちなみに、現在唯一の固体電池を採用しているYOSHINOのB300SSTは、なんと4000回以上というサイクル寿命をうたっています。



:保証期間が5年のところもあると思うのですが、5年でこの4000サイクルなら、悪くないかと。



:この「サイクル」の基準はありますか? 例えば、「何回以上あったら買いですよ」といったような目安を知りたいです。



:これは難しいですね。その人のライフスタイルにもよるので。以前に、カーネルアンバサダーのruiさんと話をしたとき、小型でサイクルが少なくても、すぐに買い替えるので、それほどこだわっていないと言っていました。



でも、大容量のポータブル電源で、自宅のシステムに組み込んで、何十年も使いたいのであれば、サイクルは多いほうがいいと思います。





「このポータブル電源ならこの家電」ではなくて「この家電を使いたいからこのポータブル電源」という選び方が基本



:では少しサイクルから話を変えます。これから購入したいと思っている人にポータブル電源をすすめるなら、どんなモデルがいいですか? 例えば、週に1回、週末だけ車中泊に行く人だったら?



:それは使い方によりますね。何に使うか。例えば、夏にポータブルエアコンを使う場合、電気を多く使うので容量は大きいほうがいい。冬だったら、電気毛布とかで乗りきれるので小さめのポタ電を持っていくとか、使い分けが必要かなと。



:最初の一台を買うとしたら?



:まずは500Wh~700Whくらいでいいと思います。

でも、ドライヤーを使いたいとか電子レンジを使いたいということであれば、1500Wh以上あれば安心。



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画像: 『カーネル』2024年3月号のポータブル電源カタログ。容量とAC出力別におすすめモデルを紹介した。

『カーネル』2024年3月号のポータブル電源カタログ。容量とAC出力別におすすめモデルを紹介した。



:月に1回の車中泊旅で、その際は温浴施設を利用する人なら?



:ポータブル電源ではなく、モバイルバッテリーでもいいのではないかと。スマホを少し使う程度なら10000mAhあれば十分。



:いまの話のように、車中泊スタイルによって、選ぶポータブル電源をカテゴライズしたいと思っています。どうすればいいですか? ポータブル電源によって「使える家電はこれですよ」というのを提案するイメージなのですが……。



:なかなか難しいですよね。逆に「どんな家電を使うか?」で、使用するポータブル電源を分けることはできます。



「あなたは何に電気を使いますか?」から問い始めるのがポータブル電源の選び方です。「ならば、あなたへのおすすめは、このポータブル電源ですよ」という提案はできます。最初はやはり「目的」からです。



:では、いま注目を集めているのが、防災でのポータブル電源の活用です。ポータブル電源を使ったことがない一般家庭で、防災に使いたいという場合、訴求は変わるかと思います。そんな皆さんには、どんなモデルをすすめますか?



:冷蔵庫とエアコンが切れることを考えて、とりあえず2000Whとソーラーをすすめます。



:そうなると、ソーラーパネルとポータブル電源をセットで購入できるメーカーがおすすめですか?



:ひとつの選択肢ではあるかと思います。それぞれメーカーによって、ポータブル電源の訴求ポイントは変わってきますからね。



:やはり充電速度が速いほうが高性能なのですか?



:使い方によって変わりますね。例えば、あるメーカーのモデルは1時間で80%まで充電できる。そこをストロングポイントにしていました。



でも、充電速度を早めれば早めるほど、バッテリーは早く劣化する。逆に充電時間は8時間かかるけれど、充電時は微弱な電流を流すだけなので、バッテリーは長持ちします。



:現在のような高性能なポータブル電源が各メーカーから発売されていますが、いまあるポータブル電源なら、一定の性能はあると思っていいのでしょうか?



:現在、生き残っているメーカーなら、それほど粗悪なものは多くありません。ただし、まだなかには残っていることもあります。



例えば、互換性のあるバッテリーで、サードパーティからも、いろいろ関連製品が出ているのですが、明記してある容量と実際の容量が違うことがいまでもあります。



5Ahと書いてあっても、実際は3Ahであったり。本当に5Ahにしようとすると、価格が跳ね上がる。フルパワーでは使えなかったりするようなケースもあります。



何Whと書いてあっても、実際の容量と異なることもまだ少なからずあると聞いています。



:それはそもそも詐欺にならないのでしょうか?



:電池の容量を偽っている可能性はある。ただそれはもう、消費者ではわからないことが多いです。そういったことも含めて、しっかりしたメーカーを選ぶ、ということが大切になってきます。



:では、しっかりしたメーカーとは、どんなメーカーのことですか?



:まず、日本であれば、国内に日本法人や正規代理店があること。製品の送り先が「JAPAN」であること。明記されている保証が受けられること。Eメールの問い合わせに返信がちゃんと来ること。



:確かに! しっかりとした組織でないとできないですからね。



:以前にあったのは、いつの間にか日本からいなくなるというパターン。不自然に安かったりすると要注意。突然連絡がつかなくなったり、会社がなくなっていることもある。



ポッと出のメーカーは慎重に。会社を調べるとか、不安なら問い合わせをしてみて、返信の速度や対応を確かめてみてください。



:以前は家電でも多かったですよね。PCとかも。あと、最近多いのは、ホテルをリーズナブルに予約できる代行のネット会社とか。



:輸入メーカーのポータブル電源が売れるようになって、一気に増えたように思います。そこはちゃんと、ユーザーに見極めてほしいですね。



:では最後に、ポータブル電源は、車中泊にいったい何をもたらしたと思いますか?



:車中泊であっても、「インフラとしての“コンセント”が近くにないと暮らせない」という生活スタイルを変えたと思っています。



「オフグリッド」という生活スタイルが、選択できるようになった。広い意味で、私もそれを目的に、ポータブル電源メーカーに勤めていましたから。



:今後のポータブル電源の進化を、一緒に見ていきましょう!



聞き手:大橋保之(カーネル編集部) 
初出:カーネル2024年7月号vol.67



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